第1話

文字数 871文字

 カサカサカサ、今夜は生暖かいな、しめしめやっと食べ物にありつけそうだ。明日は燃えるゴミの日だから生ゴミが未だ残っている筈だ。だけど、こう暗いと歩くのが難しいと思うのは天敵の人間だけだと思うな。俺様は臭いや触覚が優れているからへっちゃらなんだけどね。臭いはこっちか、やったー。家のご主人は生ゴミを片付けて無いぞ。明日の朝片付けてるんだな。いつもの事だよな。どれどれ、今日のご馳走は何かな。何だ今日は俺様が好きな食べ物が無いではないか。ブツブツブツ。ご主人めケチったな。
 
 あっ足音が近付いてくる、早く隠れないとパシッパシッパシッやシュッシュッシューッと容赦なく掛かって来るからな。ほら、やっぱり電気がついた。気をつけていて良かったな。早くあっちに行って欲しいな。冷蔵庫から何かを取り出した、あれが俗に言う缶ビールと言う物か。あんな不味い物を良くもまあ飲むものだな。それと何だ、食器棚から袋を取り出して持って行ったぞ。出来るならあの食器棚にも入りたい、食べ物の臭いがするし奥に入れば人間に見つかる事も無いだろうし。ただ、入ったら出てくる事は無理の様だ。
 
 おーい、電気を消して行ってよ、全く人間と言う生き物はだらしないと言ったら。それじゃあ電気代がかかるし俺様がカサカサカサっと出難いではないか。しょうがないな、明るいけど我慢して食事の時間だ。早いとこ食べて眠るとするかな。最近ではだいぶ涼しくなり俺様には苦手になったからな。シンクは何処だ、シンク、シンク。あったあった、頂きます。
 
 ここのところ美味しい物が少なくなるし、人間社会に何か有ったのか。チョット心配だな。俺様は人間の陰に隠れて生活するのが一番楽だからな。食べ物は有るし隠れる所はあちこち有る。家の外ではこうも楽に暮らせない。この前玄関からこっそり入って来た奴に聞いたがブロックの穴の中に縮こまっていたと言ったし。それにしても、良くこっそり入れたな。きっとご主人を騙くらかしたんだ。頭の良い奴だな。
 
 あー、食べた食べた。ご馳走様でした。また明日、パシッ・・・
 
 ゴキブリのつぶやき
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