第1話

文字数 1,165文字

 俺は今日、まぁ、正確には昨日、人生で初めて告白というやつをした。
 同じクラスの皆川愛莉。クラスで三番目くらいにかわいい。
 でも、かわいいだけじゃない。
 俺が、前に、腹痛でしんどいんだけど、一応平気そうにしていたら「大沢君大丈夫?具合悪いんじゃない?」と心配してくれたのだ。俺の友達は、全然気が付かなかったのに、皆川さんは気付いてくれた!
 腹は痛かったけど、それが、めっちゃうれしかった。
 それが六月くらいのこと。高二で同じクラスになって二か月くらいたってのことだった。

 その後、二学期に入ってからも、突然の雨に困っていたら、傘二本持っているからと言って貸してくれたり、とにかく皆川さんは優しい。
 まぁ、他の人にも優しいといえば、優しいのだけど……。

 でも、体育祭の徒競走で一位になった時は、「大沢君、かっこいいね」と言ってくれたのだ。
 かっこいい!かっこいいだぜ!嫌いなやつには、そんな事、絶対言わないだろう。

 俺に優しくしてくれて、しかもかっこいいと言ってくれたのだ!
 もしかしたら、もしかするんじゃないか、と、俺は次第に皆川さんを意識するようになっていった。
 ついつい、目で皆川さんを追ってしまう。
 そして、そのうち、皆川さんと付き合えたらなぁ、きっと楽しいだろうなぁ、などと考えるようになっていた。でも、さすがに告白する勇気はなかった。

 しかしだ。一週間前の俺の誕生日。「大沢君、今日誕生日だよね、おめでとう」と言ってくれた!俺の誕生日を知っていてくれたのだ!まぁ、プレゼントとかはなかったけど……。
 でも、気にならないやつの誕生日なんて、いちいち覚えないだろう、普通。
 ひょっとしたら、ひょっとするかも。

 俺は、皆川さんに告白する決心を固めて、今日学校の屋上で「好きです!俺と付き合って下さい!」と思い切って言った。
  皆川さんは「返事、すぐでなくてもいい?ちょっと考えさせて」と言った。
「もちろん、いいよ」と俺は言った。
 皆川さんは、教室に戻って行った。

 そして、今、俺は、ベッドの中にいる。
 返事はもちろん、まだない。
 即答してくれなかった時点でアウトなんだろうか?
 でも、嫌な相手だったら、即、ごめんなさい、となるよな?
 まだ希望持ってていいよな?
 でも、だめだったとき、同じクラスだと、これから気まずくなるかな?
 告白なんかしなきゃよかったかな?
 いろんな考えが、ぐるぐる頭の中を駆け巡る。

 枕元のスマホの時刻を確認すると午前0時50分だった。
 もうこんな時間か。寝なきゃ。どんなに考えたって、もう返事を待つしかないのだ。
 よし、寝よう!
 俺は、無の境地になるよう、何も考えないようにした。
 でも、でも、やっぱりだめだ!次から次へと最悪の事が浮かんで来てしまう……。

 もー!ぜんっぜん眠れねぇ!!
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