4:今夜のご飯はカレーだけど……わかるよね?

文字数 2,133文字

ん、もう夕方か。そういえば夕飯の買い物をしていなかったな。
出かけるのか?
ああ。何か食べたいものはあるか?
え?
どうした?
……いや、なんでもない。

食べたい物と言われても、私はこの時代の日本は初めてだからな。お前の得意なものでいいぞ。

わかった。それじゃ留守番を頼んだぞ。
それは、2つ目の願いか?
ん? そんなつもりではなかったが、別にそれでもいいぞ。
……冗談だよ。そら、行って来い。
ああ、行ってくる。
……………………
(……私にもご飯を作ってくれるんだな。)

----------------------------------------------------

------------------------------------------

---------------------------------

-----------------------

--------------

------

--

っはぁ……はぁ……帰ったぞ……。

思いの外遅くなってすまない。すぐに夕飯の支度を始めるから、もう少し待ってくれ。

おかえり。やけに疲れているみたいだが何かあったのか?
ああ、帰り道でアイツらに見つかってしまってな。
アイツら……ああ、例の電気屋アイドルのファンとやらか。
それだ。また「ミカちゃんに謝るまで許さねぇぞー!」って言いながら追いかけてきたんだ。
そういう輩はしつこいぞ。素直に謝った方が良いと思うがな。
あちらの勘違いではあるが……まぁ、確かにこのままだと不便だからな。

仕方ない。明日の仕事帰りにでも電気屋に寄ってくるよ。

……お前、仕事してたのか。
当たり前だろう。今日は休みだったんだ。

そもそも仕事をせずにどうやって暮らしていけというんだ。

いや、それはそうなんだが。お前がまともに仕事をしているとは……ああ、そうか。
仕事をしていると思いこんでいるんだな……可哀想に……。資金の出処は、両親からの仕送りか、または盗みでも働いているといったところだろう。
酷い言われようだな……

ところで、甘いのと辛いのはどっちが好みだ?

ん? 私は甘いほうが好きだが。
わかった。
……ほう、野菜を炒めているのか。いい匂いがしてきたな。
クァーニャは料理とかするのか?
えっ? まぁ、そうだな。たしなむ程度には……?
そうか。そうしたら今度はお前にご飯を作ってもらうか。
別に構わんが、上手いわけではないぞ?
それでもいいさ。一人暮らしが長かったから、たまには他人の作った料理も食べたい。
……っと、そうか。これは2つ目の願いにしたほうがいいのか?
いや、必要ない。今晩の夕飯の礼とでも考えておけば魔神的にも問題ないだろう。
そうか。
(……まぁ、私が自発的に動く分には制限はないことは黙っておくか……)
さて……
ふむ、炒めた野菜を鍋にいれて……今度は煮るのか。面白い工程だな。
って、待て待て待て!! 何だその手に持っている茶色い物体は!

そんなものを鍋に入れるのか!?

当然だ。これがなければ俺にはこの料理を作り上げることはできない。
い、いや……しかしな。それはどう見ても固めた……
いかん!!! その先を言うんじゃない!!!
あ、ああ……そうだよな。すまない。お前は料理を作っているんだものな……

そんな時に使う言葉ではなかったな。

ああ、それにこの料理は日本において最もポピュラーな料理と言っても過言ではない。

迂闊なことを言うと敵を作ることになるぞ。

あ、ああ。気をつける。
よし、それじゃ入れるぞ。
あ、あぁ……溶けてドロドロに……うわっ、うわぁぁぁあ!!
お前っ、お前ぇぇぇ! やはり騙したんだな!! 
落ち着け! 匂いは全然別物だ! 鼻をつまむのはやめて匂いを嗅いでみるんだ!!
誰が騙されるか!! これはどう見ても消化不良のっ――
や、やめろぉぉ!!!
ウン――
んっっまーーーーい!!
やれやれ……やっとわかってもらえたか。

まぁ、こちらも反応を見たくて黙っていたのは悪かったが。

いやはや、まさかこれがカレーだったとはな。噂では聞いたことがあったが実物は初めてみたよ。
他の国や時代にも出てきそうなものだけどな。
んー、というよりな。人の作った料理をこうやって食べたこと自体が無いんだ。

みんな、『ランプの魔神が何かを食べる』という発想自体が無かったみたいでな。

まぁ、何も食べなくても問題ないから間違ってないんだがな。

こうやって食べること自体は可能なんだ。

あー、んまー。

……それなら、たくさん食べるといいさ。
あぁ、食べるといえば1つ気になっていたんだが……
なんだ?
私は一応【エアコン】のはずだよな。なぜ食事を用意したんだ?

庭での排尿まで強制したくせに。

排尿ではなく排水だ。
どっちでもいいわ!
まぁ、そうだな……

例えば、あの役に立たない電気屋に売っているような、極めて普通のエアコンを動かすには電気が必要だな。

あまり電気屋を非難してやるな。
だが幼女のエアコンは電気を必要としない。

その代わりに動くエネルギーが必要だと思ったんだ。

しかし、私は食べなくても動けるぞ。
じゃあ、もうカレーは必要ないか?
あ、いや……そうは言ってないだろう。もぐもぐ。
なら良いじゃないか。俺にとってのエアコンは、飯を喰うんだ。
……微妙に納得できんが、まぁそういうことにしてやるよ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:クァーニャ

ランプをこすると現れる、言わずと知れた『ランプの魔神』。持ち主の願いをなんでも3つ叶えてくれるのだが、ガラに捕まったのが運の尽き。あわれ彼女はエアコンとして生きることを余儀なくされたのだった。

ああ、その瞳でもっと睨みつけて……!

名前:ガラ

漢字で書くと『我楽』。名字は秘密だ。

偶然見つけたランプの魔人クァーニャに対して「エアコンになってほしい」と願った。

だいたい頭おかしいことを言っているが、その実、頭がおかしいと思う。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色