じゅうはち

文字数 361文字

・・・。

 もう1つやり残していることがある。俺は胸ポケットにそっと手を入れた。

 シュレッダー機は音を立てながら、シワで寄れた白便箋を一瞬で飲み込んでいった。

 これでようやく全ての仕事を終えた。窓から地上を見下ろすと、車のライトや店の明かりが、色鮮やかに光っている。特別なイルミネーションなどではなく、単なる日常であるはずなのに、眩しいほどにキラキラ輝いている。

 胸の重りが消えたことによって、等身大の自分になれた気がする。上野さんの言葉が、頭の中に蘇ってくる。

 -『自分らしく』生きていこう。

 皆が待っているので、俺は部屋を出てエレベーターのボタンを押した。短い時間かもしれないが、今日の夜は29歳という年齢を存分に味わおうと思う。20代最後だからといって高級料理やシャンパンと言う訳にはいかないが、楽しい夜になりそうだ。
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