終章

文字数 8,202文字

終章

数日後。テレビでは、衆議院選挙の告示が盛んに報じられた。そして、立候補者の受付開始、選挙ポスターの設置など、選挙への準備が着々と進められた。

「よし、この選挙が山だ!」

蘭はいきり立って母親の晴に言ったのだが、晴のほうは戦う気力などなくしてしまったようで、もう、淡々と社長業務を続けるのである。

「お母さん。うちの党で立候補してくれた、渡邊義正先生の娘の正子さんが当選してくれれば、波布は絶対に敗北するさ!大丈夫だよ!あいつの作った政党なんて、どうせただの共産主義者が立てた、とても偏った政党なんだから、支持者もそうは現れないって!」

「そうだけど、偏っているとはいえ、支持者が現れないとは、限らないわよ。きっと、あの人の作った方針は、彼の信じている以上に広まっているし、若いお母さんをはじめとして、多くの若い人たちの心をつかんでいるわよ。」

「お母さん、、、。なんでそう、負け犬になってしまったのさ。今負けたら格好悪いだろ。」

「無理よ。時代は変わったの。もう、渡邊義正先生の思想なんて、どこかに行ってしまったのよ。」

「はあ、、、。」

蘭は、大きなため息をついた。

「でも、お母さん、波布は必ず立候補者を出してくる。その立候補者を当選させなければ、僕たちの主張のほうが支持率は多いということになるんだから。それに望みを託そうよ!」

「そうねえ、、、。」

「とりあえず、お母さん、今日立候補者の名を記した、ポスターが貼り出されるよ。せめて、水穂が体を張って聞き出してくれた、八重垣麻弥子という女性の顔だけは確認しようよ。」

二人がそんなことを言っていると、

「社長!坊ちゃん!大変なことが起こりました!」

沼袋さんが、社長室に飛び込んできた。

「どうしたの沼袋さん。」

「沼袋?何かあった?」

二人がポカンとして沼袋さんを見ると、沼袋さんは、息を整えて、

「社長、坊ちゃん、しっかり落ち着いて聞いてください。今、立候補者のポスターが貼りだされました。とりあえず、立候補者は三人いるのですが、その中に、八重垣麻弥子という女性の名は一枚もありませんでした!」

と、早口に言った。

「どういうこと!じゃあ、その女は、立候補しなかったってこと?」

「そうですよ。社長。渡邊正子さんの名はありましたが、八重垣麻弥子という名はありません。つまりですよ、何らかの事情があって、波布は、立候補させなかったということになりますな。これで渡邊正子さんが当選すれば、波布の共産主義思想を持つ議員は登場しないことになりますから、しばらく国政に、波布が介入することは、ないということになりますな。仮に、正子さんが落選したとしても、立候補すらしていないのですから、波布の主張がほかの者に知られるということも少なくなるわけです。よかったですねえ。これで、うちの会社はとりあえず、渡邊派閥にいれば、守られるということになる。渡邊派閥の援助があれば、少なくとも倒産は免れます。国政に出たほうが、やっぱり、有利ということになりますからな。ああ、よかったよかった。とりあえず、戦わずして勝ったということになったのでは?」

「そうかあ!よし、これからは、経営の基盤を固めて、波布が次の手を出してきたときに、備えましょう!沼袋さん!」

沼袋さんと、蘭がそういうことを言い合って、すこしつかみかけた勝利を喜んでいるものの、晴は、なんだか浮かない顔であった。

「まあねえ。会社は守れたかもしれないけど、思想的にはあたしたちは、負けちゃったんじゃないかしらねえ、、、。」

「お母さん。負けたなんていわなくていいんだよ。もし、悔しいのなら、波布がやっていたことをまねして、対抗すればいいじゃないか。うちが渡邊先生を味方につけたのをまねして、波布は、政党を作ることを思いついたんだって!だから、同じようにうちの会社の待遇を改善すればいいのさ!おんなじことを考えて、実行すれば。」

「馬鹿なこと言わないで。単にまねしてどうするの?全く同じことをしたって、何にも意味はないわよ。」

「いや、社長。それも一理ありますよ。実際問題、古代ローマの大スキピオ(プブリウス・スキピオのこと、スキピオ・アエミリアヌスではない)だって、いわゆるザマの戦いのときは、宿敵ハンニバルを、ハンニバルと同じ戦法を使うことでやっつけたんですからね。敵の戦法を模倣するのも、ある意味では必要なことです。しかし、坊ちゃん。よくそういう風に、検証ができるようになりましたねえ。どこかで、誰かが伝授してくださったんですか?青柳先生とか?」

ずいぶん感心した様子で、沼袋さんが言った。まあ確かに、蘭が会社の戦術について口を出したのは、生まれて初めてだった。初めてだから、誰かがヒントをくれたのだろう、と沼袋さんは思ったのであるが、

「いや、沼袋さん。これは、僕が一人で思いついたんだ。誰にも相談はしていないよ。それに僕は、歴史にはあまり詳しくないから、沼袋さんが今言った、カンナエの戦いと、ザマの戦いなんて、ほとんど知らなかったし。もう、波布のやつ、大学院に行ったくらいでは何も役にも立たないと豪語していたから、じゃあ、その頭で一生懸命考えたのさ。」

と、蘭はてれくさそうに言った。

「だから、これを職人たちには、僕たちマングースの勝利だと言って、とりあえず安心させようよ。そして、正子さんの選挙費用で大損をしないように、選挙陣営を固めなきゃ。」

「そうね、蘭。あんたも、戦法を考えられるようになったのね。そうそう、共産主義が定着すると、模倣ができなくなるところが、最大の弱点なのよ!」

「よし、今から会社を立て直す方法を考えましょうね!社長、うちも、頼りになる存在ができましたなあ。」

沼袋さんは、半分涙目になった。



「本当に、今回はすみませんでした。さんざんお願いしておきながら、僕も力不足というのが、はっきりわかりました。」

ジョチは、八重垣さんに頭を下げて謝罪した。

「いいえ、申し訳ありません。私こそ、ちゃんと仲間を集められなくて、なんだかまだちゃんと、国政選挙なんてしっかり把握していなくて、、、。」

八重垣さんも頭を下げて、申し訳なさそうに言う。

既に、床に敷いてあるイグサの敷物は撤去され、新しい敷物が敷かれていた。

「せめて、彼等の懇願した新しい敷物だけは買ってあげましょう。もうすでに、二人から代金はもらってあります。もう一枚増やしてしまうことになるので、無駄を省くという方針には違反しますが、彼等の水穂さんへの思いが、つぶれてしまうことになってしまいます。」

「ああ、すみません。さすがに、血痕が付着したままではまずいので、すぐに新しいものを買いに行ったんですが、まさか、水穂さんのほうから、お金をもらうとは思ってもいませんでした。私たちにとっては、あんなもの、どこにでも売っているものですし、すぐに買え置きはできる、くらいのものでしかなかったんですが、水穂さんにとっては、申し訳ないと思っていたんでしょう。」

「そうですね。まあ、僕がこちらを訪問した時、鼻水で汚してしまったことは本当によくありましたからね。もう慣れているからいいといえばそれまでですが、そうは思えない人も少なからず、いるのでしょうね。」

ジョチはそういって、また鼻をかんだ。黄色い鼻水が、チリ紙に付着した。

「それにしても、今回は、本当に僕の力不足で申し訳ないです。党本部から、応援演説者を二人以上用意しないと、立候補が認められないと聞いたものですから、思わず焦ってしまいました。焦りすぎて、応援演説には、適さない人物を選んでしまい、かえって、彼にとっては大損をさせて。それは僕の、れっきとした人選ミスです。貴女にも、せっかくの意欲を捻じ曲げてしまうような結果になってしまい、本当にすみません。」

「いいえ。私も、世の中が変われば、何とかなるんじゃないかって、軽々しく思いすぎてしまいました。もうちょっと、私の事業も、実績を作ってからじゃないと。本当にごめんなさい。やっぱり、女は、軽々しいですね。もう、気を付けなければなりませんわ。」

「いえ、いいんですよ。そういう猪突猛進なところは、やっぱり男にはできるものではありません。それがうまく能力を発揮して、成功に近づいた例もかなりありますし。古来、物作りに精を出した女性と言いますのは、大体そのやり方で成功しています。だから、女性の特性を無視してはなりません。」

「すみません。私も、軽々しくて。」

同時に、あのモアイみたいな顔をした男性が、お茶をもってやってきて、二人の前に置いた。

「八重垣さん。あの人は、どうしているんですかね。」

と、彼は言った。

「あの人って誰の事?名前は?」

優しく、八重垣さんが聞くと、

「えーとえーと。」

と、考えるモアイ顔の男性。

「ゆっくり思い出して頂戴。ゆっくりよ。」

でも、この男性は、知的発達が遅れていて、考えを始めると、まとめるのに苦労して、パニックになってしまう傾向があった。それのせいで、彼の家族はかなり迷惑を掛けられたらしい。答えがでない、でないと叫びだして大暴れし、物を壊したことも少なくない。

「介入したほうがいいですね。」

と、ジョチは言った。

「ゆっくり思い出しましょう。あの人は、いつ知り合った人?」

八重垣さんは静かに彼に質問する。

「この間、理事長と一緒に来て。」

「うん、そうだね。理事長と一緒にきたんだね。男の人かな?それとも、女の人かな?」

「男の人でした。でも、すごい綺麗でした。」

「うん、男の人で、すごく綺麗なんだ。綺麗な人っていうと、どんな感じかな。ハンサムで若々しいとか、そういうこと?」

「八重垣さん、こういう人は、一単語でしか表現できません。ですから、何々で何々といういい方はやめたほうがいい。それより、具体的にどうしたのかを聞き出したほうがよいでしょう。」

ジョチは、彼の表情を見て、八重垣さんに言った。つまり知的障害のある人は、形容詞よりも名詞や動詞のほうが、うまく説明ができるのである。

「あ、ああ、ごめんなさい。落ち着いてね。質問を変えるわ。綺麗な人は、理事長と一緒にここへきて、何をしていった?」

「隣に座った。」

「うん。そして?」

「こういう風にお辞儀して、、、。」

モアイ顔の男性は、床に顔をつける真似をした。

「わかりました。説明してくれてありがとうございます。こちらも、質問の答えがわかりましたよ。彼の名は、磯野水穂さんですね。」

ジョチが結論を導き出してやると、男性は満面の笑みを浮かべて、

「うん、そう!あの人はどうしてる!」

という。こうして、こちらに答えを出すのに苦労させておきながら、障害者側のほうはそれをコロっと忘れてしまうのが常である。しかし、それは障害者側にとっては当たり前なことで、全く苦労を掛けたとか、そういう気づかいはしない。そこに健常者が嫌悪感は持ってはいけない。

「はい。彼は、製鉄所というところで、静かに眠っています。」

そして、答えを考えるときも、簡素に伝えなければいけないのである。

「次はいつ来るんですか?」

ちょっと答えを出すのに躊躇してしまった。でも、曖昧な答えでは、納得してくれないのも障碍者である。

「次の選挙の時に、また連れてくると思いますよ。」

と、だけ言っておいた。

「ありがとう。」

男性は、それで納得してくれたようで、そのまま一礼して戻っていった。

「水穂さん、どうしているんでしょうか。私も心配になりました。あの時、あんなに辛そうな顔をして、あたしたちが介抱しても、あんまりよさそうではなかったし。」

「そうですね、幾度か彼の住んでいる製鉄所にも、お電話させてもらっているのですが、容体はさほど良くないと。」

「そうですか。なんだか残念ですね。もし私が、国政選挙に立候補したら、是非、水穂さんに応援演説してもらいたかったですね。あの人、すごく綺麗な人とはまさしく本当で、もっと語彙力があれば、彼は、外国の映画俳優みたいな、そんな人でしたから。私が、演台に立って演説した時に、彼が隣で応援演説してくれたら、ほんと、なんだかそれだけでも、大満足だわ。」

八重垣さんは、やっぱり一般女性らしい話をした。女性らしい、特徴だ。やっぱり美しい男性には弱いんだな、と思う。

「できれば、もう一回お会いしたいわ。なんか、もっと私達のところに頻繁に来てくれたら、女性の従業員さんも、もっと来てくれるんじゃないかしら。」

「そうですか。じゃあ、一回様子でも見に行きましょうか。僕も気になるところですし。今日の帰りにでも、ちょっと寄ってみますよ。」

「ええ、お願いします。ぜひ、私からも、お体の回復を祈っているとお伝えください。」

「わかりました。」

丁度そのころ、正午を告げる鐘が鳴った。

「それでは、長居をしてはいけないので、失礼します。今回の立候補は、見合わせという形になりますが、次以降には、何らかの形で、国政にかかわれるといいですね。」

「はい、私も努力して、もう少し事業を軌道に乗れるように頑張ります。」

「はい。では、またいずれ。」

ジョチはソファーから立ち上がり、軽く敬礼して、部屋を出て行った。



製鉄所では。

「よかったわねえ。この前は、本当につらかったみたいで、おばさん本当に、心配だったわ。でも、あれからしばらく眠らせてもらって、翌日は起きれるようになったし、ご飯も食べられるようになったじゃない。あれは、一時的なものだったのね。ああ、ほんと、おばさんもう本当に、肩の荷が下りた。」

恵子さんが、ご飯を食べている水穂をみて、ああよかったとため息をついた。

「すみません。先日は本当に、申し訳ないことをして。」

「申し訳ないなんて、言わなくていいから。これからは突然苦しんでしまわないように、体調を管理して頂戴ね。また、ああいう風に、曾我さんにまで迷惑かけちゃだめよ。」

「すみません。ああして突然。」

水穂はそう謝罪して、ご飯の最後の一口を口にすると、それを飲み込んだ。

「完食できてよかった。今日は食べられたから、謝らなくていいわ。じゃあ、この後は、薬飲んでゆっくり眠ってね。あたしは、みんなの食事の準備があるから戻るわ。もう、こういう立場だと、だれかのご飯を作ったら、すぐにほかの人のご飯を作らなきゃならないのが、面倒くさいところよ。でも、いいの。それがあたしだから。また、晩御飯ができたら持ってくるからね。」

恵子さんは、お盆をもって、部屋を出ていった。

それからすぐ数分後、四畳半のふすまが開いて、蘭がやってきた。もう嬉しさ満面の顔だった。

「何だ。お前か。どうしたの、その顔。」

「こっちのセリフだよ、それは。全然こっちに来れなくて、もう心配でしょうがなかった。お母さんや、沼袋さんと一緒に、波布のやつがどう出るか、話し合ったりして。でも、波布は、手を引いたようだよ。今回の選挙だって、立候補者を出さなかったんだ。きっと、党の中で内紛でも起きて、立候補者を出せなかったって、沼袋さんは言ってた。きっと、波布の党は分裂でもしたのかもしれない。もしかしたら、これで解党かもしれないって。だって、波布が持っているのは、みんな立場的に弱い人たちだから、財力はない。それを考えれば、対抗はやっぱりできないよ。いくら、弱い人たちから支持率があって、悪徳病院をつぶすほどの能力があったとしても、うちの会社みたいな、財力はないんだから。」

蘭はとにかく、宿敵であった波布が、選挙から退いてくれたことが、あまりにうれしかったので、防衛という言葉を忘れて、つい、べらべらとしゃべってしまったのである。

「蘭、やめろ。」

不意に、水穂が弱弱しいが、強い口調で言った。

「具合でも悪いの?」

思わずそう聞き返すが、

「馬鹿!ふすまを閉めるの忘れて。」

と言われて、急いでふすまを閉めようと後ろを振り向いたその瞬間、

「今の台詞、全部聞き取らせてもらいましたよ、蘭さん。ただ、訂正させていただきますと、うちの党の中で、内紛があったことは全くありません。それに、分裂するほど人数もおりません。ですから当分解党はしませんからね。」

自分の後ろに、ジョチが正座で座っていた。

「ああそうか。でも、今回候補者を出馬させなかったのは事実だろ。だから当分国政選挙には手を出せないじゃないか!」

蘭も対抗するように言うが、

「そうですね。それは間違いありませんね。理由だって、蘭さんがおっしゃったとおりです。確かに、その状態で選挙に出そうとした、僕の判断が甘かった。これは確かにそうです。」

と返ってきた。

「そうだろう!それでお前は、あの悪徳病院と言われる生田記念病院をつぶして、政治資金でも得るつもりだったな。でも、さほど得られたわけでもないから、今回はあきらめた。あんまり、医療とか福祉関係は、金にはならないからな。それが、お前が今回敗北した原因さ。だけどな、お前みたいな共産主義者に味方するのは、そういう職業しかないってことも知らなかったんだろうな!」

蘭が、勝ち誇った口調でそういうと、

「ええ、そうかもしれませんね。今回は、確かに波布はマングースに負けました。それは認めます。」

ジョチはあっさりと肯定した。

「でも、波布はあきらめませんよ。一度や二度負けたって、あきらめはしません。いつか必ず、お宅の会社が、間違いをしでかしたことを指摘できるようになって、帰ってきます。」

「うるさい、選挙ってのは、一度しくじると、なかなか立ち直るのは、難しいもんだよ。」

「ええ、そうでしょうね。でも、マングースも、マングースなりの、弱点があるのを知っているんですよ。」

波布は、マングースの隣に座っている、美しい男をじっと見つめている。そして、いきなり右手を出して、彼の肩を叩き、

「また会いましょう。」

と、だけ言った。

「何をする!水穂には手を出すな!」

思わず逆上して蘭がそう声を荒げると、ジョチはあざ笑うかのように蘭を見つめ、

「わかっていますよ。また、対峙できるのを、楽しみに待っています。」

とだけ言って、さっと立ち上がり、四畳半を出て行ってしまった。

「こら、波布!汚いぞ!待て!」

蘭がいくら怒鳴っても、振り向くことなく、玄関先に歩いて行ってしまい、恵子さんたちと挨拶を交わして、出て行ってしまったのである。

蘭は、もし立って歩けたら、あの千鳥紋の刺繍された羽織を着ている背中を、包丁で一突きにしてやりたいくらい、この人物が憎たらしく、

「貴様!貴様ってやつは!」

と、怒鳴りつけたが、隣で呻き声が聞こえてきたために、それは消し飛んでいってしまった。

「おい、大丈夫か、しっかりしてくれ。今のことは気にしないでいいんだよ。波布のやつ、きっと敗北を認めたくないから、嫌がらせに来たんだから、それだけなんだよ。」

返答の代わりに聞こえてきたのは、激しくせき込む音だけであった。

製鉄所の入り口付近に黒いセダンが止まっていた。ジョチが、玄関から出てきて、セダンに乗り込む。

「次は、どちらでしたっけ?」

「あ、はい。もう自宅へ。」

「わかりました。」

小園さんとそういう会話を交わすと、セダンは製鉄所を後にする。

セダンの中では、小園さんが待っている間にラジオを聞いていたらしく、若い女性のアナウンサーが何かしゃべっているのが聞こえてきた。

「うるさいですから消しましょうか?」

「いや、最後まで聞きましょう。」

丁度、その時に聞こえてきたのは、きいやま商店の「波布とマングース」だったのである。

「波布波布波布波布マングース、、、。」

全く滑稽な音楽だなあと思いながら、それを聞いていた
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