4、苦労する魔訶迦葉

文字数 8,224文字

苦労する摩訶迦葉

今日も、植松は涼の講座を受けにやってきた。家で一人で勉強しているよりも、講座に行って、なかまと一緒に勉強するほうがずっといいのだった。やっぱり影浦の言ったことは本当なんだなと思った。

「じゃあ、今日は、みなさんに宿題があります。」

演台のうえでもしみえていたら、受講生たちを見回すような目つきで、涼はそういった。

「皆さんのご家族でも兄弟でも、その他もろもろの血縁者だれでも結構です。彼らの悩んでいることを、傾聴して、それをレポートにまとめてきて下さい。そして、これは出来ればでいいんですが、悩んでいることをまとめて、的確なアドバイスが出来るようになってください。提出期限は、次回の講座までです。」

「はい。わかりました。」

受講生たちはみな、気合を入れてそういっている。しかし、植松はこんな宿題を出されて、困ってしまった。植松はたった一人で富士市に住んでいる。配偶者もいなければ、親兄弟も遠く離れたところに住んでいる。次回の講座と言えば一週間後だ。一週間のうちに親や兄弟に連絡を取って、実験台になってなんて頼めるはずがない。

今回の授業はちょっと過酷な宿題が課せられたなと、植松は思った。まあ、とりあえず、自分が今カウンセリングの講座を受けていると、親に電話して説得しなければならないな、先ずそこから始めたいと思いながら、椅子から立ち上がった。すると、隣の席に座ったマーシーが、ああ、どうしようかなあという表情をして、ちょっとため息を付いたので、

「マーシー、どうしたの?」

と聞いてみた。もう、高野さんではなく、マーシーという綽名で呼び合うほど、二人は仲良くなっていたのだ。

「いやあ、今日は、ちょっと難しい宿題が課せられたなと思ってね。」

マーシーも、同じことで悩んでいるのかと思った。

「君も、ご両親が遠方に住んでいるとか、兄弟が居ないとか、そういうことで悩んでいるの?」

植松が聞くと

「兄弟なんて居ないんだ。僕は一人っ子だからさ。両親は、当の昔にあの世行きだ。だからどうしようかと思って、ちょっと悩んじゃったんだ。」

と、マーシーもこたえた。

「お二人とも、そんなに重大な宿題ではありませんよ。別にご両親でなくてもいいんです。御兄弟でなくても構いません。どなたか。」

ふいに、演台の方から涼が、そんなことを言っている。

「どなたかって、ほかに誰に頼めばいいのですか。さっき、先生が、血縁者と仰ったじゃありませんか。血縁者なんて、僕は東北の方に行かないと居ないんですよ。」

植松はちょっと、ムッとして、涼先生に抗議した。他にも、そういう受講者がいるのではないかと思って。

「ああそうですか。それは失礼しました。其れなら、血縁者でなくても構いませんよ。ただ、一番頼みやすいという人は血縁者だろうかと思ってそう言っただけです。でも、そういう人が遠方にいるとか、死別されている方も居ますよね。誰でも構いませんよ。誰か、親しい方にお願いして、実験台になって貰ってください。」

涼は、思ったことをなんでも口にする。盲人という事から、そういう風になるんだろうが、其れなら初めからそういってくれればいいのになあと、植松は思うのであった。

「それでは、ピアノ教室の生徒さんとかそういう人でも構いませんか?そうなると、立場がまた変わって、実験台にはなれなくなりますか?」

マーシーは、すぐにそういった。いいなあ、マーシー、血縁者に頼らなくても、そういう人がいるじゃないか。涼はええ、構いませんとこたえる。其れなら、マーシーの問題はそこで解決だ。何だ、マーシーはすぐに解決してしまった。俺はちょっとどころか、すごく苦労しなければならない。其れならマーシー、あんな顔してため息を付かないでくれよ。

「まあいい。実験台になってくれそうな生徒さんが居なければ、ラーメン屋の店長さんとか、その奥さんにやってもらおうかな。」

なんだ、マーシー、実験台候補は沢山いるじゃないか。そうなると、俺は何だか大損をしたようだな、学校をやめてしまって、すべての人間関係を断ってしまった。あとの人間関係と言えば、ここにいる涼先生か、以前クリニックにかかった、影浦千代吉医師しかいない。

そういう人に、自分の傾聴の実験台になってくれなんていえそうもないな。となると、あと、誰が手伝ってくれるのだろうか?影浦のような人たちであれば、もう、自分の事なんてわかりきっているから、自分の傾聴を、にこやかに笑って、つまるところ馬鹿にするかもしれない。

「マーシーは、いいなあ、そうやって、実験台になってくれる人をすぐ見つけられるじゃないか。俺なんか、そういう実験台になってくれそうな人、誰もいないよ。」

おもわず植松は口に出して言ってしまった。

「俺、この宿題はちょっときついよ。実験台になってくれと頼める人なんて、もう東北のほうにいる親くらいにしかいない。」

「いいじゃないか。子どもが一生懸命勉強しているのに、うるさがったり、馬鹿にしたりする親は誰もいないよ。東北の方にいるんだったら、ちょっと電話して来てもらったらどうだ?東北と言っても、今は東北新幹線だってあるんだし。」

マーシーは、そう的確にアドバイスしてくれるのだが、それがちょっと、植松には、癪に障った。

「そんなお金ありはしないよ。それに俺は遅い子だったから、俺の親は随分年を取ってしまって、一人で東北新幹線や在来線を乗り継いで、こっちまで来ることは出来ないと思うぞ。」

植松は現実的な意見をだした。確かに植松の母は、多分切符さえも買えないのではないかと思われた。それほど、現代文明が嫌い、わかりやすい言葉で言えば、機械音痴なのだ。

「それはそれでも、宿題はちゃんとやらないと。そんな風にグダグダ考えてないで、こういう時には、すぐに行動に移せよ。するってえっと、東北は何県のあたりなんだ?」

マーシーは親切に説得してくれるのだが、植松は学校の教員をやめた事すら親に話していないのだった。だって、教員採用試験に受かった時の、親の喜びようったら、近所中に自慢をして歩いていたくらいだ。それをやめたと言ってしまったら、若しかしたら母親何かは、倒れてしまうかもしれない。

「ああ、岩手だ。あの、岩手県の端の方だ。山田線は東日本大震災で不通になっている。代替えバスも田舎だから走っていないのでは?」

植松がそう言ってごまかすと、

「山田線の代わりに、三陸鉄道が走っているよ。其れでいいじゃないか。大丈夫だよ。親なら何とかして来てくれるさ。そういうのが親だよ。子どもが何か勉強したいと言ったら、一生懸命何とかしてかなえてくれる存在。」

と、マーシーは言った。そういう事から、マーシーの育ちの良さを感じさせた。たしか高校中退という学歴であると聞かされたが、一般的に大学を出ている人よりも、もっとよい教育を受けているような、そんな気がした。

でも、そういうことを聞かされて、植松は嬉しくなかった。というより、マーシーが憎らしくなった。

「君は、親と喧嘩したことあるのかい?」

植松はそう聞いてみる。

「あるよ。何百回もあるさ。そのたびに、反省文かかされたり、正座させられたりしたこともあったけど、何とかして仲直りした。親子というのはそういうものだよ。多少衝突しても、それがまた別の一面を知ることができるきっかけにもなる。」

マーシーはにこやかにこたえた。

「そんなこと、じゃあ君は親から過度に期待されて、そこから逃げたいとか、変に仕事に就いたことを自慢されて、嫌だなと思ったりしたことはなかったの!」

自分の顔に何か熱いものが吹き出てくるのを、植松は感じとった。若しかしたら、マーシーのことを、信頼できるなかまだと思いすぎてしまったから、こうなってしまったのかもしれない。

「いやあねえ、僕は小さいころから親にはバカ息子呼ばわりで、期待なんてしても無駄だといわれたことの方が多かったからねエ。嫌だなと思った経験はなかったな。」

マーシーの答えが何だか自分のことを馬鹿にしているようにみえた。

「誰でも、親が子に期待をするとは思うんだが!」

「いや、僕は、バカ息子としか呼ばれなかったよ。子どものころから出来は悪かったし、もうこいつはどんな仕事してもだめだろうなとさえいわれて、諦めていたもの。」

諦めていた。だからもしかしたら、自由でのびのびしていたのか!そういえばマーシーは委縮したところが一つもなかった。そういうところが、やっぱり学歴以上のよい教育を受けている証拠だ!

「君は、高校中退と言っていたが、ほんとはそれ、詐称しているのではないのか?何だか、ものすごいよい教育を受けている人以上に、すごいものを受けているようにみえる!本当は違うのでは!」

おもわず植松は怒鳴ってしまった。

「もう、二人とも、喧嘩するなら、そとでやってくれませんか!」

いきなり涼の鋭い声が、その喧噪をたたき割った。

「早くしないと、この部屋を、ほかの利用者に受け渡さなければなりません。その前に早く帰って頂けないでしょうか。結論から言えば、今の時代、良い教育を受けようとすればするほど、人間弱っていってしまうのは、確かなようですね。そこははっきりしています。ですから、上の者と下の者はいつまでも憎み続けるのですよ!」

やっぱりさすが涼先生だ。心理学を勉強しているだけあって、そういう答えは適格だ。

「すみません。失礼しました。」

「ごめんなさい。」

二人は、涼先生にそういわれて、それ以上喧嘩をすることはせず、結局何もいわないで、部屋を出て行った。

でも、この宿題どうしよう。植松は困ってしまう。だって、岩手にいる親はまだ、自分が教師をしていると思い込んでいる。実は植松、親にカウンセリングの資格を取ったら報告しようと考えていたのだ。だから、その前は、できるだけ秘密にしようとしていた。それを、なんでこんな時に実験台になってくれと頼まなければならないのか。もし親にこの講座を受けていると話したら、何ていわれるだろう。俺たちに何をしてくれるんだ!とか、この期待を裏切って!なんていわれてしまうかもしれない。

マーシーはきっとバカ息子といわれ続けているせいで、そういうことに慣れてしまっているから、委縮せず、あんなに底抜けに明るくいられるんだ。

俺は、マーシーのことを知らな過ぎたかな。

其れで友達になってしまったから、悪かったのかな。

もっと、お互い相手のことを知ってから、友達になるべきだったのかな。

植松の頭に、そんなことがぐるぐると回った。

「まあ、類は友を呼ぶと言いますけどね、植松さん。人間は誰でも全く同じということは決してないんですよ。」

涼が、目をあわさない顔でそういっている。そういう顔で、静かにいわれると、植松は余計に憎たらしくなってしまったのだった。

その日は、いつもならマーシーと一緒に同じ電車に乗り合わせて、軽くお茶を飲んだりして帰るのだが、久しぶりに一人で帰った。

そうかあ、もう君はいないのか。

何かのテレビドラマにそういうタイトルのものがあるが、テレビのなかでいうその言葉と、現実の中でいうその言葉は、重みが違いすぎるほど違うのである。

「ああ、寂しいな、、、。」

隣の席にマーシーは居ない。

何て寂しいんだろう。独りぼっちって。

宿題のたいへんさよりも、そっちの喪失感を処理するほうが、何だか悲しいというか、辛いように思われる。そういうことを処理してからでないと、宿題はできない。宿題は。

家に帰っても植松はぼーっとしていた。何だか悲しいけれど、そうする以外出来なかった。

長い時間ボーッとして、しょうがない、故郷にいるおふくろに、謝罪して、シッカリ怒られようとちょっと考え始めた時の事である。そとは、ちょっと明るくなって、朝焼けがみえはじめた時であった。

ふいに、植松のスマートフォンがなった。誰かと思ったら公衆電話からである。

「も、もしもし、、、。」

「ああ、植松君かい。僕だけど。実は昨日携帯の充電をするのを忘れていて、其れで駅前の公衆電話からかけているのさ。実はね、ピアノ教室の生徒さんは、実験台になるような悩みがない人ばかりでね。其れで、ラーメン屋の店主さんに聞いてみたところ、製鉄所に行って、話させて貰ったらどうかというんだよ。君も来ないか?」

電話で話しているのは、何とマーシーだった。ピアノ教室の生徒さんは確かに悩み事や心配事がある人は少ないだろう。そうでなければピアノなんて習いたがる筈がない。

「製鉄所?何だいそれは?鉄を作るところで、傾聴の実験何て出来るんだろうか?」

とりあえず植松はそう言ってみるが、マーシーははははと笑って、

「いや、製鉄所というのは名ばかりだ。本当はそうじゃなくて、問題のある人や居場所のない人がそこに泊まったり、勉強をしたりする支援施設何だよ。」

といった。確かにそういう所なら、悩んでいる子は沢山いそうだが、

「ちょっと待って。学校でそのような施設があるなんて、聞いたことはなかったぞ。」

と急いでいった。

「ああ、そりゃそうだよ。学校の先生から酷いことをいわれたとか、学校でいじめにあったとか、そういう子ばかり沢山来ているんだ。そういう子たちを学校へ戻さないようにするために、学校へは一切紹介しないんだよ。」

と、マーシーにいわれて、あ、ああなるほどと考え直した。そういう事だったのか。でも、そうなると、学校はあらためて被害者をたくさん出しているということに気が付く。

「きっと僕たちの宿題に協力してくれる子が、沢山いると思うんだ。管理している青柳先生にも電話したが、是非聞いてやってくれと言っていた。これで宿題は解決だが、僕だけが成功して、君はいつまでも落ち込んでいるようでは、申し訳なくて耐えるに忍びない。一緒に宿題をやろうよ。」

そう言ってくれるマーシーは、悪気がある様子もないし変に奢っているような所もなく、いつものマーシーのままだった。そうだよな。マーシーだもん。よし、僕もその通りにしよう。本当は、昨日の喧嘩の続きもしたいところだが、それはもう、こうして親切にしてくれた以上、もうどうだっていいや。植松は次第にそういう気持に変わっていた。

「じゃあ、駅の北口で待っているから、準備が出来次第来てくれ。今携帯電話を持っていないので、ここで約束を取るしかできなくて申し訳ない。よろしく頼むよ。」

「わかった。」

と言って植松派時計を見た。

「10時にそっちへ行く。」

おう、有難うという声がして、電話は切れた。そうなったらもう行動に移さなきゃ。すぐにカップラーメンで朝食を済ませ、服を着替えて、ノートと筆箱を入れた鞄を持ち、駅へ突進する。

駅についたのは、丁度、駅に設置された鳩時計が、10回なった時であった。急いで北口へ行くと、

「良く来たな。」

とマーシーが立っているのがみえた。

もう形式的な挨拶も抜きにして、二人は切符を買い、電車に突進した。製鉄所は、3つ目の駅の近くにあるという。

二人は無言のまま、電車を降りた。

電車をおりてから、直ぐだというのだが、坂道が多いのでタクシーに乗った。タクシーは、日本旅館のような建物の前で止まった。

「あれれ、これが製鉄所か?」

おもわず言ってしまうほど、植松が知っている製鉄所とは、遠く離れた建物だった。なるほど、これで製鉄所というのは名ばかりだと植松も納得がいく。

マーシーが失礼しますと言って、インターフォンのない玄関の戸をたたくと、ハイどうぞという声がした。二人は、お邪魔しますと言って、中に入る。

中に入ると、すでに主宰の青柳先生から、利用者たちに説明してくれてあったらしい。二人は、食堂へとおされた。食堂には、何人か利用者が待っていた。利用者たちは、初めまして、よろしくお願いしますと言って、それぞれの自己紹介をしたり、学校のことを話したり、いきなり悩んでいることを話したりする者もいる。いずれにしても、彼女達の悩んでいることは、大体学校に原因があることがほとんどで、植松にはちょっと辛い発言も沢山飛び出していた。

マーシーは、彼女たちの発言を上手に聞いて、時にはメモを取ったりしながら、にこやかに彼女たちの話を聞いている。植松は黙って聞くということは、こんなに苦痛だったのかと思いながら、それを聞いた。出来る事と言えば、彼女たちの学校に対する悪口に、相槌を打つだけであった。

「こんにちは。宅配弁当です。昼食をお持ちしました。」

ふいに、業者が運搬車に大量の段ボール箱をもってやってきた。利用者が、最近まで調理師を雇っていたが、彼女は結婚のためやめてしまったと説明する。全く女性というのは身勝手ですね、と言いながら、植松は業者が弁当を配っていくのを観察した。

弁当は、幕の内弁当のようなものであった。弁当本体だけではなく、缶入りのお茶もついていた。最後に業者は、弁当無しで、缶のお茶だけテーブルの上に置いた。

「あれ、弁当が一つ足りないのではありませんか?」

植松が利用者に聞くと、

「ああ、あれですか。あれは水穂さんのなんです。水穂さんには肉や魚を無理やり食べさせてはいけないんです。」

と、利用者はこたえた。

「おかしいね。其れなら別の内容のお弁当をたべさせるとかするはずだけど?」

「ええ、其れも危険すぎるとして、出来ないんですよ。もし当たったらたいへんなことになりますから。そういう時は、弁当会社も考慮して持ってこないんですよ。代理で、別の弁当会社が来るはずなんですけど。」

と、いう事はその水穂さんと言う人は、別の弁当会社から、粗末な弁当を貰っているのだろうか。

そうなると、ある意味差別しているのではないか?植松は疑問に感じた。

「多分、そっちの会社、道路が混んでてなかなか来ないんだと思います。まあ、とりあえずお茶だけでもあたし持っていこうかな。」

と、別の利用者が、そういうことをいった。そうなったらやっぱりこの人たち、その水穂さんという人を差別している!よし、俺もお茶をあげるのに同行してやろう。と、植松は思った。

「何処にいるんですか。その水穂さんは。」

「あの、一番奥の四畳半。あたしお茶だけさきにあげてきます。」

植松がそう聞くと、彼女はテーブルの上にある、缶入りのお茶を取った。植松がついていってもいいかと聞くと、はいドウゾ、と遠慮なく言った。

それでは、と長い廊下を歩いていくと、遠くの方から咳き込んでいる声がする。キーは少し高いようだが、間違いなく男性の声だ。まあ、歌人の太田水穂という名もあることだし、男性であってもそういう名前はあるかと考え直した。しかしどうして、その人は食堂に来ないんだろう。そしてどうして弁当を別の会社から頼んでくるんだろう。

植松は其ればかり考えてしまう。

近づいていくと、咳き込んでいる音はどんどんおおきく強くなる。

利用者は、あるふすまの前で止まった。植松もそこで一度足を止める。

「水穂さん、お茶持ってきましたよ。あーあ、こんなにまた派手にやってどうするんですか。もうちょっと何か食べて、しっかり体力をつけないと、治るものも治りませんよ。」

利用者はそういうのだが、実際持ってきたのは缶入りのお茶だけだ。何か食べる何て、何もないじゃないか。

利用者は、そういって、畳を雑巾で拭いているしぐさをした。ということはだよ、もしかしたら、この人昔の寂しい農村の人のように、肺病が移るとか、そういうことで隔離された生活をしているのではないか。

やった!と植松は思う。

もし、この人の話を傾聴することが出来たら、若しかしたら、すごいことになるかもしれない。大スクープとは言えないけれど、すごいことになるかもしれない!

植松は行くぞ!と思って、四畳半に向けて一歩足を踏み出した。
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