第2話(3)

エピソード文字数 1,432文字

「お待たせしましたーっ。朝ご飯、完成(かんせー)ですー」

 AM8時。ダイニングテーブルで新聞を読んでいると、レミアがエプロンを脱いだ。

「にゅむむんっ。今朝は、和風(わふー)にしてみたんだよー」

 俺の前に、出汁巻き卵、タマネギと豆腐と椎茸の味噌汁、鮭の塩焼き、爺ちゃん謹製・高知産の白米が入った茶碗が並ぶ。
 家では毎日妹達のお弁当を拵えていただけあって、どれも美味しそうだ。

「丹精(たんせー)込めて作ってみましたー。気に入ってくれるとうれしーなっ」

 にぱーっと、はにかむレミア。
 こんな台詞と表情を向けられたら、たとえ不味くても絶賛したくなる。けれど! けれど、だ。俺は良い返事をできない。


 ――手料理を、マズイと酷評する――。


 それが、嫌われ作戦の第2弾だからだ。

「さーさー、どーぞどーぞ。熱いうちに召し上がれだよーっ」
「いいや、アナタを待ちます。一緒に食べようよ」
「そ、そー? ならそーするね」

 魔王さんは彼女なりに素早く動き(ココ重要)、出汁巻き卵の端っ切れ、具が少ない味噌汁、茶碗を置いた。

「おまたせしましたー。ゆーせー君、食べましょー」
「はぁ~。お前はドアホだなぁ」

 俺は自分とレミアの卵焼きを半分交換し、味噌汁の具をおすそ分け。そのあとキッチンから小皿を取ってきて、鮭を2分の1置いた。

「にゅむっ!? ゆーせー君っ!?
「俺は、対等な関係でいこう、と言ったはずだ。冷蔵庫に具材と魚のストックがなかったからといって、自分だけしょぼい構成にするのはなしだぞ」

 そんなんで喜ぶのは、鬼畜な御主人様だけだ。こっちは逆に切なくなるっての。

「ゆーせー君っ、にゅむうっ! にゅむむっ! にゅむむむっ!」

 正面では魔王様が頭を下げまくり、照れ笑いを浮かべている。
 おぉ、まさかの『にゅむ』言語3連発。この子っていずれ、にゅむだけで会話しだすんじゃないのかな。

「にゅむっむ。にゅむーっ。ゆーせーくーん!」
「や、理解できないから。全部、ちゃんとした日本語で頼みます」
「ゆーせー君大好きだよーっ! ずっとずーっと一緒にいたいなーっ」
「…………」

 ま、まだ作戦前。作戦を、やる前。ここで上がった好感度は、あとで下げりゃいいんだ。モンダイハ、ナイ。

「お、おっといけないっ、ご飯タイムにしなきゃだな。いっただっきまーす」

 まずは、大根おろしが添えられた出汁巻き卵をパクリ。中は半熟のふっわふわで、お味は当然激ウマです。

「ねーね。どーだったかな?」

 ワクワク。ワクワク。こんな擬音が表示されそうなくらい、感想を心待ちにしてる。
 や、ヤベェな。仮に激マズであっても、マズイと言えません……。

「にゅーむー? どーなのかなー?」

 ゆっ、勇気を振り絞れ。貶すんだ、色紙優星!

「だ、出汁巻き卵は…………。ま、まっ、まずっ……」
「ぁぅ。マズ、かったの……」
「まずっ、焼き加減が100点満点! 次に出汁と卵の割合も完璧! 味噌汁も塩焼きも、ご飯の炊き方でさえも文句の付けどころがないぞ!」

 俺は、ビシィッとOKサインを作る。
 これ、無理ですわ。シュンとされたら、勇気を振り絞れませんわ。

「にゅむー、よかったよぉ。好みがあるからドキドキしてんだー」
「そ、そっかー。あははははははははー」

 さ、三度目の正直。三度目の正直だ!
 次こそ、好感度を下げてみせる!!
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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