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エピソード文字数 630文字

 その本は史実ではなく、歴史的文献を参考にしたフィクションとなっていた。この作家が、何を根拠に執筆したのか定かではない。

 でも、まるで一緒に時を過ごしていたかのように、詳細に書かれている。

 この本に書かれている身代わり姫が、姉の美濃であるならば……。

 この著者に聞けば、美濃の最期がわかるかもしれない。



 ――目を閉じ、夢の記憶を手繰り寄せる。

 あの日、あたしは帰蝶に呼ばれ美しい打掛に身を包み、信長に抱かれた。

 ――そうだ。帰蝶との別れ際に、斎藤家の家紋が入った短刀を渡された……。

 あたしはその短刀と美濃の髪の毛を特攻服の内ポケットを忍ばせ、白馬を走らせ本能寺に向かった。

 ――もしも……
 特攻服の内ポケットに短刀と髪の毛があったなら……。

 この小説はフィクションではなくノンフィクションであり、あの出来事が夢ではなくタイムスリップだった証拠となる。

 あたしと美濃は……
 戦国時代にタイムスリップし、信也は……織田信長……!?

「この本、借ります!」

 あたしはその本を掴み受付カウンターに持って行く。貸し出しの手続きを済ませ、図書館を飛び出す。

 ――信也がずっと探していた本は、これなんだ。

 ――信也が知りたかったのは、これなんだ。

 身代わり姫が美濃だと書かれているということは、帰蝶のことをよく知る人物。その人物こそが、著者と何らかの拘わりがあるに違いない。

 一体、誰が――……。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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