第2話 丑三時の集会とかもちゃんず

文字数 1,736文字

ところがでございます。
神に主まで与えられた爺さん猫の与太話。
ジジイのつまらぬ呟きなんぞは釈迦に説法・・・いえいえ、猫にがしゃがしゃぶんぶんとでも申しましょうか。
兎にも角にも、集会場に鎮座する3丁目の野良たちは、ここぞとばかりに恋を語り、愛を奏で、狂喜乱舞のどんちゃん騒ぎ。
突発性衝動型木上り発作症。
閉鎖的盲目症尻尾追尾症候群。
七転八倒阿鼻叫喚、まさにカオスでありました。
そんな中、びびりのよもぎは、土管の中で身を潜めておりまして。
黒猫の威風堂々たる姿は微塵もなく、黄色の瞳をただキョロキョロと動かしているばかり。
その隣で、くぅくぅと寝息を立てているのは眠り姫のあんこ。
純白の長毛種は、まんまる月夜も鼻ちょうちん。
薄気味悪いったらありゃしない。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は見たこたねえ。

それな。

てな、あんばいで御座いましょうか?
今風で言うところの。

「こいつが神なんじゃねえの?」

と、面白おかしく言いふらして回るのはお喋り鈴吉。
前世はスタンダップコメディアン。
そんな風に、本気で思っているアメリカンショートヘアで御座います。
だから話題がころころ変わる。

「オレたちゃ犬っころじゃねえんだからよ、そんなに尻尾ばっか振ってられっかてえの。猫の尻尾は何のためにあるか知ってるかい?鋭い爪と同じさ。大好きなネズミを優しく包み込んでやるんだよ」

鈴吉がしゃべり終わると、決まってタンカをきる輩もおりまして。
それがカッコつけのあずきで御座います。

「こぞよりも 秋の目覚めぞ なれにける つもれる年の しるしなるらん」

ソマリの名にふさわしく、知的で優雅で筋肉質な肉体美。
木に登って下りれなくなっているのは、お転婆ライア雑種猫。
その下で、やいのやいのと騒いでいるのはツンデレミィと、のーてんきなぶちで御座います。
これまた雑種。
互いの尻尾を追いかけまわして、ぐるぐるぐるぐるぐうるぐる。
今宵の宴も華やかに、おてんとうさまが昇るまで。
酒もないのにわっしょわっしょと、勝手気ままに体たらく・・・とまでは言い過ぎかもしれませんが、なんですかね。どこの世界も同じでして、仕合せ者を許せない連中ってのが、さっきからじぃーっと宴を見ているわけなんですが・・・。
いっしょに騒げば良いのに、そんなのはプライドが許さない。
だけど人間様みたく、SNSなんてのに頼ることも出来ないわけで。
そりゃあそうでしょう。
ぶっとい水かきじゃあ、スマホもタブレットも打てやしません。
考えてみれば恐ろしいもので、鴨の頭ン中にもあるわけですな。

匿名で、仕合わせ者を、つるし上げ。

なんてのが。
猫目川の水面にどんぶらこっこと浮かんでいるのは、3丁目が誇るユニット、かもちゃんずで御座います。
唄なんぞは歌いやしません。
黒々おめめがかもちゃんず1号。おめめの縁が赤いのがかもちゃんず2号であります。
2羽共に、生まれも育ちも東京下町猫目川。
クチバシを先に開いたのは1号で御座いまして。

「猫ってのはのんきなもんだねえ、おいら鴨で良かったって思ってるよ」 

と、威勢が良い。 
2号はやけに心配性で。

「そうかい?おらやんだなあ・・・鴨葱にされた重吉、ほら1丁目の重吉覚えてるだろ?」

と、ワナワナクチバシを震わせる始末。

「そりゃあお前、1丁目だからだよ。3丁目からすき好ん出てったんだから自業自得でえ」

「んだな・・・」

「いいか、2号、耳ン中かっぽじってよ~く聞くんだぞ。いいか、猫だって三味線にされちまう事だってあんだ。隣のなんちゃらはよく見えるってな。いいか、おいらたちは鴨に生きるのよ、いいじゃねえか、着の身着のままどんぶらこ、流されるのが宿命よ、てなもんだ」

猫目川に浮かんだお月様も、かもちゃんずと一緒にどんぶらこ。
俗にいう、草木も眠る丑三つ時てのは、あくまで人間様目線で御座いまして。
眠らない町なんてのは、歌舞伎町か柳ねこ町3丁目くらいなもんでしょう。
おっと、すすきの忘れてた
いや、天神だって栄だって、いやいやミナミを忘れて貰っちや困る。
なんて言わずに、夜は眠る。それが一番じゃあ御座いませんか。
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