埋葬2
文字数 1,555文字
私達が来たのは向こうから。
桜田さんはあっちから来たんですね？
えぇ。
ずーっとこっちに向かって歩いてきたから、私がいた方には何も無いわ。
なんとも都合よく第3の道があるけど、そっちに向かうってことでいいのかな？
桜田さんも一緒に来てくれますか？
もちろん。
1人でいるのも飽きちゃったわ。
人と喋るのもすっごく久しぶりだから、楽しいの。
…あの、どこかでお会いしたこと、ないですか？
え？
うーん、ごめんなさい。私は心当たりないわね。
すみません、多分僕の勘違いです。
綺麗な方だからってすぐに口説いちゃダメですよ。
ち、違うよ！
あら、おませさんなのね。
…あ。
とりあえず歩きましょうか。
うふふ、そうね。
ほんとに違うからね！
はいはい。
2人とも若いわねぇ。
17歳くらい？
私が17歳で、神楽坂くんは１つ下です。
桜田さんはおいくつですか？
20代、とだけ言っておくわ。
あなたたちから見たら、おばさんよね。
またまた。大学生くらいですよね。
20代前半と見ました。
うふふ。ありがとう。
ずいぶんと和やかに談笑してるけど、結構危機的な状況っていうのはわかってる？
余裕のない男は格好悪いわよ。
彼女の方が落ち着いてるもの。
彼女！？違います！ただ同じ部活ってだけで！
この場合の彼女は、多分、sheの彼女です。交際相手って意味じゃないですよ。
え…！
顔真っ赤よ。かわいいわね。
彼は草食系男子ですから。
へぇー、ベジタリアンなのね。
あはは、野菜が好きでよく食べてますよ。
…ん？
ところで、桜田さんも恵西町に住んでいるんですか？
え、えぇ。そうよ。
最近引っ越してきたばかりだから、あまり馴染みがないけど。
へぇー！一人暮らしですか？
まぁ、そうね。
もういい歳だし、1人でも寂しくないし。
えー、でもやっぱり女性の一人暮らしは危ないですよ。
防犯のしっかりしてるとこに住むのがいいですよね。
どちらに住んでるんですか？
駅前のマンションとかですか？
…僕は話から置いてけぼりだよ。
まぁいいけど。
えーと、まだちょっとはっきり覚えてないの。
家の場所はわかるんだけど、説明するのは難しいのよね…。
あー！そしたら多分、駅裏の通りですね！
あそこに大きなマンションありますもん！オートロックの！
確か名前が…クロレラですね！
そう、そこだわ！そこの、えっと。5階に住んでるのよ。
駅裏にマンション…？
神楽坂くんはあっち行かないから知らないですよね。
私あの辺詳しいので！
まぁ、うん。確かにあの辺行かないけどさ。
なんか腑に落ちない…。
ところで、桜田さんはどこかへ向かう途中で迷っちゃったんですか？
えぇ。…お豆腐を買いに行く途中だったの。
お豆腐…。
お豆腐。なにか変かしら？
私は木綿が好きです！
ふーん、僕は絹の方がいいけど。
ん？あれ何でしょうか？
何かあった？
ほら、あの辺。
なんか、光ってませんか？
何も見えないよ。どこ？
ちょっと拾ってきます。
拾うって、何か落ちてるの？
なんだろこれ。ペンダント？
麻矢さん！それは私が落としたものかもしれないわ！
え？でも桜田さん、あっちから来たって…。
わ、私方向音痴なの。
とりあえずそれ、見せてちょうだい。
…なにか隠してません？
ねぇ、意地悪しないで。
私のだったら返してもらうってだけじゃないの。
違うならあなたに返すわよ。
えー、でもなんか桜田さん、怪しいっていうか…。
こっちに寄越しなさい！
おわっ！な、なになになに！？
へぇ、そんなことが出来るんですね。
早くそれをこっちに渡して。
この子、絞め殺しちゃうわよ。
く、苦しい…土が、身体に…。
取引しませんか？
これ、実はあなたのではないんです。
私のペンダントです。
中身はほら、私の家族の写真です。
でも、あなたのペンダントの在り処を知っています。
本当でしょうね？
一体何がなんだか、わからないんだけど…。
神楽坂くんは鈍いですね。
彼女が本物のツチコさんです。
