第二十三話 薄珂の見るちいさな光明

文字数 7,533文字

「「有翼人の羽根飾りを見たい?」」

 生誕祭が終わって数日経った。
 立珂は愛憐と遊びたいと言っていたが会議だなんだと忙しいらしく、護栄からもう少し待てと言われ続けていた。
 そしてようやく今日それが叶い、護栄と麗亜も含めて愛憐と服や装飾の話で盛り上がっていたところで愛憐が有翼人の羽根に目を輝かせた。

「愛憐ちゃんいっぱい持ってるんじゃないの?」
「全然よ。装飾品は分解して寝具にしちゃうの」

 明恭は寒い国だという。
 防寒具はいくらあっても足りず、中でも有翼人の羽根寝具はまったく足りていないらしい。当然、装飾品にするなどという無駄はできないのだ。

「宮廷ならいっぱいあると思ったけどそうでもないのね」
「護栄様。ないの?」
「ないですね。蛍宮じゃ羽根は生活費であって購入するものではありません」
「でも隊商で売ってたよね」
「あれは他国の品ですよ。隊商は輸入のようなものですから」
「隊商? なんですの、それは」
「屋台や露店で物を売っているんですよ。見たことありませんか?」
「ないですわ。露店なんて明恭では考えられないもの」
「じゃあ行ってみる? とっても賑やかで楽しいよ!」
「いけません。姫君をご案内できるような場所ではありません」
「どうして? 普通のお店だよ」
「清潔な場所ではありません。ご案内するのならきちんと準備をさせないと」
「いいえ。ありのままを拝見させてください」

 護栄の言葉を遮って手を挙げたのは、薄珂と同じように理由も無く妹の肩を撫でている兄だ。
 甘やかされるのに慣れていないのか人前で撫でられるのが恥ずかしいのか、妹はくすぐったそうに身体をよじらせた。

「愛憐は皇女としてすべきことを考えなくてはなりません。そのためには嘘偽りのない日常を見なくては」
「ですが整備の手が届いていません。雑然として歩きにくいのです」
「ならば尚更です。護栄殿に代わり明恭ができることもあるかもしれません」
「……そうですね。では愛憐姫。前回の視察の続きをお願いできますか」
「は、はい! 今度こそきちんとお役目を果たします!」

 愛憐は兄の手を振り払ってしゃきっと立ち上がった。
 緊張で服を握りしめる拳は震えていて、一人前の皇女とは言い難い。けれど口をきゅっと堅く結んで護栄に向き合う姿は、立珂をいじめた少女とは別人のようだった。

「じゃあ美星さんのお父さんのお店に行こうよ! いろんなものがあるんだよ! 美星さんいい!?」
「もちろんです。毎日立珂様の話をねだられて、いい加減うるさいと思っていたところです」
「仲良しなのね。でも美星さん、突然伺ってもよろしいのかしら」
「はい。いつ立珂様がいらしてもいいように待ち構えていますので。では外出の準備をいたしましょう」
「あら、私はこのままで大丈夫よ」
「いいえ。立珂様はお召変えと持ち歩きの服のご用意が必要ですので」
「まあ。立珂はこだわりがあるのね」
「うん! 愛憐ちゃんもお着替えしようよ~!」

 立珂の着替えは汚れ隠しだ。愛憐はそんな事情を知らないだろうが、単純に服や装飾品を選ぶというのが面白いようで二人はきゃっきゃとはしゃいでいる。
 お洒落を楽しむという感覚の無い薄珂ではこうはいかない。侍女はそれによく付き合ってくれるが、対等な友人ではないから否定することは無く同じ調子で騒いでくれることもない。
 だが愛憐は立珂と対等でいてくれる。それは似合わないわ、こうして合せるのが流行なのよ、と同じお洒落を楽しんでくれるので立珂も楽しそうだ。
 何より、着替え用の服を持つのもお洒落へのこだわりとして褒めてくれるのが立珂は嬉しいようだった。いつもは外で着替えるなんて大袈裟だと馬鹿にされることも多い。
 けれど愛憐は、なら私も持っていくわ、これも持って行きたいわね、と同じようにしてくれた。これが優しさなのか本当に単なるお洒落心かは分からないが、立珂が楽しそうにしていて薄珂も今までにない幸せを感じた。
 そうしているうちに一時間以上が経過し、美星の父の店に辿り着いたのは二時間ばかりが経った頃だった。

「これは立珂様に薄珂様。それに愛憐姫まで」
「愛憐姫が有翼人の羽根飾りをご覧になりたいの。出してもらってもいい?」
「もう出してある。愛憐姫。心行くまでご覧ください」

 美星の父の店へ行くと、まるで待っていたかのように有翼人の羽根飾りがずらりと並んでいた。
 立珂は久しぶりだねと再会を喜び飛びついた。友達の愛憐ちゃんだよ、と嬉しそうに紹介すると美星の父も嬉しそうに笑ってくれる。立珂は前も楽しそうにしていたけれど、今はそれ以上に楽しそうだった。
 お洒落という共通の趣味を持った相手というのは、生活するだけで精いっぱいだった立珂にとって初めての友達なのだ。それをとても嬉しく感じると同時に、自分では立珂の我がままを叶えてあげられなかったことが薄珂は少し寂しかった。
 立珂は愛憐の手を引いて羽根飾りを物色し始めた。愛憐も同じように目を輝かせている。

「これすっごく可愛い!」
「可愛いけど、銀五枚は一般家庭じゃ手が出ないわよね」
「当店は富裕層向けですので。一般家庭向けであれば隊商の露店をご覧になるのが良いでしょう」
「そう言ってたわね。そちらも見に行きたいわ」
「ではご案内致します。安全な場所ですが、念のため護衛の皆様は決して姫様から離れないようお願い致します」

 また美星の父は待ってましたとばかりに数枚の紙を取り出した。
 そこには隊商を含め市場の配置が書かれていて、歩く順序まで書かれていた。なぜこんな準備万端なのか不思議に思っていると、次に立珂様が来たら案内しようと準備してたんですよ、と美星がこっそりと耳打ちしてくれた。
 確かに美星の父は生き生きとしていた。そして自信満々に愛憐姫ご一行の先頭に立ち歩き始めてくれる。

「立珂。車椅子乗れ。人が多い」
「ううん。愛憐ちゃんと歩く。車椅子は疲れたらにするんだ!」
「……そうか。疲れたらすぐに言うんだぞ」
「うん!」

 立珂は薄珂の手をすり抜けて愛憐と歩き始めた。
 こんな風に立珂が自分の脚ではしゃぎ回るのを夢見ていた。けれどあまりにもあっさりと何でもないことのように叶ってしまい、行き場を無くした薄珂の手は立珂のいない車椅子を握るしかできなかった。嬉しいけれど、それは少しだけ寂しかった。
 そんな兄の心など露知らず、立珂は愛憐と露店を除いて回っていく。

「ご主人。見せて頂いても良いかしら」
「こ、こりゃあ姫様! こんなちんけな雑貨屋じゃ姫君のお眼鏡に叶う物はありゃしませんよ!」
「そんなことないわ。品揃えが豊富で素晴らしいじゃない」

 美星の父が言うには、愛憐の母国である明恭は寒いがゆえに商店に並ぶのは防寒や暖を取るものばかりだという。
 蛍宮では安売りされてなおも売れ残る物でさえ愛憐には珍しいようで、どんな小さな露店にも素晴らしい物ばかりだと目を輝かせた。それも好印象を与えようなどと計算しているわけではないのだろうけれど、だからこそ店も愛憐を快く迎えてくれた。しかも皇女ほどの人物が使うとは思えない庶民の服や装飾品もあれこれと買い、立珂と並んでその気さくな振る舞いは国民の心を打ったようだった。
 そして一番の目的である有翼人の羽根飾りを見て立珂とお洒落について議論していて、薄珂も立珂が好きな物を見ようと覗き込んだ。
 しかし薄珂が気になったのは羽根飾りの形状や品質ではなくその値段だった。
 立珂の羽根に比べれば輝きも無く小さな羽根で、美星の父の店の商品と比べても品質が劣るのは明らかだった。けれどその値段は銀三枚となかなかの高額だ。三人家族の生活費が銀十枚前後というのを考えると、こんな小さな露店に並ぶ価格ではない。
 だが美星の父は市場と隊商には一般家庭向けの品が並んでいると言った。何となく妙な感じがして、薄珂は店主に聞こえないようこそりと美星の父に耳打ちする。

「こんな高くて売れるの?」
「売る気が無いんですよ。蛍宮には有翼人が多いから、羽根飾りは売れません。売る努力をするだけ無駄なんです。高額を付ける目的は販売ではないんですよ」
「あ、羽根を置いて良い店だって自慢してるんだっけ」
「そうです。よくご存知ですね」

 以前教え貰ったことだが、高級品である有翼人の羽根飾りを取り扱っていることは店に箔が付くらしい。加えて蛍宮では宮廷が他国に売っているからか、国民の中でも羽根は手元に置かず売る物という考えが根付いているようだ。
 愛憐と立珂は次の露店に足を進めたが、そこにはまた同じ羽根飾りが並んでいた。

「さっきと同じのだわ。御主人、これ人気なの?」
「ええ! 限定五つですよ!」

 店主は流行の品とやらを次々に見せてくれたが、薄珂は羽根飾りに違和感を覚えた。質は同程度に見えるが、何故か値段は銀一枚となっている。

「こんな安くていいの? あっちは銀三枚だったよ」
「売値は各店の自由だからいいんだよ」
「でも銀二枚って相当違うよ。売ったお金で生活するんでしょ?」
「売りたいから銀一枚なんだよ。三枚じゃ誰も買わないだろ」
「あ、そっか。じゃああっちは本当に売る気無いんだ」
「ははは。まあ、あそこは店員が多いからね」
「人数が関係あるの?」
「そりゃあるよ。売上で給金払うんだから高く売らなきゃ」
「へえ……」

 薄珂は人間の通貨に詳しくない。
 立珂と育った森でも獣人の里でも自給自足をしていた。養父はたまに人里で何か買って来ることがあり、里では金剛がまとめて買い出しをしていた。まったく見たことがないわけではないが、自分自身でお金を使ったことは無い。
 特に宮廷では望めばなんでも与えてくれたのでお金を使う必要が無かった。だから物を売ってそこから店員の給料を払うなんて知りもしなかった。
 人間の街で生活するのはこういうことか、と薄珂は興味が湧いてふんふんと値札をじっと見た。

「薄珂殿は質よりも値段が気になりますか」
「うん。あれ同じ羽根飾りなのに値段が違う。何でだろう」
「付いてる宝石が違うんですよ。色が違うでしょう」
「そっか。羽根だけの値段じゃないんだ。じゃあこれは偽物なのかな」
「偽物? この羽根飾りがですか?」
「だって最初のお店が限定五個って言ってたよ。なのにもう十二個目だよ」
「ああ、あれは引っかけです。あの店にあるのが五個というだけで、この世に五個という意味ではない。でもそう言われると今ここで買わなければ! と思ってしまう」
「あー。騙して買わせようとしてるんだ」
「販売戦略というんですよ。あちらの店を見てみましょう。きっと面白いですよ」

 美星の父が連れて行ってくれたのは、人の多い通りから離れて奥まった場所にある露店だった。日当たりが悪いせいかどこどなく陰気な雰囲気で、当然だが客はいない。
 しかし美星の父は気分良さそうに笑ってその商店の羽根飾りを指差した。
 それは先ほどからたくさん見てきた物と同じ羽根飾りだったが、値段は銀五枚という破格の値段が付けられている。よく見ればどの商品もかなり安い。

「ねえ、こんな安くていいの? 銀三のとこもあったよ」
「だって安くないと来ないでしょ、こんな場所」
「ならもっと人の多いとこに出せば?」
「場所代が高いんだよ。俺じゃここが精いっぱい」
「え? お店出すのにお金がいるの?」
「当然。人が多い場所ほど高いんだよ」
「ふうん。でも俺はここがいいけどなあ……」
「ほお。それは何故?」

 店主は何言ってんだと馬鹿にしたが、美星の父は興味深そうな顔をした。

「だってここ宮廷南門への一本道だよ。宮廷の職員さんが毎日通るから宮廷で使う物ならたくさん売れるよね。羽根飾りは売れないと思うけど」
「職員? そうなのかい?」
「うん。下働きの子供も多いからお弁当とかお菓子の方が売れそう」
「ほー。そりゃいいこと聞いた。よし、明日から食いもん出すか」

 良い情報有難うな、と気を良くした店主は林檎の香りがする飴玉をいくつかくれた。明日はこれが商品になるのだろう。
 後で立珂と食べようと腰に下げた小さな鞄にしまうと、美星の父はまだ興味深そうに見つめてきていた。

「薄珂殿。質問してもよろしいですか」
「うん。なに?」
「薄珂殿ならここで何を売りますか。実際に用意できるかはおいておきましょう」
「立珂の欲しい物」
「即断ですね。それはどうして? 失礼ながら、世の誰もが立珂様を愛するわけではありません」
「でも宮廷の人はみんな立珂を知ってるよ」
「知っているから立珂殿の好きな物を買ってくれると?」
「あ、えっと、立珂っていうか有翼人の欲しいものかな」
「有翼人の?」
「うん。護栄様が言ってたんだけど――」

 それは立珂が療養のため芳明の診療所にばかりのころだった。
 謝りたいと言って護栄がやって来たのだ。しかし立珂はまだ寝ていることが多く、回復したとは言い難い状態のため薄珂が一人で対応に出た。
 一体何の話をするのかと身構えていたが、驚いたことに護栄は土下座をしたのだ。

「申し訳ありませんでした」

 友人というわけではないし付き合いが長いわけでもない。けれどこんな風に頭を下げる男ではないことは分かっている。
 今度会ったらどうしてやろうかと思っていたけれど、こうされては怒鳴るに怒鳴れない。

「謝られても困るよ。許すことはできない。でも――」

 薄珂は護栄を立たせると、ぺこりと頭を下げた。

「立珂を助けてくれて有難う」
「薄珂殿……」
「護栄様の言うとおりだよ。俺は立珂を守らなきゃいけないのに傍を離れるなんて……」

 愛憐に怪我をさせられたとき、逆上した薄珂は立珂の手当ではなく愛憐を殴ることを優先したのだ。
 それを止めてくれたのが護栄で、立珂の手当てを最速でできたのも護栄がてきぱきと指示を出してくれたおかげだった。

「こんなことになってようやく分かりました。私はなんと恐ろしいことを敷いていたのかと」
「……うん」
「ですが私のように思う者が少なからずおります。私達には有翼人の大変さが分からないのです」
「分からなければ何したっていいの!?」
「いいえ。いけません。だから我々は有翼人を理解したいのです。これを見て下さい」

 護栄は両手で大きな紙を広げた。
 そこには勉強をしてこなかった薄珂では読めない複雑な文字がたくさん書いていある。かろうじて分かるのは数字と簡単な文字だけだ。
 唯一分かるのはこれが何かの図面だということだ。大きな円に様々な模様が描き込まれている。

「なにこれ」
「有翼人保護区の設計図です。水を中心に建てる予定でしたが、水がにおうとおっしゃられたとか」
「うん。そうみたい」
「それと有翼人はみな薫衣草と加密列を好まれると」
「それはよく分からない。孔雀先生がそうだって」
「薄珂殿はどう思われます。立珂殿やここで暮らす有翼人を見て」
「……そうだと思う。加密列は花本体っていうよりお茶が好きなんだと思う。何でかは知らないけど」
「そうですか。そう、そういったことが全く分からないのです。良かれと思ってした事が的外れで苦しめる」
「具合悪くなってからじゃ遅いよ」
「おっしゃる通りです。なので私達には種族を繋ぐ架け橋が必要です。そしてそれは薄珂殿と立珂殿だと思っています」
「架け橋?」
「異なる種族でありながら相手の望むものが分かる。これは長く共に生きた経験からくるもの。その経験を施設に反映できれば有翼人が過ごしやすい場所を作れます。どうかお力添えを頂けませんでしょうか」
「……って言われてもな……」

 率直な感想としては『勝手にやってくれ』だった。
 全ての有翼人に良い生活を、というのは立派なことなのだろう。けれど薄珂が大事なのは立珂であって、全有翼人ではないのだ。天藍のように全種族平等を掲げて大義を果たそうなどとは思っていない。蛍宮は立珂にとって安全である場所の候補にすぎず、そのために時間を割くつもりは毛頭ない。
 しかしこれが完成すれば立珂はもっと良い生活ができるかもしれないと思うと断りにくい。どうしたものかと迷っていると、後ろから眠そうな声が聴こえてきた。

「僕良いと思うよ」
「立珂!?」
「立珂殿! 具合はよろしいのですか!」
「うん。今日はとっても気分が良いの」

 ふらふらと頼りなげに歩く立珂に駆け寄り抱っこすると、護栄はまたも土下座をした。

「申し訳ございません。立珂殿がお望みのままいかようにも処罰を受ける所存です」
「僕そういう怖いのは嫌いだよ。けどもう嫌なこと言わないでね」
「……はい。二度とそのようなことはしないと誓います」
「立珂。助けてもらったお礼して」
「あ! そうだった! 応急処置が適切だったから大事にならなかったんだよって芳明先生が言ってたの。助けてくれて有難う、護栄様」
「……もったいないお言葉……」

 罰を受けるつもりなら感謝をされるとは思ってもなかったのだろう。護栄は目に涙を浮かべていた。
 それ以来、護栄は有翼人について薄珂と立珂に話を聞きに来ることが多くなっていた。
 獣人保護区のように、有翼人が快適に過ごすことのできる場所を作りたいらしい。だが、やはり薄珂はそれに手を尽くす気にはなれなかった。立珂と共に過ごす時間をその他大勢のために費やすことはできない。
 しかし立珂は、とっても良いね、と嬉しそうに護栄と話しをしていた。同じ有翼人が快適に過ごせるようになるのが嬉しいようだった。
 それを見ると薄珂は自分は心が狭いのだろうかとも思ったが、それでも立珂以外に時間を割く気にはなれない。だが立珂が望むことなのならば薄珂はそれを叶えるだけだ。
 そしてそれはこの露店で有翼人の好きな物を並べることでも叶うのだ。

「護栄様が有翼人のこと知りたいなら護栄様の部下も知りたいよね。なら立珂の好きな物は興味あると思うんだ」
「ほお……」
「それに有翼人も買いに来ると思うよ。同じ種族同士の方が安心できるし。あ、孔雀先生の加密列茶を配ってもいいかも」
「これは素晴らしい。よく考えておられる」
「そう?」
「現実的で今すぐできそうなのがいい。情報を商売に繋げられるとは、薄珂殿には商才がおありですよ」
「え、そ、そう……?」
「ええ。それに薄珂殿の勧める品ならば有翼人の世話をする者も興味を示す。護栄様のおっしゃる架け橋とはまさにそれ」
「架け橋……」

 美星の父はいやいやすごい、としきりに褒めてくれた。
 だが薄珂はいつも通り立珂のことを考えているだけで、全有翼人のためだとか蛍宮のためだとか、そんな特別なことを考えたつもりはない。そうしたいと思った事も無かった。

「薄珂ー! これ見てー!」
「あ、可愛い! 可愛いぞ、立珂!」

 けれど、立珂が笑っていられるこの場所を大切にしたいとは思う。

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