文字数 1,094文字

「麗華で~す!」

「ゆみえでーすっ!!」

「……白谷です。今日は数合わせということで来ました」

お、おう……いきなりのKY発言。

確かに白谷さんの顔は中の下、
もしくは下の中くらいかもしれない。
だけど数合わせということなら、俺も一緒だ。

場の空気が若干凍っている。
ここは俺が……!

「俺も数合わせなんですよ! 白谷さんと同じですね!」

「崎……お前っ!! っていうか麗華!!」

「はい?」

今度は麗華ちゃんを引っ張ってきた智也は、俺に聞こえる程度の声で質問をした。

「なんで白谷さんなんて呼んだんだ!? 学年も違うだろ!」

「え~……その、ノリでさ。みんなで飲みに行こうって話をしていたとき、
偶然白谷さんが近くにいたんだよね。
それで誘ったら、『行く』って」

「わ、私だってまさか『行く』なんて返事をもらうなんて思ってなかったから……。
白谷さん、こういうの興味なさそうじゃん?」

「………」

白谷さんは乾杯前だというのに、すでにビールを半分まで飲んでいる。

「崎の出番だぞ! 行け! 爆弾処理班!」

「え、えぇ~……」

智也に押され、俺は白谷さんの隣に座った。
だが、会話はない。白谷さんはごくごくとビールを飲んでいる。

「あ、あの、白谷さん……ですよね? 
俺、3年で空手部主将の崎っていいます」

「……ああ、キミも数合わせなんだっけ」

「その豹柄の服……い、いいですね!」

「そう? ライブTシャツなんだけど」

ライブ、という単語に俺は引っ掛かった。
ここから会話を広げればいいんじゃないか!?

「どのバンドのですか!?」

「ペンダンツってバンド。これは5年前の千秋楽ライブ限定グッズ」

ぺ、ペンダンツ……知らないな。
もしかして、インディーズみたいなバンドなのかな?
いわゆるバンギャってやつか……?
それにしても白谷さんは、服装こそは派手だけど、顔は地味だ。
髪だって金髪とかに染めているわけではない。
バンギャのイメージとは合わない気もするんだけど……。

「へ、へぇ……」

「………」

会話終了。
ダメだ、この人……。
白谷さんは相変わらず、ビールをごくごく飲んでいる。
変わってるっていうよりも、KYなのは俺でもわかった。

「……はぁ。足りないな」

白谷さんのジョッキが空いた。
と、とりあえず、オーダーだよな。

「白谷さん、次は何飲みますか?」

「んじゃ、芋焼酎ロックで」

「い、今頼むんで……」

「カンパーイ!!」

隣では智也たちが楽しそうにグラスを合わせている。
く、くそう! みんな俺たちを無視して、
乾杯かよ!!

「乾杯って何に対して?」

「えっ」

盛り上がろうとしていたみんなが、表情を引きつらせる。
いやいや、普通はまず乾杯するじゃん!

つーか、本当にこの人何しに来たの!?
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