【第1話】創るもの。
文字数 1,144文字
街を歩く生活困難者は、アルミ、スチールの空き缶ではなく新鮮な『ゴミ』を集めている。ゴミに付着した『DNA細胞』を彼らは伝手(つて)で他人(ヒト)へ売るのだ。
不思議に思うかもしれないがそれは流通としてまかり通った。その買い手の1グループがボク達、
――『化け物クリエイターズ』だった。
それは犬だったり、猫だったり、そしてその大半は、――変異体(ばけもの)だった。
彼女は、細胞から生まれたモノに知識を吹き込む『生命付与者(エンチャンター)』。
名を『言霊(ことだま)みれい』という。
ボクらは、彼女のチカラによりこの世界でカネを得ることが出来た。知識持つ化け物を使って、世界(よのなか)で戦う事が許された。
イバラキの街『ヒタチナカ』は多くの瓦礫に溢れている。桜の並木は倒れ、地に在った根は食われた。砂場で遊ぶ幼子はこの『ヒタチナカ』に残っていない。
世界が『ホーム』と呼ばれた4人の家族に支配された時代。
ボク達は何も持ちえなかった。
父も母も、土地も金も、苗字も。
父が居た過去があるとするなら、父はアソコ、前方の集積所でゴミを漁っている。鬱々と呟きゴミ拾う『アレ』は、自分が信じた患者に財を食い尽くされた道化だ。
命を救う! と世に立ち上るも、疲弊し債務を抱えこの時代に負けた『ゴミクズ』だ。
母は他所の男とこのあばら屋を出て行った。
元の苗字はいい値段で軍の男に買われていった。
ボクに残ったのは何十もの借用書と、たった1人の姉だけ。
苗字を持たないボクは自身をこう名乗った。偉大なる父を謳い、
――『ヒト腹(はら)創(つくる)』――と。