第4話 骨

文字数 586文字

 家人が自転車でコケて骨を折って、もう一ヵ月が経つ。
 大きな病院(地域では)に行って、診察をしてくれた医師が面白かった。
「レントゲンでは分からなかったので、MRI検査をさせて頂きました。骨の中が、ぐちゃぐちゃってなってるの、見えますか。これはレントゲンでは見えませんでした。…肋骨の骨折、大腿部の骨折。全治二、三ヵ月でございます。」
 丁寧なお医者さんで、こちらの訊きたいことを、訊く前から、分かり易く教えてくれた。
 私に面白かったのは、最後の「~でございます」という言い方で、何か商品の紹介でもされたような感じで、あやうく噴き出しそうになった。

 家人も、このお医者さんはイイ!と実感したようだった。義務的でなく、何かニンゲン的な、チャンと相手の気持ちになって話をしてくれる、接していて安心できるお医者さんだった。
 医学というのは、とても明快だ。
「早めることとか、何か、本人にできること、ありますか」みたいに訊いてみる。
「うん、これはどうしても二、三ヵ月掛かります。骨がくっつくまで、何をしても、どうしても掛かります。」
 逆にいえば、二、三ヵ月経てば、どうしても治るということだ。
「待つ」こと。これが、一番の治療。治そう、と焦ることもない。とにかく時間が過ぎるのを待つこと。待つのが、治療。

 骨、不思議。自然に、くっつくんだよなあ。それしかない、という…
 特に、オチはない。
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