男の動きが

エピソード文字数 715文字

 男の動きが大きく、激しくなってきた。律動が繋がった部分から、私という肉を割り入り、響き渡る。狭間に光る快感。課せられた進化ではなく、自身で選び取った進化が、私を支配する。乱暴なくらい握られ、扱かれた。くっと唇を噛む。恥ずかしさも、すでに湖水の一部だ。湖面に落ちた月にまで到達する。
「あ、あ」
 声が零れ出る。もう、せり上がってくる感覚をやり過ごせない。痛いくらい、私の内部を駆け巡る。ハクビと交わった時と同じだ。けれど、今の私は違う。今の私は、自分で選んだ。
「ふぅっ、うっ」
 唇が水に浸る。言葉が溶ける。私は蕩けて消える。
 男が私の肩に爪を立てたまま、中心を貫き続ける。私を扱いていた片手で腰を浮かされた。浮力も手伝い、あっさりと彼の望む姿態になる。ちょうどいい位置を見つけたのか、高く掲げた私の臀部を、両手で掴み上げた。そのまま、自分を激しく打ち入れる。
「っっ!!」
 私の細胞が、一瞬音をたてて瓦解する。そしてすぐに、彼の動きを求め、集約する。恥ずかしいくらい彼に纏わり付く。湖底に手をついてもいられなくなった。肘ががくがくと震える。崩れる。湖水に没する。
「あ、あああ」
 水が口に入り込む。身体が水に沈んでいく。それでも、繋がった部分は動き続ける。別の器官が私を生かしていた。男が沈んでいた私を抱き上げた。湖水が全身から滴る。私が溶ける。
「いい」
 喘いだ。男の唇は私の背中に在った。
「このまま。ここで」
 見上げた空に、月が在った。水が滴る視界で滲んでいる。
「世界を、私に」
 抱える男の掌が、熱い。私をこの地に繋ぎ止める。
「世界を、注いで──!」



 月が砕けた。
 そして、生まれた。



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