国家と共に(12)
文字数 653文字
一三時を少し過ぎた頃、JR品川駅を降り立った。
次のアポイントは一四時。一時間近く待たなくてはならない。どこかの喫茶店で時間をつぶそうと思い、俺が駅前の店を物色していた時だ。携帯に電話があった。
「もしもし。突然のご連絡恐れ入ります。あの、ひまりプロダクションの織葉社長の携帯でよろしかったでしょうか?」
丁寧な物言いだ。
「ええ、そうです」
「わたくし、東洋テレビの斉藤と申します。ただ今、お電話大丈夫でしょうか?」
「東洋テレビ……? 大丈夫ですよ」
東洋テレビは東京キー局のひとつだ。何事だろうか。そして俺の携帯の番号を知っているのはなぜだろう。
「ありがとうございます。私、東洋テレビが毎週水曜日二三時から一時間にわたって放送している『特捜テレビショー』の制作を担当しています。そこで御社 の所属タレントである神楽日毬さんを、次の番組にお呼びできないものかと考えております。ぜひともお打ち合わせをさせて頂ければと思ってお電話差し上げた次第です」
あやうく俺は、携帯を取り落としそうになった。
いきなり日毬が五段階くらいステップアップしてしまったかのような、突然の棚ボタだ。壁をひとっ飛びに乗り越えるこの話に、飛びつかないわけがない!
興奮する気持ちを抑え込み、あらん限りの平常心を総動員し、俺は平静を装って応じる。
「なるほど。いいお話ですね。神楽のスケジュール次第ですが、おそらく大丈夫でしょう。お打ち合わせは早ければ明日には可能ですが、斉藤さんのご予定はいかがですか?」
次のアポイントは一四時。一時間近く待たなくてはならない。どこかの喫茶店で時間をつぶそうと思い、俺が駅前の店を物色していた時だ。携帯に電話があった。
「もしもし。突然のご連絡恐れ入ります。あの、ひまりプロダクションの織葉社長の携帯でよろしかったでしょうか?」
丁寧な物言いだ。
「ええ、そうです」
「わたくし、東洋テレビの斉藤と申します。ただ今、お電話大丈夫でしょうか?」
「東洋テレビ……? 大丈夫ですよ」
東洋テレビは東京キー局のひとつだ。何事だろうか。そして俺の携帯の番号を知っているのはなぜだろう。
「ありがとうございます。私、東洋テレビが毎週水曜日二三時から一時間にわたって放送している『特捜テレビショー』の制作を担当しています。そこで
あやうく俺は、携帯を取り落としそうになった。
いきなり日毬が五段階くらいステップアップしてしまったかのような、突然の棚ボタだ。壁をひとっ飛びに乗り越えるこの話に、飛びつかないわけがない!
興奮する気持ちを抑え込み、あらん限りの平常心を総動員し、俺は平静を装って応じる。
「なるほど。いいお話ですね。神楽のスケジュール次第ですが、おそらく大丈夫でしょう。お打ち合わせは早ければ明日には可能ですが、斉藤さんのご予定はいかがですか?」
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