第2話 ✿ 好奇心シスター

文字数 1,066文字

メアリーとルークは馬車に乗り、街の本屋へと足を運んだ。

俗世に戻って良かった…。環俗万歳

十字を切り、神に祈るように胸の前で両手を組む、メアリー。

環俗万歳って。これがメアリーさんの素か。他にまだ別の顔があったら怖い…)
私、好きな本を探してきても、構いませんか

それはもちろん

彼女は、心なしか弾んだ歩調で、書棚の森へと消えてしまった。
メアリーさん、どんな本が好きなんだろう?

書棚を歩いていくと、彼女の姿を見つけた。


彼女が眺める書棚はというと。

あ…あなたという人は…

む。今、ルーク様の声が…。ひゃっ

本を一冊引出そうとしていたメアリーは、びくっと肩をはねあげた。

びっくりしました。なぜ、そんなところから、お顔を…?


変態かと思いました

ちがいます。まったくメアリーさんは、俺を吸血鬼だの変態だのと…

そういえばルーク様、お探しの本があるとおっしゃって…


ああ、なるほど。やらしい本なら、ココの棚ですよ

メアリーは笑顔で、本棚を指さした。

あなたに恥じらいってものはないんですか…。


探したい本というのは、こういう系ですか?

はい、恋愛の本を…。花嫁修行中なのになんだか華がないな、むしろ枯れてる? と思いまして

自分でそれを言いますか

そういうわけで、この前ルークさまが持っていた本が気になったのです。


なんといっても題名が『修道女泥棒


忘れようにも忘れられません

そりゃ…ね。俺もタイトルにつられて買いましたから

でもルーク様が隠してらっしゃるから、こっそり買って読もうと思っていたのに。


なにを泥棒されちゃうのかな、と思って

(な、なんだ、この質問は。なにか企んでいるのでは…)

ルークは、第一種警戒態勢に入った。


けれどもメアリーは、ただルークを見つめるだけだ。


二人の間に沈黙がつづき、ルークの方がいたたまれなくなってついに口を開いた。

メアリーさんは、なにを泥棒されるのだと思います?
心ですか?
(あれ? 意外に純真な答え…)

ああもう。何度も訊ねられるのはキツイので内容をざっくり言いますよ。一回だけですよ!


誘拐された修道女が、あれやこれやされて、結果、泥棒に身も心もゆだねるお話です。


以上! この話はこれで終わりにしましょう。

なるほど、ふーん。あれや、これや、って。具体的に?
はい?

だから、あまり詳しくないのですよ。


キスをして、それから一緒に寝るのでしょう? それが…あれやこれや?

あなたの性の知識に、いささか不安が…。どこまで知っているんです?


まさかコウノトリが運んでくるとか、言いませんよね?

なぜ鳥が出てくるのです?

メアリーはルークをじっと見つめた。
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登場人物紹介

シスター・ガブリエラ


本名:メアリー・デイヴィス

ルーク・リンフォード


伯爵卿の息子。

シスター・テレサ


修道女。負傷兵アルバートの手当てをした。

アルバート


 元軍人。顔が怖い。

 戦後、警察官になる。

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