第4話 ヤマト

文字数 989文字

~6月(2年生)、朝の大学~
おはようございます。
おはよう、青年!
お前、さりげなく、溶け込みやがったな。
いいじゃない、別に。
だってさ、ハセガワくん。
お前、

オレを応援すんじゃねェのかよ!

邪魔する気はないけど、応援する気もない。
大体さ、

お前、他に仲間いねェのかよ。

言い過ぎだぞ!
あ、いないんです。

同じ高校だったヤツもいないし、

写真部もほとんど個人活動だし。

(高校時代は写真部に所属して、

男子サッカー部の撮影を主な活動としていた。)

高校2年の秋、

ミヤシタはサッカー部の対外練習試合に出向き、

帰りに近くの公園に立ち寄る。

撮影記録の確認中、

2人組の警察官に職務質問を受ける。

通報は盗撮を懸念した近所の主婦たちによるものだったが、

そんな形跡など見られずすぐに容疑は晴れる。

(その夜、学校から呼び出しを受け、

写真部に対する10日間の活動停止処分を言い渡された。)

このことは校内でも噂になり、

教師、生徒から偏見の目で見られるようになる。


保護者からの圧力も強く、

写真部を追われ事実上の廃部となった。


それでもミヤシタの気持ちが

写真から遠ざかることはなかった。

(3年生の夏、

駅のホームで偶然見かけた学祭の告知ポスターが

フジイさんの作品「鼓動」と出会うきっかけだった。)

その作品の「大胆な構図」と

「差し込んだ柔らかな光」とによる強烈なコントラストが、

筆舌に尽くしがたい印象をミヤシタに植えつけた。


そのときは作者と撮影機材以外の情報を知る(すべ)がなかったが、

次第にフジイに憧れるようになる。

(卒業までの8か月間は

通常の撮影活動と並行して様々な写真展に出向き、

フジイさんの作品を探し求める日々を送った。)

写真展を巡るうち、

フジイの姿を見かけるようになるが、

声をかけることはなかった。

附属高校のため、

ほとんどの生徒がそのまま慶泉義塾大学へ進学する中、

ミヤシタは1人聖南大学への進学を決めた。

何なんだよ、あいつ。

突然やってきて、

1年の分際で生意気にミナミちゃんにチョッカイ出しやがって、

クソガキがッ!

将来(やしな)っていく甲斐性(かいしょう)あんのかってんだよ、

ボケ、100回ぐらい死ね!!

そんな言い方しなくてもいいだろ、

お前と違って趣味が合うんだし。

そもそも「養う」って、お前明日から働く気かよ。

んな訳あるか、

できればこの先働かずに食って行きてェよ。

(!!)

ボケッ、クズが!!

1万回死ね、このタコッ!!

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登場人物紹介

【アイバ タケル】

主人公

大学(聖南大学)進学のために新潟から上京

高校時代は野球部(3軍)に所属

牡羊座、A型、右利き

彼女はフジイサヤ

【フジイ サヤ】

ヒロイン

大学(月ケ丘女子美術大学)進学のために長崎から上京

獅子座、A型、右利き

彼氏はアイバタケル

【コジマ ミナミ】

ヒロイン2

大学(聖南大学)に進学し、地元東京の自宅から通学

蠍座、B型、右利き

【オヤナギ マリ】

アイバの同級生

大学(聖南大学)進学のために愛知から上京

蠍座、O型、左利き

【クノ ミチヒコ】

アイバの同級生

大学(聖南大学)に進学し、千葉から通学

彼女あり

双子座、AB型、右利き

【ハセガワ ヤスシ】

アイバの同級生

大学(聖南大学)に進学し、埼玉から通学

牡牛座、A型、右利き

【キタジマ アスカ】

フジイの同級生

大学(月ケ丘女子美術大学)に進学し、地元東京の自宅から通学

射手座、O型、右利き

【ミヤシタ ヤマト】

アイバたちの大学の後輩

大学(聖南大学)に進学し、神奈川から通学

天秤座、A型、右利き

【コジマ タクミ】

ミナミの実兄

アイバたちの大学の先輩

大学(聖南大学)に進学し、地元東京の自宅から通学

大学のサッカー部に所属

水瓶座、B型、左利き

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