引力は遠くに

文字数 388文字

思えば 悲しみを噛み砕くために
タバコを吸っていた 若い頃
膨らんだ夜に 月を見上げて
おぼろげな悲しさの
正体を暴こうと躍起になることに夢中だった

一つ年を重ねれば
一人友が離れていく
年を取るということは
ぼんやりとした月明かりの
明け方の向かい酒のような
淡く透き通った木の葉の上を
裸足で歩くような感覚に似ている

   「悪かったよ」
   お前のその言葉を
   信じられなかった

歩くほどに離れていく
涙が止まらないほどに
この星は丸いというのに
出会うことはもう二度とない
月明かりを背に
惑星と惑星を繋ぐ引力のように
私たちの間にも必ずあったはず
これが永遠だと錯覚してしまうような心地の
 いい浮遊感

その距離384400km

私の回転が止まったとき
お前は離れていく
すべては停止して
周りのものすべて
 それは
     生
       と
         死
           さえ
             。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み