六、弁財天のロックな悩み

文字数 14,428文字

「すみません、なんか……」
「別にいいよ。俺たち暇だったし。ね、隼真」
「うん。それに浜津! タメ語でいいって何回言ったっけ?」
「十二回……かな」
「数えるな! お前は真面目すぎっ!」
隼真がつっこむと、浜津は困ったように笑う。
今日は俺と隼真、浜津の一年組で、駅前でたむろっていた。それもこれも浜津の幼なじみ『オトちゃん』のためだ。
この『オトちゃん』というのは、鎌倉女子高等学校の三年で、よく藤沢駅前でギターを弾いている自称・ストリートミュージシャンらしい。普段はソロでやっているが、バンド活動もしているとのこと。
『オトちゃん』は、浜津の家のお隣さんで、元からかなりの資産家という話しだった。なんでも庭には大きな池があって、一匹何千万もする鯉が泳いでいるとか。そんなお嬢様だが、現在絶賛反抗期らしい。
祖父母や両親は東京のお嬢様大学に進学させ、リッチで頭のいい夫を捕まえ、婿養子に迎えたいようだが、彼女の性格は『お嬢様』とは正反対だった。
「ふうん、潮にしては人を集めたほうね」
 オトちゃんこと、都(みやこ)音羽(おとは)は、俺と隼真をつま先から頭までじーっと見てからそう言った。
 今日、浜津と一緒に駅前に来たのは、要するにサクラになってほしいという都さんのお願いというか命令があったからだ。普段、浜津はひとりで行っていたらしいが、さすがにサクラひとりはむなしい。何度も友人を連れてくるように言われていたが、浜津に友人はいない。そこで、俺たちが手を挙げたのだ。
 あの『志桜』のライブから、俺たちと浜津は急激に仲良くなった。浜津から芸能界の裏事情を聞くのは楽しかったし、なによりこいつはなんでもできる。歌やダンスがうまいのは当然なのだが、普段最下位のほうにいた俺たちが気づかなかっただけで、こいつはテスト、学年上位者。なんとなく勉強を教えてもらっているうちに、気づけば一緒にいることが多くなった。
それと八幡先輩もだ。あの人はもともと料理がうまいから、よく弁当を作ってきてくれていた。ただし、食べるのはもっぱら保健室だが。
今日のサクラにも先輩は呼ばれていたけど、なんでも昔の仲間との集会があるとかで欠席。……これは予想だけど、その昔の仲間の中に、伶子先生もいるんだろうな。八幡先輩が伶子先生を優先するのはわかるから、俺たちは三人でここに来たんだ。
「どうもこんばんは、OTOHAです! イエーッ!」
 都さんは挨拶をすると、さっそく持っていたギターで、自作の曲を披露する。
 しょせん、女子高生の趣味程度にしか思っていた俺だけど、彼女の歌声に鳥肌が立つ。ギターもうまい。サクラを集める意味がわからないくらいだ。俺がそう言うと、浜津は笑った。
「オトちゃんは、歌と曲はかなりいい線行ってるんだけど……トークが壊滅的なんだよね」
「でも、そういうアーティストは多いだろ?」
 隼真も俺と同じような意見を言うが、浜津は笑うだけだ。
「オトちゃんのトークを聞けばわかるよ」
 どういう意味なんだろう? 不思議に思っていたが、その理由はすぐにわかった。
「おい、てめーら! アタシの曲、耳かっぽじって聞いたかー? 音感がなくても、アタシの曲はビビッときちゃうからな! よぉーく脳裏に焼き付けろよ!」
 ……ああ、そうだな。壊滅的だ。浜津の苦笑いの意味がわかった。どんなにいい曲や歌を歌う人間でも、トークがこれじゃあファンはつかないだろうなぁ。口が悪すぎる。
「ところでさ、浜津は『自分が志桜だ』って都さんには言ってないの?」
 浜津こと志桜は、音楽業界では引っ張りだこのアイドルだ。志桜である浜津のほうが芸能界にも詳しいだろうし、大きな場所でライブをやることも多い。現に、鎌倉芸術館でのライブだって、中止にはなってしまったけど、路上で演奏しているよりも大勢に見てもらえたはずだ。
 俺の質問に、浜津は唇に人差し指を当てて「しーっ」と言った。
「オトちゃん、負けず嫌いなんだよ……。ボクが『志桜』だって知られたら、多分殺される」
「殺っ……? ま、まさか」
 思わぬ言葉に驚く俺だが、浜津は真剣だ。
「まず、『志桜』はオトちゃんにアーティストとして認められていない。ただのアイドルだってよく言われてる。そして、その正体が、弟分だと思っていたボクだとしたら?」
「あー……そりゃ怒るわなぁ」
 話に割ってきた隼真が納得する。
「本当のことを言うけど、ボクはオトちゃんのオーディションについて行っただけなんだ。そこで偶然メイクさんたちにオモチャにされて……それでアイドル志望だと勘違いされて、オーディションに受かっちゃったんだよね。だからボクは、一生オトちゃんに正体を話せないんだ」
 うわぁ……。最悪なパターンだ。アイドルのオーディションに友達の付き添いで来たら、自分がデビューすることになったっていうアレと一緒だな。
 そんな話をしていたら、都さんの曲が一曲終わってしまった。その瞬間、拍手が遅れたことで、ギロリとにらまれる。瞬時に俺たちは手を大きく叩く。……確かに浜津扮する志桜とは違う。よっぽど志桜のほうがかわいいとさえ思ってしまう……って、それも重症だな。
 ただひとつ、確実に言えることがある。都さんに足りないのは、歌唱力でも作曲能力でもない。『かわいさ』だ。でも、彼女みたいなタイプに『かわいさ』が足りないなんて言ったら、泥沼に落ちるんだろうなという気は、鈍感で恋愛その他異性に詳しくない俺でもわかる。
この手のミュージシャンが欲しがっているのは、『曲に対する肯定』だからだ。
 そんなことを考えているうちに、都さんの路上ライブは終了した。
「ふふん、どうだった? アタシの歌は!」
「さすがだよ、オトちゃん! 今日も聴き惚れちゃった! ね? ふたりとも」
 いつも大人しい浜津が怖い。それだけ都さんに心酔しているというか……なんというか。こいつもある意味八幡先輩と同じクチなのかもしれないな。
「うん、よかったと思うよ」
 俺が浜津に合わせたら、都さんはずいっと寄って来た。
「……どこがよかったの? 詳しく言え!」
「え、えっと、歌詞も共感できるし……って、俺は男子校なのでわかりませんが、好きな人ができたらそういう気持ちになるんじゃないかなと」
「そっちの子は?」
「お、オレぇ?」
 頑張れ、隼真。悪いがここで助け船は出せない。浜津も見ているし、少なくても都さんの機嫌を損ねるな。
「あー……オレはちょっと難しかったかな。曲はすごくよかったんですけど、歌詞は共感できなかったというか」
「ああん?」
……やってしまったな、隼真よ。俺はフォローできない。浜津も視線を逸らす。こいつも面倒くさい幼なじみを持ったもんだなぁ。
 そんなこと思っているとき、見知った顔が横から口を出した。
「俺はすごくよかったと思ったけどな? 人によりけりなんだね。でも、俺は……すごく元気づけられた。君の曲はとても素晴らしいね。気に入っちゃったよ」
「あ……ありがと」
「はは、そんな恐縮しないでよ。さっきまでのトークも、俺は好きだよ?」
「マジで? じゃ、ない。あ、ありがとうございますっ!」
「いつもここでやってるの? よかったらまた聴きにきたいな。スケジュールのリーフレットとか、ある?」
「こ、こちらですっ! 次回はバンドのボーカル兼ギタリストとして出るんですけど!」
「ありがと。頑張ってね。見に行くよ」
 男はにこやかに笑って去って行った。都さんはほけーっとしているけど……彼こそが、五頭龍最後の男、五頭生徒会長だ。
「あいつ!」
 最初にキレて追いかけようとしたのが隼真だった。それに比べて浜津は落ち着いている。
「今追ったところでしょうがないよ。下手に追っても、袋叩きにされるかもしれない」
浜津の落ち着きようにムッとする隼真だが、ここは浜津の言う通りだ。五頭のやつ、俺たちのことを知らない風に見せていた。実際生徒会長と一般生徒だったら生徒会長側が知らなくてもおかしくはない。だが、俺たちの関係は別だ。五頭は俺たち七福神が封印しようとしている、悪人。五頭からしてみれば、俺たちは自分を封印しようとしている敵。
 ……もし、五頭が言った通り、都さんのライブに来るとするなら、リーフレットを見れば次の出現場所がわかる。
「これは罠かもしれねーけどな」
 隼真がリーフレットを見ながらつぶやく。五頭のことだ。すでに他の四人の龍が捕まっているのはバレている。そこで都さんのライブを利用して、俺たち七福神と天女をおびき寄せるという作戦だ。
 龍の珠は天女である岩屋が保管している。俺と隼真と浜津が五頭の居場所を突き止めたと言えば、きっと来るだろう。八幡先輩や伶子先生も。ふたりは龍に身体を乗っ取られた過去がある。龍には恨みがあるはずだ。……普通なら恨みを抱かなくても、ふたりはヤンキー。自分以外が自分の身体を利用したとならば、怒りを感じているはずだ。現に伶子先生は笑顔だったがかなりキレていた。伶子先生がキレるなら、八幡先輩も怒るはずだ。八幡先輩は明らかに伶子先生が……と、この辺は自重しておこう。
「でも、罠だとしても行かないといけない。そうでしょ?」
 俺がいうと、浜津は難しい顔をして返答した。
「その通りだけど、学校にいる間のあいつも監視しておかないとね」
 浜津は冷静だ。さすがひとりで四ノ宮を倒しただけある。肝心の都さんと言うと……。
「カッコイイ……」
「え!」
 冷静だった浜津が、ぎょっとする。さっきまでの威勢の良さはどこへやら。都さんはまるで乙女のように手を前で組み、目をキラキラさせている。まさかとは思うけど、五頭に一目惚れ?
「だ、ダメだよ、オトちゃん!」
「あ? 何がだよ。潮は黙ってろ! アタシは彼のために歌う!」
「はぁ……」
 頭を押さえる浜津。都さんは完全にメロメロだ。まぁ、五頭の見た目は確かにイケメン……。いや、噂だと、生徒会長だけあって成績も常に一位、運動もできると聞いたことがある。そんな男に『頑張ってね』なんて言われたら、きゅんとするのも当たり前なのかもしれない。俺が呆れてると、浜津が困ったような顔をしていた。こいつ、やっぱり都さんのことを?
「……まぁ、浜津も頑張れ」
「いや、何か誤解されてたら嫌なんだけど」
「誤解もなにも、浜津は都さんのこと好きなんじゃねーの?」
隼真も話に入ってくる。好きじゃなかったら毎回こうやってサクラをすることもないだろう。俺たちはそう思ったんだが、浜津は目を大きく開き、首を左右に振った。
「冗談じゃない! やめてよ、オトちゃんのことが好きとか!」
 その態度に、逆に俺たちが面食らってしまう。浜津は続けた。
「ボクとオトちゃんはあくまでも幼なじみ! ボクはボクよりかわいくない女の子はイヤだ!」
 ……なんだ、それ。つまり、『志桜』以上の女の子じゃなきゃ、浜津のお眼鏡に合わないってことなのか。なんつーわがまま……。『志桜以上の女の子』なんて、妄想出作り上げるしかない。そもそも『志桜』は浜津自身だ。こいつはナルシストなのか、それとも夢想家なのか。とりあえず、現実社会で『志桜以上』は無理だ。
「だったらなんで毎回サクラをやってるんだ?」
「それは、オトちゃんが命の恩人だからだよ」
 浜津は小さく語り出す。
 浜津が五歳の頃、幼なじみだった都さんの家に遊びに行ったことがあるらしい。ま、お隣さんだし、よくある話だろうな。ただ、運が悪かったのは、都さんとボール遊びをしていたこと。思い切り剛速球を投げられた浜津は、ボールとともに池に落とされた。そこで手を取り助けてくれたのが都さんだという。
「いや、それ命を救ってくれたというか……」
「マッチポンプってやつだよな」
「へ?」
 俺たちふたりが呆れていると、浜津は不思議そうな顔をした。お前、本当は天然だろ、と叫びたかったが、言わずもがなこいつはまさしく天然だ。それはここ最近一緒にいることが多かったから、よくわかった。『アイドルは天然』。これが当てはまっているから、浜津は志桜として大人気なんだ。普段はそこそこキレ者なのに、ある一部では恐ろしくポンコツ。浜津潮の正体だ。
「おい、てめーらっ! 何こそこそ話してやがんだ!」
 都さんににらみつけられると、自然に背筋がピンとなる。浜津につられて、だ。これが小さい頃からの『調教』の成果なのかもしれないと思うと、恐ろしい。
「なんでもないよ、オトちゃん」
「ふうん。で、もちろんおめーらもライブに来るよな? あの人の前で、ファン0なんて恥ずかしすぎるっ!」
「行くよ」
 少しすれた調子で、浜津が答える。やっぱりスネてるように見えるんだけど、本人は気づいてないんだろうな。
 ともかく、岩屋への連絡は学校のある日にすることにして、この日は解散になった。

「しかし大人しいな、五頭は」
 保健室でお弁当を食べていると、不愉快そうに岩屋が言った。伶子先生は五頭の一年からの健康診断の結果を見ている。
「うーん、一年生のときはとっても地味だったみたいね。身長が伸びたのも遅い。二年になってからよ?」
「……生徒会選挙、その頃にあったんだっけ?」
 八幡先輩だけはゼリー飲料を飲んでいる。これだけのご馳走をほぼ毎日作ってくれるのに、自分は食事らしい食事が好きじゃないって、意味不明すぎる。
 先輩に指摘されて、岩屋が職員室から本来は持ちだしてはいけない個人資料をめくる。
「そうだな。成績が上位に入ったのも、スポーツの成績がよくなったのも二年からだ……ちなみに、俺が天女としての能力を身につけたのも去年だから、時期は一致する。五頭はこの頃に五頭龍としての力を手に入れたんだ」
「普通の生徒どころか地味メガネだった、なんて、誰かさんみたいねぇ?」
 クスクス笑いながら浜津を見るあたり、やはり伶子先生はSだ。しかし、天然浜津も負けてはいない。
「ボクが目立っちゃったら大変じゃないですか! 女性アイドルが男子校に通ってるなんて知られたら! 毎日取材で先生たちも大変なことになりますよ!」
 これが浜津の素なんだろうが、思わぬ返しにあの伶子先生も目を丸くする。八幡先輩は珍しい表情の伶子先生を見て笑いを堪えているし、岩屋に至っては手に負えないと諦めているようだ。
「それで、お前らのほうはどうなんだ? 五頭の周辺を探ったんだろ?」
「ああ、それなんですけど……」
 俺は持っていたメモを見ながら報告する。
「文武両道、生徒の人気も上々。生徒会でもうまく立ち回ってるみたいですね」
「そうそう、グラウンドの使用権で争ってたラグビー部とサッカー部も、大人しくさせたみたいだよ。しかも、話し合いで」
「すごいですよね、あの血気盛んで有名な部を、話し合いで解決させるなんて」
 隼真の報告を聞いた浜津も、驚いている。どちらの部も、顔を合わせたら即乱闘で有名だった。それをうまくいなすなんて、よっぽどの話術がないとできないだろう。
「ボクは三年の教室の様子をうかがってきましたが……誰も五頭の悪口を言ってないんですよね。それどころかみんな、笑顔で『あいつは頼りになる』とか『勉強も運動もすごい』とか……」
「え、浜津、三年の教室行ったの?」
 『志桜』のとき以外は地味で目立たないのに、そんな行動力があったのか。一年が三年の使う廊下をうろつくのも、うちの学校では結構勇気のいることなのに。さすが芸能人。度胸がある。ありあまる。
 浜津は驚く俺を見て、反対に驚いた。
「別におかしくもなんともないと思うけど……。三年生でも地味な人はいるし、全員の顔を覚えている人だって多くはないんじゃないかな」
 言われてみれば確かに。高校は三年間だし、部活や課外活動のつながりがなくて、クラス替えしか経験がなかったら、生徒の顔を覚えていない三年もいるかもしれない。ましてや浜津は、最近は俺たちと一緒にいるけど、それまではクラスからあまり出ていなかった。だから俺や隼真は浜津の存在も知らなかったわけだし。
「でも、この様子だと学校で何か起こすつもりはなさそうだね」
 ゼリー飲料を飲み終えた先輩が、ゴミ箱に向けてシュートする。見事に決まるが、反応はなし。さすが、無気力人間。
 学校で何もアクションを起こさないなら、やっぱり最後の戦いは都さんのライブだろうな。こっちは五人……浜津はふたり分だから、六人。七福神がいる。天女の岩屋も。五頭がどんな作戦で来るのかはわからないが、これだったら圧倒的に有利だ。ただ、都さんには申し訳ない。バンドのギターボーカルという花形の舞台なのに、ステージは俺たちがきっと荒らしてしまうだろう。浜津のときと一緒だ。俺はちらっと浜津を見る。浜津は俺の視線の意味に気づいたらしく、笑顔を浮かべた。
「ステージが台無しになっても、ボクは平気だったよ。きっとオトちゃんも大丈夫だと思う。それよりも、江ノ島がなくなってしまうほうが辛いから」
「浜津は家、北鎌倉だろ? なんで江ノ島の心配をするんだ?」
「じゃあ、みんなはなんで戦ってるの?」
 隼真は質問に質問で返され、狼狽する。でも、真剣な顔で言った。
「オレは家が江ノ島だからだ。ずっとあの島に住んでいたんだ。生まれ育った場所を失いたくない。それは航太も一緒だよな」
 俺も強くうなずく。
「じゃ、伶子先生、八幡先輩は?」
「私は、私の身体をもてあそんだ龍を懲らしめたいのよ。『メッ!』ってね」
「……僕もレイちゃんと同じ。龍をブチ殺したい」
 伶子先生の『メッ!』は、『ブチ殺したい』っていう意味なのか……。最近、八幡先輩との会話を聞いて、なんとなくわかってきた。優しくて、天使のような美女なのに、伶子先生、恐るべし。それを聞いても伶子先生を……げふん、げふん、な八幡先輩もだ。
「……そういえば、岩屋先生は? なんで先生は江ノ島を守りたいんですか? 天女の生まれ変わりだからって、龍と戦ったり、七福神を集めたり……わりに合わない気がするんですけど」
 今まで聞いてこなかったが、ここでようやく俺は質問した。特に考えたことがなかったんだ。岩屋は天女の生まれ変わり。なのに男として生まれた。だから責任を感じた、とか、自分の肩に江ノ島の命運がかかってしまったから、とか、そんな理由なんじゃないかなと思っただけ。でもそれは、岩屋の口から聞いたことではない。俺の勝手な推測だ。
「……気になったんだ」
「は?」
 隼真がぽかんとする。
「俺が『天女』かどうか。正義の味方だとかはどうでもよかった。俺がもし『天女』だったら、この先どうなってしまうのか……。ま、簡単に言うと、自分の存在がどんなものか知りたかったってことだな。いたって個人的な感情だ。そんな感情に、お前らを勝手につきあわせたことは悪いと思ってる」
 ……はっ、個人的な感情? こっちは命がけで江ノ島を守ろうと思ってたのに、天女である岩屋は、自分の存在を確認するために戦ってたって……。
「くっ……あははっ!」
「新海?」
「ははっ……岩屋は岩屋ってことか」
「お前! 教師に向かって呼び捨てかよ!」
「はいはい、すみません。『教育実習生』様」
「……新海、お前、他のメンバーも二面性があるとは思ってたけど、お前が一番曲者だったんだな」
 俺は涙を流して笑いながら、岩屋を見る。他のメンバーも、俺を見てびっくりしているようだ。今までの俺は、愚直に江ノ島の平和だけを思っていたから。
「岩屋先生、『個人的な感情』で、ここまで戦ったりはしないよ。先生は弱みを見せないでしょ? なんだかんだ言っても、自分に江ノ島の命運がかかったことが気になったんだよ。そうじゃなきゃ、俺に気を吹きこんだりして、命を助けたりしなかっただろうし、あの夜だって見回りなんてしてなかったはずだ」
「クソうるせぇガキだな……しょうがねぇ、全部話してやる」
 岩屋はため息をつくと、お茶を口にしてから語り始めた。
 岩屋の祖母はそこそこ名の知れた女優だったらしい。江ノ島には江島神社という、弁財天を祀っている神社がある。弁財天は芸事の神様だ。鎌倉のほうにも弁財天を祀っている神社はあるが、岩屋の祖母は毎年お正月に岩屋を連れて江ノ島にお参りに来ていたらしい。祖父がいなかった岩屋は、祖母とともに江ノ島でお参りしたあとに甘酒を飲むのを毎年楽しみにしていたようだ。
 だが、自分が成長するにつれ、祖母の仕事がなくなっていった。最初は年齢的なものか、業界の評判が悪くなったのかはわからなかった。しかし、それから祖母はなおさら江島神社にお参りによく行くようになった。何度も何度も江ノ島へ通ううち、岩屋は祖母の力が吸い取られていくのが見えたらしい。オーラと言えばいいのか、気というのか。岩屋はそのことを祖母に言った。『江ノ島に行くことで、力を吸い取られている』と。そのときに祖母は、初めて岩屋に打ち明けた。岩屋の祖父と出会ったところが江ノ島で、一夜限りの関係を結んだと。そのあと、祖父である男は消えた。そのとき最後に見た男の姿は、人ではなく龍だったと。
「……つまり、岩屋先生は……」
「龍と人間の孫ってこと?」
 浜津と隼真が声を合わせる。
「多分だが……祖父は五頭龍だったんだと思う。祖母は天女の生まれ変わりだ。俺は祖母の血を強く引いた。だからきっと、天女の生まれ変わりに選ばれたんだと思う。俺は、天女の生まれ変わりだから、祖父の生まれ変わりである五頭龍を沈めなきゃいけないんだ」
「まるで人身御供みたいねぇ、うふふっ」
 伶子先生が頬に手を当てて笑う。人身御供か。本当に岩屋はそうなってしまうのか? 最初の頃は岩屋があまり好きではなかった。でも、今は頼りになる大人だ。
「俺は話した。浜津、お前が最後だぞ」
 顔を少し赤らめて、そっぽを向きながら浜津に話を振る岩屋。こうなってしまったら、浜津も話さないといけない。ゆっくりと口を開く浜津。
「ボクも岩屋先生に似てるかもしれない」
「え?」
 全員が口をそろえる。
「ボクの場合はオトちゃんだよ。オトちゃんも何かあると江島神社に拝みに行ってて。ここに来ると、力を分けてもらえる気がするって言ってね。でも、オトちゃんの場合は岩屋先生と違うんだ。オトちゃんがお参りすると、必ず成功する。オトちゃんはずっと、弁財天様の虜だよ」
「気になるわね、なんだか」
「どーいうこと? レイちゃん」
「俐駆瑛くん、毎年私が長谷寺にお参りするの、なんでかわかる?」
「……特に考えたことはなかったけど」
「『呼ばれてる』気がしたのよ。みんなはそんなこと、ない?」
「そーいやオレも……」
「隼真は俺と一緒に江島神社にお参りしてたじゃん」
「お前とは別に、浄智寺に家族でお参りに行ってたんだ」
「で、でも俺は他のお寺とか神社には行ってない……」
「……お前の趣味は釣りだろう。恵比寿天は漁業の神だ」
 岩屋が言い切る。
「八幡は毘沙門天だったな。鎌倉七福神の毘沙門天は陰陽混じっている。お前もそうだろう? グレてるくせに、好きな相手にはとことん尽くす。陰陽だな。浜津の二面性だって、まさに寿老人と福禄寿だ」
「ちょっと待って、それだと最後の弁財天って……」
 俺はみんなの話をまとめて、頭に手を当てる。音楽の才能があり、琵琶のかわりにギターを弾く彼女の正体は……。
「オトちゃんが、弁財天の生まれ変わり?」
 幼なじみである浜津の言葉が決定打だった。

 数日間、五頭を観察していたが、結局学校では何もアクションを起こさなかった。結局今日のこの日のために、作戦を練っていたってことなのか。五頭は何を考えている? 
ライブハウスに来ていた俺たちは、そんなに混雑してはいないフロアで、ドリンクを飲んでいた。俺たち学生はジュースだけど、岩屋と伶子先生はビールで乾杯している。のんきなものだ。
 あのあと、都さんが弁財天ではないかという話しになって、浜津は口を開いた。
「七福神の力は、『招福』によって目覚めるんですよね?」
 岩屋がそれにうなずくと、浜津は顔を赤らめながら打ち明けた。
「……昔、池で溺れたときに助けてくれたの、オトちゃんなんだ。それで、そのときにどうやら人工呼吸……のまねごと? みたいなことをしたんだって。『寿』って入れ墨みたいなのが現れたの、そのあとなんだ」
 これはどうやら確実だ。弁財天は都音羽。間違いない。
「……いよいよ主役のお出ましだぞ」
 フロアの入ってきたのは、五頭。清潔感がある白いシャツを着て、最前節に陣取る。
「あいつはどうやって攻撃を仕掛けてくるんだろう?」
 俺が不安げに言うと、岩屋が返す。
「わかんねーな。一ノ瀬たちみたいに影を使うか、三ヶ岳みたいに身体を乗っ取るか。それか四ノ宮のように大衆で襲うか……五頭はすべての龍のリーダーだからな。そのすべての方法が使えるのかもしれな」
「だったらこのライブハウス、とんでもないことになるんじゃ……」
 真っ青になる隼真。浜津もだ。
「オトちゃんがせっかくギターボーカルでステージに立つのに! 先に五頭を捕まえておきましょうよ!」
「そうねぇ、私もそれがいいと思うわぁ~。何か起きてからじゃ遅いし」
「ライブハウスから引っ張り出してタコ殴りにすれば、勝てるんじゃない?」
 物騒なことを言い出す八幡先輩だけど、彼の言う通りかもしれない。一応、都さんが弁財天いう体で話をするが、五頭龍としては七福神がそろってはまずい。封印されてしまうからな。だったらここで、まだ弁財天だという自覚がない都さんを襲うしかない。
「仕方ねぇ、こっちから仕掛けるか」
 岩屋の仕切りで、五頭に近づこうとした瞬間、フロアのライトが消される。ステージは煌々としている。たまに舞っているホコリさえ、スターダストに見えてしまうくらい。
 そちらに気を取られていたら、五頭を見失ってしまった。
「先生、五頭は?」
「逃げられたみたいだな」
「あ、オトちゃん!」
 ギターを抱えた都さんと、他の女の子たちが出てくる。ドラムの子が合図をすると、さっそく演奏が始まる。……が、何か変だ。演奏が合っていない。視線で合図し合うバンドメンバーだが、どうも直らない。都さんのギターだけ、走ったり、もたったりしている。歌も、他の楽器の音でかき消される。
 路上で演奏していたとき、彼女は完璧だった。それなのにどうして?
 一曲終わると、メンバーが一度集まる。観客はブーブーと不満げだ。
 話し合いが終わったあと、都さんは焦った顔をしていた。眉間にしわが寄り、明らかに力が入りすぎている。二曲目も最悪だった。もう一度メンバーが集まるのかと思ったら、都さんはそのままステージを降りてしまった。
「オトちゃん……」
 心配そうな浜津だが、今は五頭を探すのが先だ。もしかしたら都さんのいる楽屋に行ったのかもしれない。
「おい、浜津! 楽屋案内しろ! お前だったら知り合いってことで入れるだろ?」
「あ、はい!」
 岩屋先生に言われた浜津は、楽屋の入口に立っていた警備員に自分が知り合いだということを話すと、その場を通してもらった。
「オトちゃんっ!」
 ドアの中から声が聞こえる。
「今回の失敗は、全部お前の責任だ」
「アタシの責任……」
「メンバーの演奏は完璧だった。だけどお前はどうだ? 最悪だっただろう?」
「最悪……だった」
 これはまずいぞ。一種の催眠術だ。急いでドアを開けると、そこにはナイフを持った都さんと、五頭がいた。
「五頭っ! 何をしたっ!」
 浜津が声を荒げるが、五頭はニヤニヤしたままだ。
「残念だったね、七福神と天女さん。彼女はもう決心したよ」
「決心……? 何のだ!」
 浜津の声が反響する。
「『自殺しよう』ってね」
「だ、ダメ! オトちゃんっ!」
 みんなが止めようと、都さんに駆け寄る。が、遅かった。
「う……ぐっ……」
 ナイフを自身の腹の奥まで刺した都さんは、血まみれになり倒れる。
「お、オトちゃんっ!」
「な、なんてこった!」
 隼真も慌てるし、いつもボーッとしている八幡先輩も目をしかめている。素早く動いたのは、伶子先生だった。
「みんな! 止血するから清潔な布を! あとは救急車!」
「俺がかける!」
 スマホを取り出すと、救急車を呼ぶ。その隙に、五頭は楽屋から出て行ってしまう。
「新海、瀧、八幡! お前らは俺と一緒に来い! 五頭を追うぞ!」
「でも、都さんが……」
 俺がつぶやくと、岩屋はきつく言い放った。
「俺たちがいたところで何もできない! だから、この機会に五頭を仕留めるっ!」
 走って楽屋を抜けると、俺らはライブハウスを出た。

「またここかよ……マジかぁ~!」
「はぁ……結構走ったね」
 俺たちが連れてこられたのは、今までほとんどの龍と戦っていた浜辺だった。
 さっそく岩屋以外、各々宝具についている珠に手を触れると、武器が現れる。それを構えると、五頭もゆっくりと自分の珠に手を当てる。
「なに? あれは……龍聖剣!」
五頭の取り出したのは、青く輝く龍の形をした大剣だった。根元には四つの穴が開いている。
「あ、あれと戦うの? 先生!」
「ビビるんじゃねぇ、瀧。こっちだって同じものを出せる」
 岩屋が羽衣を振るい、同じように剣を取り出す。しかし、青く輝いてはいない。
「ちっ、さすがに龍のオーラまでは真似できなかったか」
「ねぇ……さすがに僕らじゃアレには勝てないよ。岩屋先生しか頼れない」
 あっさり降参を認める八幡先輩。だが、その通りだ。俺の釣り竿でも、あんな大剣を絡めとれない気がするし、隼真の爆弾も、あの大剣で防いでしまうかもしれない。八幡先輩の宝棒では細すぎる。
「覚悟しろ、五頭! 龍のオーラがなくても、お前を倒すっ!」
「その前に、俺の仲間を返してくれる?」
 五頭がくいっと人差し指を動かすと、岩屋の胸ポケットから出てきた一から四の龍の珠がふよふよと飛び出てくる。
「あっ!」 
 思わず俺は声を出した。今まで戦って勝ったはずの四人の龍が、再び復活する。
「ったく……五頭、遅ぇよ!」
「だよね。ずっとこんな狭い球に閉じ込められてたんだから。しかも二回も!」
「一ノ瀬、二前。それはお前らが悪いでしょ?」
「そういう三ヶ岳もね」
「四ノ宮も同じだよ」
「はーい、みんなケンカしない!」
 パンパンと、二回手を叩く五頭。やっぱりリーダーなんだ、あいつは。
「久々に『五頭龍』、復活だよ」
「おおっ!」
「待ってたよ、このときを」
「いよいよか」
「これで江ノ島は僕らのモノ、だね」
 一度人間の姿になった龍たちは、また珠に変わり、五頭の持つ大剣の根元に収まる。するとさらに青い光が輝いた。
「……これで江ノ島は俺たち五頭龍のものだ」
「くそっ! まだわからねえぞ!」
 岩屋が大剣を振りかぶり、五頭に斬りかかる。しかし、いともたやすくバリアで跳ね返された。
「うわっ!」
「岩屋先生っ!」
「七福神、お前らにもプレゼントがある。七福神として生を受けたこの世に絶望しろっ!」
 五頭が指を鳴らしたその瞬間、俺の身体は海に沈んだ。何度あがいてもあがいても、浮上することができない。ただ、どんどん底へと落ちていく。息が続かない。このまま死んでしまうのか?
 ちらりと横を見てみると、隣にいた隼真は火あぶりにされていた。あいつの顔は、死んでも忘れられない。苦痛どころじゃない。失神する寸前のところで、何とか意識を保っている状態。
八幡先輩もだ。蟻地獄のようなものに吸い込まれていく。もがいても、穴から這い出ることができずにいる。
俺たち、ここでもう死ぬの? 江ノ島は……あの夢のような素晴らしい島は、なくなってしまうのか?
水の中から江ノ島が揺らいで見える。高校から江ノ電を使わず歩いて帰ったとき、海の先に見えたあの江ノ島。あの景色は、本当の幻影になってしまうのだろうか。――そんなことは許せない。許せないけど……もう息が……。
そのときだった。ギターの激しい音が鳴り響く。頭の中で何度も流れるそのフレーズは、神に祝福された曲だ。その曲に、水がかき消される。火が消える。蟻地獄がなくなる。
「アンタたち、アタシがいないとどうやらダメみたいだね!」
「都……さん?」
 俺たちは彼女に救われたんだ。彼女のギターの音で。
彼女の隣には浜津と伶子先生もいる。
「都さん、無事だったのか?」
 隼真が浜津に飛びつくと、浜津は少し恥ずかしそうな顔をした。
「えっと……その、前に聞いた『招福』をしたんだ」
 招福って……都さんと浜津がキスしたってこと? 俺たちの顔が赤くなる。
「だ、だけど仕方なくだよ! オトちゃんはどうやら、身体じゃなくて精神をのっとられていたみたいだったから。そしたらお腹の部分に『弁』の文字が出た」
「で、でも、伶子センセがやればよかったじゃないですか!」
 多分浜津も童貞だとは思うんだけど、ことさら童貞をこじらせている隼真が、文句を垂れる。
「ん~……やっぱりお姫様には王子様のキスのほうがロマンチックよ」
 そういう問題でもないんだけどな。でも、これで七福神は全員そろった。ガツ! ガツ! と剣を交わらせていた岩屋も、一旦五頭から離れる。
「どうする? こっちも全員そろったぞ」
「まだわからないよ? 俺がどうやって戦っているか、わかってないでしょ?」
 もう一度、五頭が指を鳴らす。悪夢の再来だ。
 今度は俺たちだけじゃない。浜津と伶子先生もだ。
 浜津は身体にスポットライトを当てられて、丸焦げにされそうだし、伶子先生はなんとか
応戦しているけど、男たちに服を奪われようとしている。
「わかってないのはどっちだろうね!」
 もう一度、弁財天の生まれ変わりとして覚醒した都さんが、ギターを激しく鳴らす。またその音で、俺たちは助かる。一体どうなってるんだ?
「そうか、五頭の最大の力……ふふっ、そういうことなら、俺たちにも勝ち目がある!」
「なんだと? ふん、そんな戯言を! 何度でも同じ術にかけてやるっ! 弁財天! 今度はお前もだ!」
 五頭が手を上にあげて、指を鳴らそうとした瞬間、岩屋は大剣を羽衣に戻した。
「みんな! この下にもぐれっ!」
「え?」
「早くっ!」
 岩屋の言う通りに、全員大きくなった羽衣の下にもぐる。パチン。五頭の力は作動した。しかし、俺たちの身には先ほどのようなことは起きない。
「ふふん、あいつ自分に技がかかったみたいだね。岩屋サン……って言ったっけ? この布は一体なんなの?」
「天女の宝具である羽衣だ。ある時は敵と同じ武器に変えることができるが……本当の使用用途は『バリアと反射』だ」
「そしてアタシの力は、多分『幻覚を解く力』。つまり、五頭龍ってヤツの力は、『幻覚』。みんなにかかっていたものを解くのが、アタシの力ってわけよ!」
 バッ! っと羽衣の下から出てきた俺たちは、五頭龍を見つめる。
「うっ……ぐ……あっ……」
「だいぶ弱ってるみたいだけど、岩屋先生、俺たちはどうやって五頭龍を封印すればいいの?」
「それは、全員の宝具をまとめて、岩屋洞窟に奉納するんだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 奉納ってことは……」
「僕らの大事にしているものを捨てろってこと?」
「それは困ったわねぇ……」
「ボクも……」
「このリュック、一点ものなんだぞ!」
「アタシからギターを取らないでよっ! これ、初めて買ったやつなんだよ?」
「でも、それ以外に手は……」
 珍しく岩屋が全員から責められて、困った顔を浮かべる。
「五頭龍は一匹ずつ名前があり、肉体を持っているやつもいるが、珠である限り、何度でも復活できる。だから俺たちが殺しても意味が……」
「うううっ……」
「岩屋先生っ! 後ろから五頭龍がっ!」
 一度倒れた五頭龍だったが、頭を押さえながら起き上がる。ふらふらしながら岩屋に近づくと、ガシッと彼の身体を抱きしめる。今度は何をする気だ? もしかして、天女である岩屋を人質にするんじゃ……。
「なんて美しい人だっ!」
「……え?」

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