かなり怒っている

文字数 1,113文字

 いつもの公園のいつもの時計塔の横。

 待ち合わせ相手は、当然の様にそこに立っていました。

 スマホの電源を入れ忘れ、1時間以上遅刻。

 後ろめたい私は、後ろから回り込みます。

「お、お待たせぇ…」

 覚悟を決めた一言に、宏和は反応しました。

「岡田琴音さん」

 フルネームで呼ばれ、私の頭に中で アラームが鳴り響きます。

 宏和は かなり怒っている様です。

 何とか誤魔化せないかと、私は茶化します。

「ヒ、ヒロの怒った顔が見たかったから、遅れて来ちゃった♡」

「…満足した?」

 笑ってない目で、口を緩める宏和。

 茶化せないと悟った私は、本当の理由を白状します。

「ふ、服に悩んでたら…家を出るのが遅れちゃってぇ」

「…何で、前の日に準備しておかないの?」

「昨日の夜に、き、決めてはいたんだよ。」

 私に突然、スイッチが入りました。

「でも、実際に着て、鏡で確認したら…何か違って!」

 状況も忘れて、何故か始める自己主張。

「デートで、ヒロに可愛い私を見てもらおうと、頑張ったんだよ!?

 熱くなった私の目を、宏和が覗き込みます。

「琴ちゃん…」

「何!?

「真っ先に…僕に言わないといけない事が、あると思うんだけど」

 一気にクールダウンする私。

 唇を噛み締めながら、声を絞り出します。

「─ ち、遅刻して…ごめんなさい」

「はい、良く言えました。」

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「ほ・め・て!」

 ほとぼりが冷めたと判断した私は、頑張ったコーデを見せびらかしました。

 ボソッと、宏和が呟きます。

「…烏、みたい」

「え、ゴスロリの何処が?!

「色が濡羽色?」

「それって…髪の毛を褒める時に使うんじゃないの!?

 食って掛かろうとして、私は動作を止めました。

「しきりに頬を掻いているって事は…何か気になる事があるんだよね?」

 指摘されて初めて、宏和は自分の癖の発動に気が付いた様です。

「ヒロ?」

「スカート…」

「え?」

「─ ちょっと短すぎないかな」

 殊更 不機嫌そうに呟いた宏和に、私は余裕の笑みを返します。

「これは…ヒロと一緒の時しか着ないから、安心して♡」

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「そろそろ、公園を出ようか」

 ベンチから腰を上げた宏和に、隣に座っていた私は、腕を伸ばしました。

 宏和が、笑いを噛み殺します。

「繋ぐ?」

 唇を尖らせた私の手を、宏和はしっかりと握ってくれました。

 私は満足して、ベンチから立ち上がります。

「手を繋がないデートなんか、ありえないんだからね♡」
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