実地演習
文字数 1,516文字
――輸送車内――
カイゼルとヴェルスの座る横には剣。
レファの後ろには弓。
シャロアとレファの足元にあるスペースには槍が置かれている。
車内の空気は重い。
シャロアとレファはこれから始まる事を想像し、僅かに体を震わせている。
外からは時折、微かに害物の声が聞こえてくる。
ギェェェェ!!
それほど遠くない距離から聞こえた害物の声に、シャロアとレファは思わず不安になる。
この車両は害物を寄せ付けないように出来ている。過剰に刺激を与えなければ襲われる事は無い
ヴェルスの肩を組んでカイゼルが賛同する。
シャロアの慌てる姿に思わず3人の頬が緩んだ。
楽しそうに話している所悪いが、目的地に着くぞ、準備をしておけ
* * *
――旧市街――
建物のあちこちに害物の被害の跡が残る街。舗装されていたはずの道は地形ごと変化している。
かつて栄えていた商業地に、人の気配は感じられない。
では、これからお前達4人には演習を行ってもらうが……まずは、これを渡しておく
フォルクは4人に通信機を渡す。
作戦中、遠くの仲間との連絡がとれる物だ。1人に向けて話すか、距離の近い者全員に話すかは端末で変える事が出来る
フォルクは通信機を4人に渡しながら説明をした。
話を聞き、4人も通信機を左耳に着ける。
そのような報告は一度も無いと聞く。どういう仕組みかは知らないが、安心していいだろう
そして、もう1つ。これの扱いには気を付けろ
フォルクがコートの懐から取り出したのは小さな手榴弾。
それを4人に1つずつ渡していく。
分かっている者もいると思うが、グレネードだ
使い方としては利き手でレバーを抑え、もう片方の手でピンを抜き、投げるだけだ。どのような状況で使うかは個人の判断に任せる
間違えても事故だけは起こすな。ピンを抜いてから5秒程で爆発するようになっているが、それ1つだけでも弱い害物なら瀕死にまで追い込める威力はある
理解が早くて助かる。では、進むぞ
4人はコートの懐に手榴弾をしまい、フォルクを先頭に街の中へと進んで行った。