実地演習

文字数 1,516文字

――輸送車内――
カイゼルとヴェルスの座る横には剣。

レファの後ろには弓。

シャロアとレファの足元にあるスペースには槍が置かれている。

車内の空気は重い。

シャロアとレファはこれから始まる事を想像し、僅かに体を震わせている。

おいおい、そんな暗くなっててどうするんだよ。ただの演習だろ?
そうですけど、やっぱり怖いですよ……
ちゃんと、戦えるのかな……
はぁ……もう、支部に帰りたいです……
…………
外からは時折、微かに害物の声が聞こえてくる。

ギェェェェ!!
…………?!
ヒッ……!?大丈夫ですよね……?こんな所で襲われたりしませんよね……?
それほど遠くない距離から聞こえた害物の声に、シャロアとレファは思わず不安になる。
この車両は害物を寄せ付けないように出来ている。過剰に刺激を与えなければ襲われる事は無い
だってさ
それなら、ちょっと安心しました……
うん……ちょっとだけね……
2人は随分と平気そうですね……。怖くないんですか?
まぁ、怖くないのかって言われたら……怖いけどさ……いつまでもビビっていられないからな
俺達には奴らと戦える力がある……だから、怯えなくてもいい……と思う……
そうそう、もしやばくなったら逃げれば良い!
ヴェルスの肩を組んでカイゼルが賛同する。
逃げればいいって、無責任過ぎませんか……?
死ぬよりはマシだろ?
それはそうですけど……
もう!悩んでるのがバカみたいじゃないですか!
あぁそうだな、むしろ自信を持とうぜ。奇跡のような確率で生き残って俺達はルブルムにもなったんだ。これからも何とかなるって思わないか?
うん……そう思うよ
そうですよね……。私達、ルブルムなんですよね……!私達が頑張らないとですもんね!
そういえば、ルブルムは……アレクトの希望だと言っていたな……
へぇ、じゃあシャロアだけアレクトの絶望って事にならないと良いけどな?
絶望って?!良い事言っておいて酷いですよぉー!
シャロアの慌てる姿に思わず3人の頬が緩んだ。
楽しそうに話している所悪いが、目的地に着くぞ、準備をしておけ
よし……まずは演習だな……
うん……
頑張りましょう……!
あぁ……
*  *  *

――旧市街――

建物のあちこちに害物の被害の跡が残る街。

舗装されていたはずの道は地形ごと変化している。

かつて栄えていた商業地に、人の気配は感じられない。

では、これからお前達4人には演習を行ってもらうが……まずは、これを渡しておく
フォルクは4人に通信機を渡す。
うわ、ちっさ……
作戦中、遠くの仲間との連絡がとれる物だ。1人に向けて話すか、距離の近い者全員に話すかは端末で変える事が出来る
フォルクは通信機を4人に渡しながら説明をした。

話を聞き、4人も通信機を左耳に着ける。

何か、いつの間にか取れたりしそうな気が……
そのような報告は一度も無いと聞く。どういう仕組みかは知らないが、安心していいだろう
イヤホンか耳栓のメーカーなら世界取れてるんじゃないですかね……
そして、もう1つ。これの扱いには気を付けろ
フォルクがコートの懐から取り出したのは小さな手榴弾。

それを4人に1つずつ渡していく。

……これって……
分かっている者もいると思うが、グレネードだ
………いよいよ戦闘って感じになってきたな……
使い方としては利き手でレバーを抑え、もう片方の手でピンを抜き、投げるだけだ。どのような状況で使うかは個人の判断に任せる
間違えても事故だけは起こすな。ピンを抜いてから5秒程で爆発するようになっているが、それ1つだけでも弱い害物なら瀕死にまで追い込める威力はある
当たったら洒落にならない威力って訳か……
理解が早くて助かる。では、進むぞ
4人はコートの懐に手榴弾をしまい、フォルクを先頭に街の中へと進んで行った。
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