まだら白キノコのありか
文字数 2,493文字
まさかそんなところにあるとは思わなかった。
オウカは目からうろこが落ちる思いで、サスケとマユを連れて、キザンの館の裏に向かう。
「まさか。あの木は一番にみんなが探したっす」
「でもサユリちゃんは見たって」
キザンの館の裏に生えているご神木になっている老木。
そこにまだら白キノコがあるとサユリは言った。
「とにかく、見たというなら、あるかもしれない。行ってみよう」
館の裏は、影になっていて、キノコが生えやすそうな環境になっている。
オウカ達はご神木に近づく。そして、また木に手をあててみた。
「この木の精霊よ、いるならば返事をして」
オウカがそう問うと、かすかな声がオウカの耳に聞こえてきた。
「わたしがこの木の精霊です。眠っていたのだけど、何か?」
「起こしてしまって悪かったわ。私はオウカという精霊です」
「……あなたも大きな木の精霊なのね」
ご神木の精霊は、オウカの元体がなにかがすぐに分かったようだった。
「ええ。あなたにお聞きしたいことがあるのです」
「なに?」
「この木にキノコはなっていますか?」
「ええ、たくさんなっていたわ」
なっていた……過去形だった。
「今はもうないんでしょうか」
オウカが聞くと、ご神木の精は一呼吸おいた。
「まだ菌糸が残っているから、また生えてきている。この木の根元のうろの中にある。もともとそこに沢山あったの。でも、誰かがとって行ってしまったから、今はもうあまりないの」
キザンの里の人々がみつけて取っていったのだろうか。
しかし、そうならばオウカのところに報告がきていてもおかしくない。
不審に思いながらもオウカはこの木の根元にあるといううろをさがした。
「サスケ、マユ、この木のうろにまだら白キノコがあるって、この木の精霊が行ってるわ」
「この木の精霊っすか! 山の神っすね!」
「すごい! オウカ話をしたの!?」
二人に詰め寄られて、オウカは手を握られる。
この木はご神木。そして、毎朝キザンの里のものたちは、山の神に祈りを捧げる。
木には神が宿っていると考えているのだろう。
「え、ええ」
二人の勢いに圧倒される。じゃっかんひるむけれど、気を取り直した。
「うろの中ににたくさんあったって。どこにうろがあるのか、探しましょう」
三人で大木の根本のまわりをみて探すと、下に向かって大きなうろがあった。
そこを覗くと、青いまだらの小さな白いキノコが、青い光を放って密集していた。
「……あった」
これが、まだら白キノコ……。一見毒キノコに見える。
これが薬になるのだろうか。
不安に思うが、オウカはそれを丁寧に根元から手をのばして採取していく。
うろはおおきかったので、そこに生えているキノコもたくさんあった。
「サスケ、マユ。たくさん取れたわ」
それを手にもち、二人に見せる。
「うわ、毒キノコっぽいっすね」
サスケは眉をひそめた。
マユも微妙なかおつきになる。
「伝承によると、これがソウテン湖の毒消しの材料になっているの。でも私も毒キノコみたいって思ったわ」
苦笑してそれを採取用の袋へつめる。
「まだら白キノコも見つかったから、すぐにこれをサイハナの森へと持っていくわ。シロガネさまに挨拶をしてから、私はサイハナの森へ帰って毒消しを作ります」
「おう。よろしく頼むっす」
「お願いします」
サスケとマユにそう言われ、まだら白キノコを採取したことを報告しに、三人でシロガネに逢いにキザンの館へと戻った。
キザンの館に入る門で、またオウカはカグラとサユリと出会った。
が、カグラは後ろを向いて咳き込んでいるところだった。その姿を心配そうにサユリが眉を寄せて眺めている。
「カグラ、風邪でもひいたの? 大丈夫ですか?」
オウカが問うと、カグラは持っていた手ぬぐいで口元をふいた。顔色が悪いので、カグラもソウテン湖の毒にあたったのだろうかとオウカは思った。最近ソウテン湖へと行ったと言っていたから。
「カグラ、ソウテン湖の毒にあたったの?」
びくっと身体を震わせて、カグラが振り向く。
そして、おずおずとした様子でオウカを見た。
「いや。毒にはあたってない。風邪かな」
「そう。身体に気を付けてね。サユリちゃんもいることだし」
「ああ、ありがとう、オウカ」
くぐもった咳がまだ続いていたが、オウカはシロガネにまだら白キノコのことを報告するために、館へと入って行った。
サスケを先頭に、奥の間へとつづく廊下を歩いて、部屋の障子をあける。
すると、シロガネがいつもの場所で脇息にもたれながら、水をのんでくつろいでいた。ちょうど休憩中だったらしい。休憩していても彼女の眼光は鋭くて、オウカはすこしのまれてしまう。
今日の成果をシロガネに報告するべく、まだら白キノコを差し出し、彼女に見せた。
「シロガネさま、まだら白キノコ、見つかりました」
「……ああ、これがそうか。……毒キノコのようだな」
シロガネも苦笑してオウカの手の中のものをみた。
「私もそう思いました。でも、これがソウテン湖をけがす毒の毒消しになると思います」
「ああ」
「私はこれを、今日のうちにサイハナ城へもっていって毒消し薬にしてもらいます。なので、今日でおいとましなければなりません。色々ありがとうございました」
深く頭を下げて、シロガネへと挨拶をする。
「こちらそこ、毒消し薬をよろしく頼む。いまのところ、それが希望の光だからな」
シロガネはにこりと笑う。
「では、私はこれで」
「オウカ、頼みがある。ソウテン湖の毒が消えたら、毒にあたったキザンの病人たちのために、ここにも毒消しがほしい」
「はい。もちろんです」
オウカはまた頭を下げると、シロガネの部屋を辞した。
そして、キザンの館を出たところで、サスケとマユと別れの挨拶を二言三言はなした。
数日の短い間だったけれど、オウカはサスケもマユも好きになった。
さきほど話をしたカグラも探したけれど、門に見当たらなかったので、挨拶はできなかった。
そして、サイハナの森へと帰って、シュレイユやディーヤたちに毒消し薬をつくってもらうために、羽を広げた。
サイハナ城へと帰るのだ――
オウカは目からうろこが落ちる思いで、サスケとマユを連れて、キザンの館の裏に向かう。
「まさか。あの木は一番にみんなが探したっす」
「でもサユリちゃんは見たって」
キザンの館の裏に生えているご神木になっている老木。
そこにまだら白キノコがあるとサユリは言った。
「とにかく、見たというなら、あるかもしれない。行ってみよう」
館の裏は、影になっていて、キノコが生えやすそうな環境になっている。
オウカ達はご神木に近づく。そして、また木に手をあててみた。
「この木の精霊よ、いるならば返事をして」
オウカがそう問うと、かすかな声がオウカの耳に聞こえてきた。
「わたしがこの木の精霊です。眠っていたのだけど、何か?」
「起こしてしまって悪かったわ。私はオウカという精霊です」
「……あなたも大きな木の精霊なのね」
ご神木の精霊は、オウカの元体がなにかがすぐに分かったようだった。
「ええ。あなたにお聞きしたいことがあるのです」
「なに?」
「この木にキノコはなっていますか?」
「ええ、たくさんなっていたわ」
なっていた……過去形だった。
「今はもうないんでしょうか」
オウカが聞くと、ご神木の精は一呼吸おいた。
「まだ菌糸が残っているから、また生えてきている。この木の根元のうろの中にある。もともとそこに沢山あったの。でも、誰かがとって行ってしまったから、今はもうあまりないの」
キザンの里の人々がみつけて取っていったのだろうか。
しかし、そうならばオウカのところに報告がきていてもおかしくない。
不審に思いながらもオウカはこの木の根元にあるといううろをさがした。
「サスケ、マユ、この木のうろにまだら白キノコがあるって、この木の精霊が行ってるわ」
「この木の精霊っすか! 山の神っすね!」
「すごい! オウカ話をしたの!?」
二人に詰め寄られて、オウカは手を握られる。
この木はご神木。そして、毎朝キザンの里のものたちは、山の神に祈りを捧げる。
木には神が宿っていると考えているのだろう。
「え、ええ」
二人の勢いに圧倒される。じゃっかんひるむけれど、気を取り直した。
「うろの中ににたくさんあったって。どこにうろがあるのか、探しましょう」
三人で大木の根本のまわりをみて探すと、下に向かって大きなうろがあった。
そこを覗くと、青いまだらの小さな白いキノコが、青い光を放って密集していた。
「……あった」
これが、まだら白キノコ……。一見毒キノコに見える。
これが薬になるのだろうか。
不安に思うが、オウカはそれを丁寧に根元から手をのばして採取していく。
うろはおおきかったので、そこに生えているキノコもたくさんあった。
「サスケ、マユ。たくさん取れたわ」
それを手にもち、二人に見せる。
「うわ、毒キノコっぽいっすね」
サスケは眉をひそめた。
マユも微妙なかおつきになる。
「伝承によると、これがソウテン湖の毒消しの材料になっているの。でも私も毒キノコみたいって思ったわ」
苦笑してそれを採取用の袋へつめる。
「まだら白キノコも見つかったから、すぐにこれをサイハナの森へと持っていくわ。シロガネさまに挨拶をしてから、私はサイハナの森へ帰って毒消しを作ります」
「おう。よろしく頼むっす」
「お願いします」
サスケとマユにそう言われ、まだら白キノコを採取したことを報告しに、三人でシロガネに逢いにキザンの館へと戻った。
キザンの館に入る門で、またオウカはカグラとサユリと出会った。
が、カグラは後ろを向いて咳き込んでいるところだった。その姿を心配そうにサユリが眉を寄せて眺めている。
「カグラ、風邪でもひいたの? 大丈夫ですか?」
オウカが問うと、カグラは持っていた手ぬぐいで口元をふいた。顔色が悪いので、カグラもソウテン湖の毒にあたったのだろうかとオウカは思った。最近ソウテン湖へと行ったと言っていたから。
「カグラ、ソウテン湖の毒にあたったの?」
びくっと身体を震わせて、カグラが振り向く。
そして、おずおずとした様子でオウカを見た。
「いや。毒にはあたってない。風邪かな」
「そう。身体に気を付けてね。サユリちゃんもいることだし」
「ああ、ありがとう、オウカ」
くぐもった咳がまだ続いていたが、オウカはシロガネにまだら白キノコのことを報告するために、館へと入って行った。
サスケを先頭に、奥の間へとつづく廊下を歩いて、部屋の障子をあける。
すると、シロガネがいつもの場所で脇息にもたれながら、水をのんでくつろいでいた。ちょうど休憩中だったらしい。休憩していても彼女の眼光は鋭くて、オウカはすこしのまれてしまう。
今日の成果をシロガネに報告するべく、まだら白キノコを差し出し、彼女に見せた。
「シロガネさま、まだら白キノコ、見つかりました」
「……ああ、これがそうか。……毒キノコのようだな」
シロガネも苦笑してオウカの手の中のものをみた。
「私もそう思いました。でも、これがソウテン湖をけがす毒の毒消しになると思います」
「ああ」
「私はこれを、今日のうちにサイハナ城へもっていって毒消し薬にしてもらいます。なので、今日でおいとましなければなりません。色々ありがとうございました」
深く頭を下げて、シロガネへと挨拶をする。
「こちらそこ、毒消し薬をよろしく頼む。いまのところ、それが希望の光だからな」
シロガネはにこりと笑う。
「では、私はこれで」
「オウカ、頼みがある。ソウテン湖の毒が消えたら、毒にあたったキザンの病人たちのために、ここにも毒消しがほしい」
「はい。もちろんです」
オウカはまた頭を下げると、シロガネの部屋を辞した。
そして、キザンの館を出たところで、サスケとマユと別れの挨拶を二言三言はなした。
数日の短い間だったけれど、オウカはサスケもマユも好きになった。
さきほど話をしたカグラも探したけれど、門に見当たらなかったので、挨拶はできなかった。
そして、サイハナの森へと帰って、シュレイユやディーヤたちに毒消し薬をつくってもらうために、羽を広げた。
サイハナ城へと帰るのだ――