滝口流

文字数 2,580文字

こちらにて滝口さんが執筆をされます。
他の方は書き込みをお控え下さい。
夜空の星が静寂を彩る丑三つ時。
    うえの
月も眠る飢野動物園に一つの人影があった。

takigutir

いやそれは人影と言えるのか。
丸い球体に何本もの職種を生やした存在。
その影は何かを探すように園内を練り歩く。

takigutir

出てこい!
命よりも大事な俺のスーパーの半額シールをどこにやった!
彼の渋い低音が園内に響き渡る。
その声に呼応するように、噴水の影から一人の少女が姿を表した。

takigutir

来たわね。バリアーマン……!
ほう……アメリカの犬にしてはなかなか骨があるやつだ。
正々堂々と出てくるとは、その姿勢は嫌いじゃない。
さあ、俺のスーパーの半額シールはどこに隠した。
あれがないと俺は明日からどうやってスーパーで買い物していいのか全然わからない。
今頃スーパーの半額シールはぬっくぬくよ……。
カンガルーの袋の中でね!
貴様……!
そんなことして獣臭くなったらどうする……!
余程死にたいらしいな……!
覚悟の上……!
この命をかけて、ここであなたを討つ!
すずめは右手を突き出し、戦闘態勢へ移行した!

takigutir

虎よ虎よ! トラ・トラ・トラ!
その復讐は人類への牙! 切り裂け!
ワイルドハンズ!
少女の右腕から黄色と黒の縞模様の体毛が生え出しその爪は大きく変容する。
肉球が生じたその手は、まるで虎の手のようだった。

takigutir

がるぅー!
掛け声と共に少女は地を蹴る。
普通の人間とさほどかわらない速さで少女の爪が相手に迫った!

takigutir

……甘いなぁ。たべっこ動物よりも甘い……。
その爪が襲いかかる直前に、彼はその腕のうちの一本を突き出し振り下ろす!

takigutir

……『無敵バリアー』……!
彼の言葉と共に少女の腕は空中に静止した。
それに驚き少女は目を見開く。

takigutir

俺がただの防御能力者だとでも思ったのか?
甘い、甘すぎるぞ! コアラのマーチすら塩辛く感じる程に甘いっ!
この能力は相手の攻撃を静止させる……!
すなわち! こんなこともできるのだ!
空中に固定されたままの少女をバリアーマンの腕が薙ぎ払う!
少女はその固定を解除されて大きく後ろへと吹き飛んだ。

takigutir

ぐっ……!
倒れる少女にバリアーマンは近付きその腕を踏みつける。

takigutir

俺は正義の味方でアメリカの敵だ。
貴様がカンガルーの居所を吐くのであれば、苦しまずに殺してやろう。
さあ、言え……!
ああぐぅっ!
ギリギリと踏みにじるその痛みに、少女はたまらず声を漏らす。

takigutir

大方動物保護団体に頼まれたのだろう……。
だがアメリカには滅んでもらわなければならない……。動物もろともな!
貴様のようなアメリカの犬如きに、俺の崇高な理念は理解できまい!
アメリカの……犬……。
少女は小さく呟く。

takigutir

そうね……犬だわ……。
知ってる? 犬というのは……群れをなす狼の子孫……。
彼らは仲間の為なら……その命すら投げ出し戦う……!
……?
お前……何をっ……!
バリアーマンが気づいた時、彼女の右腕には白狼の頭が存在していた!

takigutir

                    フェンリル・ヴァイト     
ワイルドハンズ! 狼の牙!   
彼女の右腕が螺旋を描くようにバリアーマンに襲いかかる!
その牙はその腕のうちの一本を噛み砕き、引きちぎった。

takigutir

ぐぬぅぁっ!
貴様っ!
その場を跳躍し、バリアーマンは後ろへと下がる。
しかしその隙に少女は右腕を前に出した。

takigutir

あなたがバリアで私を捕まえるというなら……その上から更に殴り飛ばす!
古来より猫は尻尾が増えると魔力を増やすとされてきた。
猫の手も借りたい……つまりそれは!
手が複数本存在してもおかしくないということ!!
ワイルドハンズ! 猫又ナインテイル!
彼女の右腕が猫の手になったかと思うと、その肘から先が九つに分身する!

takigutir

にゃー!
掛け声一閃、その腕が9つの軌道を描いてバリアーマンに襲いかかった!

takigutir

……発想は及第点。
……だが俺には通らん!

無敵バリアー! ミラープリズム!
バリアーマンが二本の腕を交差させると、目の前の空間に歪みが生じた。
猫又の九本腕がバリアーマンの体に触れた瞬間、全く同じ腕がそこから同じ軌跡で繰り出される!

takigutir

九本の腕が少女を襲う。
少女はその腕に対抗して咄嗟に身をひねるが、二本の腕が彼女を殴りつけた。

takigutir

どうだ。貴様の力では俺には届かん。
大人しく諦めて半額シールを返すがいい!!
くっ……! 例え……届かなくても……!
わたしはあきらめない!
スーパーのお惣菜コーナーにいるおばちゃんの為にも!
ならば死ね!
バリアーマンは声と共に無数の腕で空を切る。
それと共に、彼は地を蹴った。
その勢いは彼を地面から引き剥がし、重ねて空中を蹴る。

takigutir

無敵バリアー……空間バリア!
一瞬の”重力”の無効化を繰り返し、彼は飛翔した。

takigutir

ハッハッハ!
この無敵の反射バリアで押しつぶしてやろう!
ランドセルの中に押し込められたパンのように、反射された地球の重力によって圧縮されるがいい!
燕よ燕! おやゆび姫を運ぶ渡り鳥……!
無敵バリアー……ブラックホール・バリアー!
バリアーマンが二本の触手で空を切る。
半径10mを飲み込むであろう時空の歪みがそこに生じた。

takigutir

ワイルドハンズ……!
少女の右腕が燕そのものへと変化する!
翼を広げ、彼女を概念的に飛翔させた!

takigutir

彼女は、真っ直ぐにその身をバリアーマンへ滑空させる。

takigutir

何っ!?
燕返しっ!
掛け声と共に、バリアの正面まで迫っていた彼女の身体は直角に飛んだ。
重力反射の力を横に受け、鋭い勢いでバリアを迂回する。

takigutir

二段階右折だとーーーー!?
少女は空、彼の後ろへと回り込み、その右腕を突き出した。

takigutir

蛇は……古来より暗殺に使われてきた。

ワイルドハンズ……ポイズンヴァイト!

無敵バリアー!!
直前にてバリアーマンの一本の触手が空を切る。
彼のバリアーは寸でのところでその腕を止めた。
――しかし。

takigutir

はあああああーーっ!
彼女は毒蛇となったその右腕を切り捨てた。
バリアの範囲内に侵入していたその頭部は、目標に向かい首だけで絡みつく。

takigutir

――――!
彼が声一つあげる暇もなく、毒蛇はその鼻を噛み砕いた。

takigutir

バリアーマンがその場に倒れる。

takigutir

これでアメリカに核を撃たせ、それを反射するというあなたの野望は……叶わない……。
バリアーマンは答えない。
既に絶命していた。
少女は出血からその場に倒れる。

takigutir

どこからか、一匹の象がやってきて彼女をその背中に載せた。

takigutir

パオオオオーーーーーーーーーーーン!
23時30分!
ここまで!
どこか物悲しいその声が、夜の動物園に響き渡った――。

takigutir

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登場人物紹介

名前:バリアーマン
性別:男

能力名:『無敵バリアー』
特殊能力:自分の体の近くに無敵のバリアーを張れる能力。
両手を胸の前で交差させることで、あらゆる衝撃・悪影響を反射するバリアを、
片手だけで同じ動きをすることで、あらゆる衝撃・悪影響を停止させるバリアを貼ることができる。
短時間ならば動作から遅延させてのバリアー設置も可能。
バリアは一度にそんな沢山は張れず、力を使うとそのうち消える。


設定:新宿街に住み着く年若き魔人。
バリアーを張れば無敵だという事を証明するため、多くの魔人と戦いを重ねる。
根は善人であり、自らが悪と定めた魔人のみを襲うぞ。
アメリカが嫌いで、いつか核攻撃をバリアーで反射したいと思っている。

相手を倒したい動機:スーパーの半額シールをちょろまかした相手へ制裁を行うため。

名前:サバンナ すずめ
性別:
特殊能力:ワイルドハンズ
動物の特徴を説明する事で、自身の右腕の肘から先をその動物に変化させる能力。
(例:「チーターは瞬間的に時速70kmで走る事ができる」→右腕がチーターに)

設定:
幼い頃、動物園に置き去りにされ動物たちに育てられた野生児。
人語は理解するが動物達が大好きで人間は好きではない。
動物守護兵団(アニマルガーディアンズ)に所属しており、動物達を守る為ならば手段を選ばない。

相手を倒したい理由:
動物守護兵団の命令によるもの。
それが動物たちを守る事と信じている。

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