第3話 魔王桜は油を売っている朽木桜斎を急かす

文字数 515文字

「おい、桜斎(おうさい)

「はい? 御方様(おんかたさま)

「ウツロという少年のところへ、行ったのではなかったのか?」

「ああ、はい、これから行くところでございますよ」

「いったい、いつになったら行くのだ?」

「はい、この小説を読み終わりましたら」

「小説だと?」

「ええ、『桜の朽木に虫の這うこと』という作品なのですが、いやあなかなか、面白くて」

「桜斎……」

「はあ、なんでしょう?」

「これでも食らえええええっ!」

「ぎにゃあああああっ!」

 こうしてわたしは御方様から、大目玉を食らったのでした。

 なんだよ、ちょこっと本くらい、読んだっていいでしょ?

 ぷんぷん!

「早く行かんかあああああっ!」

「ばびょおおおおおんっ!」

 みなさん、わたしは負けません。

 いつかあんなバカよりも、絶対、偉くなってやるのです!

 負けてはなりません、負けては……

「だから早く行かんか! いつ行くんだ!? いまだろっ!?」

「わーい! それはちょっと古いなあーっ!」

「とっとと行ってこんかあーっ!」

「はーい! 御方様あーっ!」

「まったく、どうしようもないバカだ。作ったやつの顔が見たいわ」

「てめえだろ……」

「ああん!?」

「行ってきまーす!」

 みなさん、負けません、わたしは負け……

 負けそうです……
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