1.猫と男

文字数 870文字

俺は猫を飼っている。
猫と言っても猫の耳としっぽがあるだけでほとんど人だ。体の構造も歳の数え方も人と変わらない。
あいつは俺のことを「おっさん」と呼ぶが、27歳のはずだ。それを指摘すると痛い目を見ることはもうわかっているから言わないが、俺とそんなに変わらない。
俺の言うことなんて全く聞かない。まぁ、猫なんてそんなものだろ。ただ、俺の煙草を勝手に吸うのはどうにかしてほしい。
とにかくあいつは言動も行動も可愛げがない。拾ったときはもっと可愛かったと思うんだがなぁ。いや、今でも可愛いか。そう思えるのは飼い主だからなのかもしれないが...


「疲れて帰ってきたご主人を癒してあげようとか、そういう殊勝な心がけは無いの?」
「あ?うるせーおっさん」
ほらこれだ。
仕事帰りで疲れたご主人が背中にまとわりついているにもかかわらず、全く振り向かビニール袋の中から買ってきた惣菜を漁っている。
そのご飯買うための金も、俺が頑張って仕事したおかげなんだけどなぁ。もうすこしいたわってくんねぇかなぁ。
なんて思ってる間に猫はもう惣菜のパックを机に広げ、目の前にあったから揚げを摘み上げ口に放り込んでいる。
まぁ、無理か。知ってた。
諦めて猫の背中から離れる
「くわないのか?」
から揚げで口をもごもごさせながら背中からはがれた俺を振り返るり不思議そうに聞く猫
あー。かわいいなクソ
結局ほとんどのことはそれで許してしまう。

ばかだなぁ

知ってたけど。


―――



私は捨て猫
捨てられた黒猫だった
私は男に拾われた
それがこいつだった

これでもこいつには感謝をしている
全くその様を見せたことは無いが
いや、最初のころはもっと素直に伝えたりしていたが、最近は特にしていない
だからこいつは最近「昔はもっと素直でかわいかったのに」ということが多い
大きなお世話だ。お前だって昔のほうがもっと若くてかっこよかったぞ
あの時はすべて同じ琥珀色だった髪も今は白が混じっている
まぁその白髪の量に貢献したのは私かもしれないが
第一私がこうなったのはあいつが遊んでくれなくなったせいだ
だから責任をとって精いっぱい私に振り回されればいい
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