第208話 伊丹城 陥落

文字数 675文字

 霜月十三日、信長、信忠は出馬し、
大和国方面と摂津の伊丹親興(いたみちかおき)の反乱平定にあたった。
 同日夕刻、織田勢が大和を進撃中、
羽柴藤吉郎秀吉も到来した。

 (いにしえ)の都、大和は、
神社仏閣、公卿、大名、国人、土豪の思惑が入り乱れ、
かねてより、難しい土地柄だった。
 
 複雑な大和の支配を誰に任せるか。
 
 かつて、主家である三好家から、
大和の支配を任じられていた時期もある、
戦国有数の策略家 松永久秀。
 興福寺の有力宗徒から戦国大名化し、
大和の国人が従っている筒井家の嫡男 順慶。
 互いに激しく敵対するこの二人を信長は有力視して、
正月には久秀、順慶、共に、岐阜へ召し寄せた。
 
 臣従の証として、
京育ちで非常な目利きであった久秀は、
天下の名器、名刀の数々を信長に差し出し、
順慶は母親を人質として岐阜へ連れてきていた。
 久秀、順慶を、天秤にかける信長も信長なら、
天秤の皿に乗らざる得ない大和の二人もまた狐と狸で、
どちらかがどちらかを食いちぎるまで、
化かし合いは終わらないのだった。

 信長は畿内を訪れたこの機に諸情勢を鑑みつつ、
規約や諸役を定め、
寺社や国人に朱印状の発布を行う必要があり、
大和、伊丹平定後の始末にあたることとした。
 また長島一向一揆制圧戦で長期に渡り尾張美濃を離れ、
しかも今回の出陣で、
岐阜に一月(ひとつき)と居られなかったことから、
信忠に所領の政務を任せ、
先んじて帰還させた。

 十五日、荒木村重は、
信長に反乱した伊丹親興を攻撃。
伊丹城は陥落し、伊丹親興は没した。

 信長が上洛し、
規約や沙汰の発布に忙しくしていた或る日、
伊丹城を落とした荒木村重が信長を訪れ、
戦果を報告した。



 
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