第9話 想定外

文字数 617文字

 まだまだ身体は本調子ではなかった。でも預金通帳がゼロを刻む日がいよいよ迫ってきたので、スーパーマーケットのパートに応募した。持病で精神障害者手帳をもっていると知ると、丁重にお断りをされた。
 マスク不足トイレットペーパー不足は記憶に新しいけれども、そのスーパーで不織布マスク10枚が税別298円で売られており、新型コロナを取り巻く状況も少しずつ変わってきたようだった。いまでは百均で30枚入りがふつうに売られている。
 警備員の仕事もダメ。ハンバーガー屋もノー。高齢者介護施設の厨房での皿洗いのバイトに採用されたが、いじめられる気配が濃厚だったし、責任者に精神疾患への知識は皆無で、1日で辞めた。
「辞めたら喰っていけないだろう」と責任者はいったが、辞めずに無理をしたら再発して、どの道死ぬのかもしれないのである。どうで死ぬならやりたくないことはやらない。
 とはいえコロナが蔓延する世の中において、求人募集をするところは九割九分肉体労働で、そういう場で私のような者が働くのは無茶なのかもしれなかった。
 けれど区の紹介により訪問介護ヘルパーとして雇われることになった。
 そこは高齢者だけではなく障害をもった児童や若者も担当し、私の事情もマイナスに取らなかった、と採用された当時は安易に考えた。
 介護ステーションの責任者が、うつ病と双極性障害と統合失調症の区別がつかないとは、このときには想像も想定もしていなかったのだ。
 しないだろ。ふつう。
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