古い国産車にもいろいろあるぜ
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次のコーナーには、珍しい国産車がいっぱい並んでいた。
ほぼ全部初めて実物を見る車で俺は興奮だぜ!
えーと、シルビアって昔の峠屋がよく乗ってたってあれ?
ああ、それはS13とかS14系でずっと後の車さ。これはさ、日産がロータリーエンジン載せるために開発したけど、エンジンが完成しなくて普通のエンジン載せて作った車さ。シルビアって名前はその後、量産車に受け継がれて、アメリカでヒットするんだけど、日本じゃ評判悪かったんだ。それが、S13で一気に人気が爆発することになるんだ。
ちょっと待ってね、ロータリーエンジンてなんだっけ?
杏奈だって、マツダのRX7やRX8は知ってるだろ? あれに載ってるエンジンだよ。普通のピストンの代わりに。回転式のローターでエンジンを回すんだ。すげえ高出力を少ない排気量で出すんだで、スポーツカーには最適のエンジンさ。
へー、そうなんだ。でも、今全然走ってないぽいけど、なんで?
燃費がとてつもなく悪いのさ。リッター4~5キロしか走らないって話だ。
まじか! 1リッターあれば25キロは走れるいじゃん!
それ、安奈さんのバイクの話な。普通の車は10キロとかそんなもんだ。
車ってそんなにガソリン使うものだったのか、知らなかった。
おお、そう言えばあそこに珍しいロータリー搭載車が!
俺は、美しい流線型の車に引き付けられるように近づいた。
これ国産車? ものすごくエキセントリックな形してるけど。
マツダのコスモだよ! これ本当に名車でさ、その昔ウルトラマンだったかな、そこの怪獣退治の部隊の車に使われてたんだぜ。
え? だって、怪獣退治だから、自衛隊で使ってたんじゃないの?
世の中に、怪獣がいるって思ってるのですか杏奈さん!
い、いないの? 映画に出てくるから居ると思ってた…
本気で言葉が出ません。
この場合はどうすればいいのでしょう?
…話誤魔化したな。まあ、確かに人気あるから、オークションじゃトヨタ2000GTの次くらいに高い値段がつくらしいぜ。軽く1000万超えるらしい。
うっひょー、高級車じゃん。ちなみに2000GTっていくらするの?
そこで、安奈さん、俺様の肩を掴んで、うるんだ瞳でこう言った。
なんで、ウルウルされながら言われなきゃいけないんだあ!
大丈夫、あたしはコスモや2000GT乗りたいなんて言わないからね。うんうん。
なんかよくわからないが、安奈さんは何度も何度もうなずいていた。
何が言いたかったのだろう?
よくわからん。
ヨタハチで思い出した、あそこに当時のヨタハチのライバルがいるぜ。
ホンダのS800さ。最初はS600だったのが、エンジンを大きくしたスポーツ車さ。
なるほど同じ大きさのエンジンだもんね、ライバルだね。でも、こっちのが軽そう。
まあ、そうなんだけどね。ただ、こいつには決定的なアドバンテージがあって、コーナーとか攻めるのに不利なんだ。
こいつの駆動方式は、チェーンドライブなんだ。だから、ダイレクトにエンジン回転が後輪に伝わりにくいんだよ、どうしてもギアチェンジの時にラグが出来るんだ。
さすがホンダだわ。四輪車までバイクと同じことやってたのね!
まあ、そうなんだよな…結局、この後はちゃんとシャフトドライブだけになるけどな。
自動車のメカニズムにも、いろいろあったのね。勉強になったわ。連れてきてくれてありがとうね。
お、おう、改めて言われると照れるぜ。でもまあ、これでエンスーの世界も奥が深いって判ってもらえるかなって思ってさ。
あ、それだ! この前も言ってたそのエンスーってなに? まだ教えてもらってないけど!
え? 言ってなかったっけ? てか、調べてもいない訳ね…
今日は左足にぎゅっと強烈なのが来ました。
杏奈さんの凶暴さはどこから来るのでしょう?
俺は、大きくため息を吐くのでありました。
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