第4話  樹と由瑞 Ⅳ

文字数 431文字

樹と由瑞は東京駅に着いた。もう22時に近い。

由瑞は樹の足を見た。
「足はどう?」
「大丈夫です。それにこのストックすごく使い易いです」
「乗り換え、大変だからタクシーで帰ろう。高速で帰るから一時間程度だよ」
「是非そうしてください。では代金は私の方で」
「そんな訳には行かない」
「いやいや、とんでもない。私のせいなので」
「俺も疲れたからタクシーで帰りたいの。これ以上言うなら君を置いて帰る」
由瑞が冷たく言った。
樹は黙った。
二人は歩き始める。
由瑞は樹の荷物を引き、ゆっくり歩く。こつこつとストックの音がする。



「家に帰る?」
由瑞は樹を見て言った。
樹は立ち止まった。そして由瑞の顔をじっと見ていたが首を振った。
「じゃあ俺のマンションに来る?」
由瑞はそう聞いた。
樹は頷いた。

「一人で居たくないの。今日だけ一緒に居させてください」
「明日もいい」
「えっ?」
「どうせ赤津は帰って来ない」
樹は下を向く。
二人は黙って歩く。


「俺は今、君を一人にして置きたくないんだ」
由瑞はぽつりとそう言った。
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