第9章プロローグのしっぽ:ストーリーとプロットについて
文字数 2,265文字
第9章の本題に入る前に、「ストーリー」と「プロット」について、
ル=グウィンさんからのメッセージを載せておこうと思います。
ル=グウィンさんからのメッセージを載せておこうと思います。
この章では、〈物語を語ること(ストーリーテリング)〉のさまざまな局面について学びます。どれも普通、ストーリーテリングとして意識されていない部分です。
ストーリーテリングって、出来事を起きた順番に書いていくことだと思っていませんか?
そうとはかぎりません。
「ストーリー」イコール「プロット」だと考える人たちもいます。「ストーリー」を「アクション」に限定してしまう人たちもいます。文学の授業や創作講座では「ストーリー」がほんとによく取り上げられますし、「アクション」もたいそう重要視されていますから、私はあえて反対意見を提出してみたいと思います。
アクションとプロットしかない小説は、つまらないです。
アクションもプロットもなくても、優れたストーリーになり得ます。
個人的には私は、プロットは、ストーリーを語る手法のひとつにすぎないと思っています。つまり、出来事を緊密に、たいていは因果関係にしたがって結びつけていく手法。
プロットはすばらしい方便ですが、ストーリーより大切ではないし、なくてもかまわないものです。
ストーリーテリングって、出来事を起きた順番に書いていくことだと思っていませんか?
そうとはかぎりません。
「ストーリー」イコール「プロット」だと考える人たちもいます。「ストーリー」を「アクション」に限定してしまう人たちもいます。文学の授業や創作講座では「ストーリー」がほんとによく取り上げられますし、「アクション」もたいそう重要視されていますから、私はあえて反対意見を提出してみたいと思います。
アクションとプロットしかない小説は、つまらないです。
アクションもプロットもなくても、優れたストーリーになり得ます。
個人的には私は、プロットは、ストーリーを語る手法のひとつにすぎないと思っています。つまり、出来事を緊密に、たいていは因果関係にしたがって結びつけていく手法。
プロットはすばらしい方便ですが、ストーリーより大切ではないし、なくてもかまわないものです。
アクションに関して言えば、もちろんストーリーというものは先へ進まなければならないから、何かが起きないわけにはいきません。でも、その「何か」は、
・出した手紙が届かない
・思ったことが口に出せない
・夏の日が暮れていく
というようなことでいいのです。
ひっきりなしに暴力的なアクションが続くというのは、たいてい、じっさいには何の語るべきストーリーもないことの現れです。
・出した手紙が届かない
・思ったことが口に出せない
・夏の日が暮れていく
というようなことでいいのです。
ひっきりなしに暴力的なアクションが続くというのは、たいてい、じっさいには何の語るべきストーリーもないことの現れです。
手厳しいですね!
というか、痛快!
というか、痛快!
E.M.フォースターの『小説の諸相』は、私が長年愛読し、話題に取り上げてきた本ですが、その中に有名な定義があります。
◆「王が死んだ。それから王妃が死んだ」がストーリー。
◆「王が死んだ。そこで王妃は悲嘆のあまり死んだ」がプロット。
私の意見では、これはどちらも「いちおうストーリーになっている」というレベルのものです。
一番目のは出来事を並べただけで、二番目はそれに比べたらいくらか構造がある、という程度の違いでしかありません。
どちらもプロットとは言えないし、プロットをふくんでもいません。
「王の弟が王を殺し、王妃を自分の妻にしたので、王太子は怒っちゃった」
これなら、プロットです。
何のお話かご存じですよね。(正解:シェイクスピア作『ハムレット』←ヒツジ補足)
プロットの数には限りがあります。(7つとも12とも30とも言われていますが。)
ストーリーは無数にあります。
◆「王が死んだ。それから王妃が死んだ」がストーリー。
◆「王が死んだ。そこで王妃は悲嘆のあまり死んだ」がプロット。
私の意見では、これはどちらも「いちおうストーリーになっている」というレベルのものです。
一番目のは出来事を並べただけで、二番目はそれに比べたらいくらか構造がある、という程度の違いでしかありません。
どちらもプロットとは言えないし、プロットをふくんでもいません。
「王の弟が王を殺し、王妃を自分の妻にしたので、王太子は怒っちゃった」
これなら、プロットです。
何のお話かご存じですよね。(正解:シェイクスピア作『ハムレット』←ヒツジ補足)
プロットの数には限りがあります。(7つとも12とも30とも言われていますが。)
ストーリーは無数にあります。
世界中の人の数だけ、出会いの数だけ、ストーリーがあります。
ウィリー・ネルソン(米国のシンガーソングライター←ヒツジ補足)は、どうやって曲のアイデアを得るのですかと訊かれて、「メロディーは空中にいっぱいあるんですから、手をのばしてつかめばいいんです」と答えたそうです。それと同じです。
世界は物語(ストーリー)に満ちているんですから、手をのばしてつかめばいいんです。
最後のイメージが素敵ですね!
でも、わかったような、わからないような?
「ストーリー」と「プロット」をどう定義するかにもよりますね。
日本語では、さらに「プロット」があいまいな使われかたをしている気がします。
「プロット plot」にはもともと、「策略」とか「軍略」という意味があります。そういう、意識して立てる「構想」が「プロット」。天から降ってくるのが「ストーリー」……という感じでしょうか。
「こういうお話を書きたい」が「ストーリー」。
「そのお話を書くには、こういう形にしよう」が「プロット」、という感じでしょうか。
でも、わかったような、わからないような?
「ストーリー」と「プロット」をどう定義するかにもよりますね。
日本語では、さらに「プロット」があいまいな使われかたをしている気がします。
「プロット plot」にはもともと、「策略」とか「軍略」という意味があります。そういう、意識して立てる「構想」が「プロット」。天から降ってくるのが「ストーリー」……という感じでしょうか。
「こういうお話を書きたい」が「ストーリー」。
「そのお話を書くには、こういう形にしよう」が「プロット」、という感じでしょうか。
「手をのばすだけでいい」なんて言ってみたのは、
「きっちりしたプロットを作りこむまではストーリーを書いちゃいけない」
という思いこみから、皆さんが解放されるといいなと思ったからです。
そういう書きかたが好きなかたは、もちろんそうしていいのです。
でも、好きではないなら、プランやプロットを立てるのが苦手なら、気に病むことはありません。世界は物語に満ちているんですから。必要なのはただ、
・登場人物の一人か二人
・彼らの会話
・何かの状況
・どこかの場所
それくらいでいいんです。
それだけでもう、ストーリーは動きだします。
そのストーリーについて思いをめぐらせてみましょう。じっさいに小説本編を書き始める前に、少なくとも一部分、習作として書いてみましょう。
そうすると、だいたいどちらの方向へ向かっていったらいいかわかります。
でも、あとは、書いているうちに自然に道が定まるものです。
私は自分で考えた「ストーリーテリングの技の舵を取る」というイメージが気に入ってはいますが、じつはこの船=ストーリーは魔法の船で、自分の行く先を知っているのです。
舵手の仕事は、船が進むべき方向へ進むのを、助けてあげることです。
「きっちりしたプロットを作りこむまではストーリーを書いちゃいけない」
という思いこみから、皆さんが解放されるといいなと思ったからです。
そういう書きかたが好きなかたは、もちろんそうしていいのです。
でも、好きではないなら、プランやプロットを立てるのが苦手なら、気に病むことはありません。世界は物語に満ちているんですから。必要なのはただ、
・登場人物の一人か二人
・彼らの会話
・何かの状況
・どこかの場所
それくらいでいいんです。
それだけでもう、ストーリーは動きだします。
そのストーリーについて思いをめぐらせてみましょう。じっさいに小説本編を書き始める前に、少なくとも一部分、習作として書いてみましょう。
そうすると、だいたいどちらの方向へ向かっていったらいいかわかります。
でも、あとは、書いているうちに自然に道が定まるものです。
私は自分で考えた「ストーリーテリングの技の舵を取る」というイメージが気に入ってはいますが、じつはこの船=ストーリーは魔法の船で、自分の行く先を知っているのです。
舵手の仕事は、船が進むべき方向へ進むのを、助けてあげることです。
とっても素敵な、幸福なイメージですね。
そう思われませんか?
こう言ってもらうと、ヒツジなんて、いますぐ小説を書きたくてたまらなくなってきちゃいます。
そう思われませんか?
こう言ってもらうと、ヒツジなんて、いますぐ小説を書きたくてたまらなくなってきちゃいます。
このページの白枠の引用部分は、『ル=グウィンの小説教室 (Steering the Craft)』第9章の冒頭そっくりそのままです。(省略も要約もないということです。)
ヒツジが自分で訳しました。太字の強調はヒツジによるものです。
原書の電子書籍版では94ページから、96ページの最初の段落までに当たります。
ヒツジが自分で訳しました。太字の強調はヒツジによるものです。
原書の電子書籍版では94ページから、96ページの最初の段落までに当たります。