明日は雨
文字数 2,362文字
友達から衝撃の事実を聞いた。
明日は雨だと言う。
それはそうか、と思う人は沢山いるだろうし、勿論普段ならば僕もそういう気持ちだ。雨などいつも通りの気象って奴で、珍しくもなんともない。
しかし、人の事情って奴は気象以外にも色々と複雑怪奇な赤い糸が入り乱れているもので、その様々な要素が絡み合うことで日々の生活があるのである。
で、僭越ながらこの僕はという至って平凡な人間にもその法則は当てはまるのであって、つまり、平たく言うと明日は僕の初デートの日だったというのが、その理由だ。
先週末の飲み会の帰りしなに、同級生の中川さんと終電が一緒になったのは不幸中の幸いだった。僕は本当は大学の飲み会なんて頭ぱっぱらぱーなパリピの集まりには行きたくなかったのだ。
だのに、中川さんったら、
「やっぱ大学入ったら飲み会でしょ」
なんて楽しそうに言うのだ。僕は入学以来黒髪ロングの中川さんにぞっこんなもんで、嫌々だけれど頭ぱっぱらぱーの奴らの飲み会に隅っこから参加した。
そして、そこで中川さんが通学している電車が僕と同じ方面だったことや、好きなロックミュージシャンが一緒だったり、古典文学小説が好きだということも一緒で、なんとここでまさかの意気投合。確変と相成ったのである。頭ぱっぱらぱー河合どもに僕の中川さんは渡さない。
そういうわけで、あの地獄のような飲み会をなんとか無難にこなしてからの、終電に中川さんと素早く乗り込んでからの、好きです中川さん。
なんてって、手を差し出したところ、彼女は何が楽しいのか、とても酔い目で赤い顔をしながらその手をとって一緒にばんざーいをした。
「いいよ!」
と言ってくれて、僕はとてもとても爆発しそうな気分になったが、この返事も一日過ぎて酔いが醒めるとともに、綺麗さっぱり忘れてしまわないか心配しながら家路についた。
でその次の日にガッコに行くと、中川さんが向こうからてくてくと歩いてきて、来週の初デートどこにする?と言ったところで僕の心はイエス!!!となったである。
からの、明日の雨。
僕は本当に愕然とし憮然とした後、憤然としていたのだった。いわゆる大自然に対して。
ふざけるんじゃねえよ、動物じゃねえんだぜ、っちう頭脳警察もびっくりの野生を爆発させながら、地団駄をだだだんと踏んだのだ。
だって、あの中川さんの来週の初デートどこにする?若干声色を似せてみましたけれども、ああいう可愛い子ちゃんの発言を聞いて奮起しない男がいったい何処にいます?それを聞いて、草食系に体系分類される僕も柄にも無く大いに奮起しましたとも。つまり、初デートコースを僕は無い頭を全開に振り絞って考えてみたのだ。
まず、ユニバーサルスタジオジャパンで朝から遊びまくる。そして、夕方まで遊びまくってから次は天王寺の天芝で少しまったりとして休憩をするのだ。そこでうふふと恋のさえずりを楽しんだあと、夜はそこに併設されているBBQが出来るオサレなお店で美味しいお肉を食べる。夜は最寄りの天王寺動物園のナイトズーだってありますよ。うん。完璧。そして、これは大きな声では言えないが小さな声では聞こえないという、つまりほどよい声で言いますけれども、もしもこのデートプランが完璧に機能して二人の距離が良い感じになりましたとしたならば、そのまま二人は近所のご休憩へスライドインと相成っても良いような万全の態勢。
そこまで考えていたのにである。
そこまで考えてからの、本日の明日は雨発言に、僕は自身のプランの脆さをまざまざと気づかされることとなったのだ。つまり、これら鉄壁の初デートプランは、晴れの天気を大前提としていたのだった。
そう気づかされ、僕は膝からがっくりとうなだれ両手を地面についておろろんと泣いた。まさかの大失態。計画に大きな大きな穴が開いていたことに、これっぽっちも気が付かなかったのだ僕は。頭ぱっぱらぱーなのは河合ではなく僕の方だったのだ。雨の日のプランは何も考えていなかった。
そういうわけで、電話口で喋っているときに中川さんが僕に聞いてきたのである。
「明日、どこ行く?」
ほら来た。そりゃあ、聞かれるさ。初デートだもの。僕は全ての計画がおじゃんになってしまった気持ちで、何にも言うことができなかったのである。全てが晴れ前提でお話を進めようとしていたお花畑の所業だ。リスク管理がちっともできていなかった。僕は草食系の大馬鹿野郎さ。大馬鹿の浮かれぽんちのぱっぱらぱー河合だ。
「それがさ、色々考えてたんだけどさ。晴れのことしか考えてなくって、雨の日のこと何にも考えてなかったんだよ。本当にごめん… …」
僕はもう終わったと思った。ここで唐突に自らのカミングアウトをさせていただきますが、僕は立派な童貞なのであった。なので、こういう男ならおそらくきっちりと決めないと行けない場面で自力の差が出てしまったのである。つまり初デートでしくじる奴は阿呆だ。生き恥を晒してこれから生きていくのだ。もう一生、僕は立ち直れないのだろう。初回をしくじったやつぁダメだ。
なんて思ってるところで
「そうなんだ。まぁ別にいいじゃん。じゃあ、古本屋巡りしよっか」
なんて。
「え?そんなんでいいの?」
「どゆこと。古本屋巡りイヤ?」
「いや、めちゃ好き」
「ならいいじゃん」
… …うん。いいのか。そういうもんなのか。そんなもんなのか、デートって。そうか。てって。
次の日はやっぱり天気予報通りの雨。てゆうか、これでもかっていう大雨がどや顔で大自然をアピッてくる。
そんな中、僕らは古本屋巡りを巡り巡って、それぞれ二冊ずつ、良い掘り出し物をほくほく見つけたのだった。
明日は雨だと言う。
それはそうか、と思う人は沢山いるだろうし、勿論普段ならば僕もそういう気持ちだ。雨などいつも通りの気象って奴で、珍しくもなんともない。
しかし、人の事情って奴は気象以外にも色々と複雑怪奇な赤い糸が入り乱れているもので、その様々な要素が絡み合うことで日々の生活があるのである。
で、僭越ながらこの僕はという至って平凡な人間にもその法則は当てはまるのであって、つまり、平たく言うと明日は僕の初デートの日だったというのが、その理由だ。
先週末の飲み会の帰りしなに、同級生の中川さんと終電が一緒になったのは不幸中の幸いだった。僕は本当は大学の飲み会なんて頭ぱっぱらぱーなパリピの集まりには行きたくなかったのだ。
だのに、中川さんったら、
「やっぱ大学入ったら飲み会でしょ」
なんて楽しそうに言うのだ。僕は入学以来黒髪ロングの中川さんにぞっこんなもんで、嫌々だけれど頭ぱっぱらぱーの奴らの飲み会に隅っこから参加した。
そして、そこで中川さんが通学している電車が僕と同じ方面だったことや、好きなロックミュージシャンが一緒だったり、古典文学小説が好きだということも一緒で、なんとここでまさかの意気投合。確変と相成ったのである。頭ぱっぱらぱー河合どもに僕の中川さんは渡さない。
そういうわけで、あの地獄のような飲み会をなんとか無難にこなしてからの、終電に中川さんと素早く乗り込んでからの、好きです中川さん。
なんてって、手を差し出したところ、彼女は何が楽しいのか、とても酔い目で赤い顔をしながらその手をとって一緒にばんざーいをした。
「いいよ!」
と言ってくれて、僕はとてもとても爆発しそうな気分になったが、この返事も一日過ぎて酔いが醒めるとともに、綺麗さっぱり忘れてしまわないか心配しながら家路についた。
でその次の日にガッコに行くと、中川さんが向こうからてくてくと歩いてきて、来週の初デートどこにする?と言ったところで僕の心はイエス!!!となったである。
からの、明日の雨。
僕は本当に愕然とし憮然とした後、憤然としていたのだった。いわゆる大自然に対して。
ふざけるんじゃねえよ、動物じゃねえんだぜ、っちう頭脳警察もびっくりの野生を爆発させながら、地団駄をだだだんと踏んだのだ。
だって、あの中川さんの来週の初デートどこにする?若干声色を似せてみましたけれども、ああいう可愛い子ちゃんの発言を聞いて奮起しない男がいったい何処にいます?それを聞いて、草食系に体系分類される僕も柄にも無く大いに奮起しましたとも。つまり、初デートコースを僕は無い頭を全開に振り絞って考えてみたのだ。
まず、ユニバーサルスタジオジャパンで朝から遊びまくる。そして、夕方まで遊びまくってから次は天王寺の天芝で少しまったりとして休憩をするのだ。そこでうふふと恋のさえずりを楽しんだあと、夜はそこに併設されているBBQが出来るオサレなお店で美味しいお肉を食べる。夜は最寄りの天王寺動物園のナイトズーだってありますよ。うん。完璧。そして、これは大きな声では言えないが小さな声では聞こえないという、つまりほどよい声で言いますけれども、もしもこのデートプランが完璧に機能して二人の距離が良い感じになりましたとしたならば、そのまま二人は近所のご休憩へスライドインと相成っても良いような万全の態勢。
そこまで考えていたのにである。
そこまで考えてからの、本日の明日は雨発言に、僕は自身のプランの脆さをまざまざと気づかされることとなったのだ。つまり、これら鉄壁の初デートプランは、晴れの天気を大前提としていたのだった。
そう気づかされ、僕は膝からがっくりとうなだれ両手を地面についておろろんと泣いた。まさかの大失態。計画に大きな大きな穴が開いていたことに、これっぽっちも気が付かなかったのだ僕は。頭ぱっぱらぱーなのは河合ではなく僕の方だったのだ。雨の日のプランは何も考えていなかった。
そういうわけで、電話口で喋っているときに中川さんが僕に聞いてきたのである。
「明日、どこ行く?」
ほら来た。そりゃあ、聞かれるさ。初デートだもの。僕は全ての計画がおじゃんになってしまった気持ちで、何にも言うことができなかったのである。全てが晴れ前提でお話を進めようとしていたお花畑の所業だ。リスク管理がちっともできていなかった。僕は草食系の大馬鹿野郎さ。大馬鹿の浮かれぽんちのぱっぱらぱー河合だ。
「それがさ、色々考えてたんだけどさ。晴れのことしか考えてなくって、雨の日のこと何にも考えてなかったんだよ。本当にごめん… …」
僕はもう終わったと思った。ここで唐突に自らのカミングアウトをさせていただきますが、僕は立派な童貞なのであった。なので、こういう男ならおそらくきっちりと決めないと行けない場面で自力の差が出てしまったのである。つまり初デートでしくじる奴は阿呆だ。生き恥を晒してこれから生きていくのだ。もう一生、僕は立ち直れないのだろう。初回をしくじったやつぁダメだ。
なんて思ってるところで
「そうなんだ。まぁ別にいいじゃん。じゃあ、古本屋巡りしよっか」
なんて。
「え?そんなんでいいの?」
「どゆこと。古本屋巡りイヤ?」
「いや、めちゃ好き」
「ならいいじゃん」
… …うん。いいのか。そういうもんなのか。そんなもんなのか、デートって。そうか。てって。
次の日はやっぱり天気予報通りの雨。てゆうか、これでもかっていう大雨がどや顔で大自然をアピッてくる。
そんな中、僕らは古本屋巡りを巡り巡って、それぞれ二冊ずつ、良い掘り出し物をほくほく見つけたのだった。