第1話

文字数 821文字

 

  水曜日の午前七時。二方平治はあまりに気分が悪かった。ぼんやりと目を覚まし、とりあえず起き上がり、とりあえず部屋を歩きまわり、窓を開け、スリッパを見つけ、顔を洗おうと洗面所に向かった。

 ついでに歯を磨き、髭を剃り、顔を拭き、のそのそとキッチンに向かってお腹にいれても大丈夫なものを捜す。




 フライパン、食器、冷蔵庫、リンゴ、栄養ドリンク「ファイト一発」嫌気がさした。
 鏡に映った自分が二重に見える。ヘイジはそれを見つめた。極度の乱視でもなければ頭がおかしいわけでもない。立ち止まって大きなコップで水を飲んだ。二日酔いのような気もする。どうして二日酔いなんだろう。おかしい。昨日は大事な面接だったはずだ。そして、今日もなにか予定が入っていたはず。のそのそとベッドに倒れ込んで考えた。




 思い出した。くそったれ、一人で安酒に管をまいて店が閉まるぎりぎりまで飲んでいた。そこでヘイジはとてつもなく怒っていたことをぼんやり思い出す。なにを怒っていたかなんて決まっている。昨日の集団面接の試験官の態度に癇癪をたてていたのだ。書類審査や筆記試験をなんとかパスし、面接までこぎつけたのに、Fランク大学だからと言ってヘイジの話しをまともに聞こうともしなかった。そればかりかちょっとそっぽを向いたヘイジにくどくどとお説教を垂らし込んだのだ。今でもはっきりと浮かぶとろんとした目つきでふてぶてしく腹が突き出たはげ親父。ばかにしやがって。ヘイジは立ち上がり酒のかわりにもう一度水をごくごく飲んだ。




 それにしてもひどい二日酔いだ。怒りをぶつける対象がいなかったとはいえ飲みすぎた。




 ふと床に放置されたリクルートスーツを見つける。ヘイジはそれをぼぉっと眺め、十五秒後、彼は身に着けた衣服を脱ぎ捨てスーツを着用すると慌てて部屋から飛び出した。完全に思い出した! 今日は志望度が高いメディア系企業の二次面接がある日だ。

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登場人物紹介

二方ヘイジ

7月に入っても未だ内定0の就活生。

または、Fラン大学四年生。

これといって特徴もない。

アクタガワ

大学六年生で実は宇宙人。

ヘイジとは、インカレのサークルで知り合った。

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