第14話

文字数 828文字

「次に三人はおかみさんについて、二階の部屋の扉までやって来た。おかみさんはノブを回し、鍵が開いてないことを知ると、振り返って言った。

『ドロシー、鍵はあんたが持ってるんだったね』
 聞くとドロシーは、さっと前かけに手を突っ込み、鍵束をおかみさんに渡した。
 やはりおかみさんは手慣れているのか、上手に鍵を回して扉を開けた。

 三人は上の階でしたように、まだお化け屋敷を行くような様子でね。おかみさんが灯りをつけても、テーブルの下や、書架の隙間をおっかなびっくり見て回った。

『ここの窓も閉じたまんまだね』おかみさんが言うと、ドロシー以外の二人は徐々に平静を取り戻していった。

 机の上には、おかみさんが言っていたリンゴが、いくつかあみカゴに入れて置いてあってね。
『まあ、おいしそう』ノーラの口調はもう、いつもの気立ての優しい娘のそれに戻っていた。

 そして、おかみさんも『仕事が終わったら、ノーラとミカエルも持っていっていいからね。一人ひとつずつだよ』と、もはや侵入者のことなど頭にないらしかった。


 それから、三人がまだ二階でたむろしていたとき。状況は一転した。

 おかみさんが三階から『三人とも、ちょっと!』とただならぬ様子で言うんだ。
 三人は顔を見合わせる間もなく、三階へ飛んで行ってね。あのガラクタ入れのバケツをのぞき込むおかみさんの周りに集まった。

『誰だい?こんなとこにヤカンを捨てたのは』
 三人が見ると、確かに穴があいて使い物にならなくなったヤカンが一個入っている。

 ドロシーはバケツの底までは見ていなくてね。最初からそんなものが入っていたのか、と考え出した。
 そうやって、ヤカンを回し見するうちにノーラが言った。
『何か入ってます』

 おかみさんがふたを開けてみると、中にはしわくちゃの紙が一枚入っていてね。取り出されると当然、四人の視線はその紙に釘づけになった。

 そして、紙には黒のインクでこう書かれてあった。『その子の価値を知らないなら、気づかせてあげよう』」
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