第12話 20世紀最大の指揮者フルトベングラー
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フルトベングラーは一時期本を読んだ。名盤を山野楽器に探しに行った。その頃は簡単には聴けなかった。
ある時、百均で、フルトベングラーのCDが売られていた。
どういうこと? 著作権が切れたらしいが憤慨!
今はYouTubeで聴けるのでありがたい。ありがたすぎるが。
現在でもCDが続々と発売され、放送録音、海賊録音の発掘も多く、真偽論争となったレコードも少なくない。
ベートーヴェン、ブラームス、ワーグナー等のドイツ音楽の本流を得意とした。一般には後期ドイツ・ロマン派のスタイルを継承した演奏とされ、作曲家としても後期ドイツ・ロマン派のスタイルを継承したことから、ライバルのトスカニーニと対極に位置づけられることもあるが、「堅固な構築性をそなえた演奏を『ロマン主義的演奏』というだけで片付けてしまうのは軽率」とする見解もあり、またフルトヴェングラー自身は「後期ロマン主義者」と看做されることを極度に嫌い、「私はロマン主義者でも古典主義者でもない」と語ったともいわれる。
フルトヴェングラーの、今では絶滅しかかっている古き演奏様式は時として魅力的であるし、例のバイロイトの第9のように奇跡的な演奏もある。ただそれらは歴史的価値として評価すべきものであって、貧弱な録音を乗り越えて特別視するほどではないと言いたいのだ。
問題は二つある。一つは言うまでもなく録音が悪いことである。EMIの正規録音もひどいものであるし、いろいろ発掘されたライブ録音などは聴くに堪えないものが殆どである。
そもそも録音が悪ければ、指揮者が苦労して築き上げた各楽器の響きは伝わらないし、各楽器間のバランスなどの重要な要素も全くわからない。聴けるのは速度や全体音量の違いだけになってしまう。これはいくらフルトヴェングラーが凄い指揮者だったとしても、その魅力の半分ぐらいしか聞けないことになる。
逆説的に言えば、速度変化や音量変化しかわからないのに神格化する連中は、かえってフルトヴェングラーに対して失礼なのではないか、とさえ思う。
そもそもフルトヴェングラーは録音、レコードというものにあまり信頼を置いていなかったことが伝わる言葉の端々にうかがえる。今の貧しい録音をあがめ奉る連中には苦笑いするか、「私の芸術はこんな音で伝わるわけがない」と怒り出すのではないか。
二つ目の問題は、そのロマン主義的、感情移入的演奏があまりに極端であり、曲そのものの構造まで壊してしまう域に達することが多い点である。
個人的には昨今の貧弱で味気ないピリオド奏法などよりよほど心の琴線に響くし、猛烈なアッチェレランドなどの劇的手法も嫌いではない。ただ、残された大体の録音において、そのやり方が大袈裟すぎるし、ワンパターンだと思ってしまう。交響曲なら終楽章でテンポを思いっきり揺さぶった挙げ句に強烈に加速して終わる、というのが見え見えなのだ。言ってみれば演歌調が過ぎて、感動に至らないのである。
その点上記演奏、WPhとの5番1954年スタジオ録音は、彼の悪癖である極端なテンポ変動やステレオタイプの終曲前加速が控えめであり、欠点が少ない。その上でやたら速い演奏が多い最近の演奏と異なり、ベートーヴェンらしさを生み出すテンポ設定が誰よりも優れている。フルトヴェングラーのすべての録音の中で最も好きな演奏である。
1934年 ヒンデミット事件によりナチス政府と対立。12月5日、ベルリン・フィル音楽監督、ベルリン国立歌劇場音楽監督、プロイセン枢密顧問官および帝国音楽院副総裁を辞任。
1935年 客演指揮者としてベルリン・フィルに復帰。
1936年 ニューヨーク・フィルの次期音楽監督にトスカニーニから指名されるが、ナチスの妨害により破談。
1938年 ドイツのオーストリア併合後、ナチスによるウィーン・フィル解散を阻止。
1939年 第二次世界大戦が勃発するがドイツに残る。国内のユダヤ人音楽家を庇護。
1945年2月 ウィーン・フィルの定期演奏会後にスイスへ亡命(彼を嫌うナチス高官ハインリヒ・ヒムラーから逮捕命令を出されていた)。5月 戦時中のナチ協力を疑われ、演奏禁止処分を受ける。
1947年 「非ナチ化」裁判の無罪判決をうけ、音楽界に復帰。ベルリン・フィルの終身指揮者に。
1948年 シカゴ交響楽団の常任指揮者就任の要請を受けるが、ホロヴィッツ、ルービンシュタイン、ミルシテイン、ピアティゴルスキー、ハイフェッツを含むユダヤ系音楽家たちからの抗議により破談。
「あなたはナチだから出ていけ!自由な国と奴隷化された国の双方では指揮する資格はない」
「あなたにまかせるなら出て行きます。でも音楽家にとって自由な国も奴隷化された国もない。演奏するのがたまたまヒトラーの国といって、ヒトラーの部下とは限らない。偉大な音楽こそナチスの敵ではないですか!」
「第三帝国で指揮する者は全てナチスだ!」
といった内容で喧嘩別れした。以後、2人が会うことはなかったといわれる。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/アルトゥーロ・トスカニーニ
フルトヴェングラー 悪魔の楽匠-下巻
サム・H・白川著 藤岡啓介・加藤功泰・斎藤静代 訳
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