第126話 ひゃくれつ肉球

文字数 588文字

 毎日のように妖怪ウォッチのカードを買っていた頃、ちまたでは妖怪ウォッチのブームが来ていたようだ。
 宿泊所では自由にテレビが見られないため、リアルタイムの情報は入って来なかった。
 本屋で買った妖怪ウォッチの特集号にはDVDの付録がついていたので、新たに父から買ってもらったポータブルプレーヤーを使って、ジバニャン登場からの六話を、毎晩ヘビーローテーションしていた。

 神殿の近くのおもちゃ屋の店頭には、Tシャツやお面まで並んだ。
 娘は、胸にジバニャンがプリントされた青いTシャツをゲットした。お面も買おうと考えたようだが、お店で着けてみたら、横長のジバニャンの顔の下が、あごに当たるのが嫌だったみたいで、すぐに諦めた。

 託児所からの帰り、娘が言った。
「ジバニャンの必殺技のひゃくれつにくきゅうってあるでしょ。
 ひゃくれつはかっこいい言葉で、にくきゅうはかわいい言葉。
 その二つでできているの!」

 よくそんなことが分かるよね。
 確かに、合ってるけど。
 ひゃくれつは北斗百裂拳から来ているし、肉球はプニプニしている。名は体を表している。
 今思えば、託児所の友達から教えてもらったのだろうか。
 当時は、「四歳なのに、言葉の感性が鋭いな」と感心するばかりだった。

 うちの子は、きっと賢い。
 将来も、あの母親のような人間にはならないはずと信じている。
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