第8話

文字数 313文字

 悪徳の都、セレファイス。この街に必要ない職業はふたつ。
 ひとつは葬儀屋。この街の住人に葬式という習慣はない。死んだらみんなまとめてナラクサ河に流す。
 もうひとつは探偵である。この街で浮気や身辺調査だの、いなくなったペット探しだのをやった記憶はない。
「探偵さん。今日はお仕事できるといいですね」
 そんな必要のない探偵の事務所は、なぜか助手を雇っている。
「貧困で、死なないでくださないね」
 少しだけ、笑みもどきみたいな顔をした少女だ。それが、一番不必要な職種の事務所の、新人助手だ。
「私が、探偵さんを殺しますから。だから、今は死なないでくださいね」
 今度はちゃんと笑顔をしていた。
 ああ、今日も最高にハッピーな一日になりそうだ。
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