第9話

エピソード文字数 1,527文字




 アニメイト近くの富士そば。
 そば屋である。
 ここに、加奈子、真奈美、それから真奈美の弟子の細波凜々子が、各々注文したそばをすすっている。
「怖かったですよー」
 凜々子は横に座っている真奈美の肩に頭を載せた。
「師匠が助けてくれなかったらゴー・トゥー・借金地獄でした。お風呂に沈められるところでしたぁー」
「よしよし、いい子いい子」
 凜々子の頭を撫でる真奈美。
「あの、私がこの子を助けたのだが?」
「知りません、こんなおばさん」
 おばさん、というワードに加奈子はキレかかるが、自制した。
 この凜々子という子は、まんがにでてくる探偵のようにフロックコートに帽子というルックスで、かなり不自然だった。
 パイプでもくわえていればホームズだ。
「ところで、この子はなんで今日、ここに来ることになったの」
 加奈子が聞くと、
「打ち合わせ。『ファウンデーション』絡みのね。だから、この街じゃないと、アウトかなって」
 と、真奈美が答えた。
「さっきワルの話をしかけたけど、ファウンデーションも、十分『悪』の組織だと思うよ? テロとか平気で起こしそう」
「あんたもファウンデーションのメンバーでしょ」
「そうだね。そしてこの子も、準メンバー。加奈子も準メンバー」
「琴美はなにを目論んでるんだろうね」
「杏城サマだけでなく、加奈子ちゃん、あんたもね」
「師匠。ファウンデーションって、アブナい組織なんです?」
「そんなこたないよ」
「言ってること矛盾してるわよ、真奈美」
「矛盾はしてないって。このトーキョーには、無数の、創作系女子の『コミュニティ』がある。ファウンデーションも、そんな創作系女子コミュニティのひとつ。このコミュニティって、大体街ごとに集ってんのよ。で、この『渋谷』のコミュニティのひとつが、『ファウンデーション』ってわけ」
「そうね。大体、DJパーティやったり女子だけで飲み会開いて情報交換したり、そんな感じだもんね」
「でもさ、私は、ファウンデーションって集まりだけに関して言えば、暴徒化するような気もするよ。ファウンデーションの一部がね」
「杏城琴美」
「そ。杏城サマの交際範囲は、危険な連中も多分に含まれてるからね」
「琴美ファンなのに、よく言うね」
「で。私とこの不肖の弟子、細波凜々子ちゃんの出番ってわけ」
「どーいうことです? 師匠」
「なんかね、杏城サマと一昨日、サシで飲んで、そんで、この街をファウンデーションから見た視線で『書く』ってことになったの、私が。そんでね、凜々子ちゃんも、その計画に乗せることにした」
「わ、私もですかぁ。で、でも、私、京王堀之内から一歩も外に出ない人間だしぃ」
「社会勉強しなさいよ、良い機会なんだから。それにファウンデーションの抑止力になるっていう大義もあるんだし」
「師匠がそう言うのなら……」
「凜々子ちゃん、か。このお弟子さん、速攻でエウリアンにとっ捕まってたんだけど、大丈夫なの? 社会勉強っていうか、それ以前の問題じゃね?」
「まー、いいからそば食え。麺が伸びるわよー」
 富士そばは、食堂なのでファミレスと違い、喋るところではない。なので、べらべら喋る三人は浮いた存在どころか、かなり他の客から白い目で見られているのであった。
「天かすうめえ」
 しかし真奈美だけは特に周囲の目を気にすることなく、ニコニコそばをすする。
 三人が食べ終わるとそれを見計らって凜々子が、
「デパ地下が流行ってるって聞きました!」
 と、かなり露骨にデパートの地下に行きたいアピールをしたが真奈美に、
「まだなんか食うつもりなの、あんた」
 と拒絶され、速攻で撃沈するのだった。


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