月下の出逢い

文字数 700文字

 アリーアは旅立った。家族、友人に見送られ、故郷を後にした。
 途中の町で、信仰心に厚い戦士オズマと、アポピスに立ち向かう意思を持った戦士ルイスと出会う。アリーアの使命に感銘を受けた二人は、同行を申し出る。迷ったアリーアだが、道中の困難を考えて、二人を連れ立って旅に出ることにした。
 ある夜。アリーアのための天幕を張り、交代で見張りをしていたオズマとルイス。二人は異変に気づく。近くの林の中に、何か気配する。とても大きな気配。
 二人の会話を聞いて、アリーアも天幕から出てきた。林の中の気配。それを確認するために、アリーアは林の中へ足を踏み入れる。オズマとルイスが慌てて後を追う。
 アリーアが草木をかき分ける。立ち並ぶ林の奥。林に囲まれるようにあった空間。そこにとても大きな体躯の、牡狼がいた。毛並みは月光に照らされて、きらきらと輝く銀色。アリーアたちを見つめる瞳は、ルビーレッドの色をしていた。体胴長は170センチはゆうに超えようかという、筋肉質の屈強な体だった。
 狼は傷を負っていた。身体から血を流している。それでも、アリーアたちを見つめると、唸りをあげてよろよろと立ち上がった。
 オズマとルイスも、後にどんな禍があるかわからない。手負いの内に殺そうと言った。しかし、アリーアはそれを厳しく禁じた。
 ゆっくりと狼に近寄ったアリーア。狼の顔に触れると、癒しの言葉を唱える。すると、法力によって狼の傷がたちまちの内に治った。
 狼は唸りを上げて、態勢を低くする。狩りの態勢だ。それ見たことかと、オズマとルイスが剣を構える。
 数秒間、睨み合う。しかし、狼はアリーアたちを襲うことなく、林の中へと消えていった。
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