流れる雲のように

文字数 334文字

悲しみの青空に
また一つ歳を重ねて
明日の朝日に
胸を踊らせる
夢の中では
雨が降って
間接照明が
滲んでいった

(ぼくは空を飛びながら
 無我夢中で体を透明にするのです)

「山が燃えている
 その麓に
 あなたのお墓があって
 今年のお彼岸には
 間に合いそうもないから
 私はあなたを思い浮かべて
 手作りのおはぎでも食べようかしら」

北向きの鏡に
あなたの好きだった
洋酒が反射して
琥珀色の光が
部屋に広がった

  今でもたまに見るのは
   防空壕で怯えていた
    幼馴染の横顔なのです

ギターの弦が揺れた
あなたの声が聞こえてくる
ぶつかり合うコタツの角と
足先の冷たい感触
その上に響く歌があって
その上に灯る光があって
朝日が世界を赤く染める度に
夜が部屋を満たしていく度に
私は今でも
あなたの帰りを待っています。
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