エイト学習中 〜オノマトペ〜

文字数 494文字

その日の自分は、良い香りのする朝食を目の前にしてもなかなか食が進まなかった。原因は明白。昨日の夕食があまりに美味しくて食べ過ぎてしまい、胃の調子がよろしくなかったのだ。

「フェザーハントさん、具合でも悪いのですか?」

察しのいいシュロムクルツさんには、やはりすぐばれた。けれど変に心配されぬよう笑顔を作った。

「いいえ、大丈夫です。少し、胃がムラムラするだけなので」

「それはお辛いですね」

言葉では心配しているのに、何かを隠すように口元に手をあてる彼。自分が言葉の間違いをしたのだとわかった。

「あの、胃の調子が悪く、食欲がないときに、“胃がムカムカする”は間違いでしたか?」

「ああやっぱり。単なる言い間違いですね」

「え?あの、自分は何と?」

「胃がムラムラする、と」

「っ!?ちがっえとっ、自分の胃はムカムカです!ごめんなさい!」

「お気になさらず。私も言い間違いはしますしね。そうだ、胃薬をお持ちしましょう」

どうしようもない恥ずかしさがこみ上げ、彼の爽やかな笑顔を見れなくなった。胃をムラムラさせることができるヒトなんて、この世にはいないと思う。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み