第4話 セッティーヌ

文字数 4,864文字


ドンガラぐじゃドガ、ガッシャーン!!ドコっつ!
う、うげ、げろげろーげー

腹に蹴り一発で男は中を飛び、部屋の反対側にあったテーブルとその上のご馳走などを破壊ぶちまけながら凄い速度で転がり、壁に衝突して止まった。

「このすっとこどっこい、もういっぺん言ってみろ?あ?なんだって?」美少女
げろげろげーおえー びくん!びくん!
「やめたげて!!この人は悪くないの!!頭が悪いだけなの!!」
それよりは劣るが、一般よりは美少女がびくんびくんしている男に駆け寄る
「性格も」
「そうだねー、、」

フン! 踵を返し、ケリを入れたうら若き美女?美少女はバルコニーの方に向かい、そこにいたボーイからグラスをもらい、バルコニーに出た。

潮時かな、、
セッティは思った。
阿呆だとはわかっていた。ゲスだともわかっていた。そしてそれが治し様も無いことも、わかっていた。
が、両親のために我慢していた。
が、それもここまででよかろう。やつが、自分で、その軛をはずしてくれたのだ。

あのバカ王のみが、それを望み、関係者全員、当事者であるあのクズ王子さえもが望まなかったのだ。
それが、あのクズと私の婚約。

バカ王も息子が何人のいれば、あんなクズを放り出していただろう。 が、バカ王は繁殖さえも無能だった。やっと一匹クズが湧いただけだった。側妃を何人持ってもだめだったのだ。多分種無しで、王妃はほかから種を仕込んだのだろうと、国内でそう思わぬものはいなかった。
どうすればあのようなクズができるのだろう?と誰もが思ったが、解明は不可能だろう、強化性突然変異のクズとしか思えない。
まぁ、あの存在が、生涯唯一の功績が、今日のこの場のあの発言だろうよ。
王子からの婚約解消宣言。多くの者達がしっかり聞いた。取り消しなど絶対にさせない。

この夜会に両親は来ていない。あのクズかその父のバカを見ると我を忘れてしまうだろう、と危惧してのことだ。
その判断は大当たりだったな。

さて、今日は帰って祝杯をあげようか。




セッティーヌ・エフフロシーニヤ・アクヤクノーツ 伯爵令嬢。 アクヤクノーツ北部辺境伯爵家長女。

辺境伯爵なので平伯爵より一段上になるらしい。辺境領は、場所柄、強力な武力を保持せねばならないので、当然持っている。
そういう土地柄、家柄なので、跡取り長女であった彼女は物心ついたころから両親以外の者達に鍛え上げられていた。
両親は甘やかしたかったようだが。

彼女はその強さの割には細身に見える。背は高いが筋肉もりもりではない。引き締まって見えるだけだ。
だからマッチョな男たちは、必ず彼女を甘く見る。

女性で背の高いのは有利だ。より美人に見えるし、各部のリーチが長くなる。セッティは胴が短い、つまり足が長い。腕も長めというわけだ。体術でも武技でも有利だ。
締まった体は余計な筋肉を付けない、だから無駄な抵抗等あまり無い。筋肉が少ないということは、力で強引にいくことがあまりないということ。そういう”やりかた”を使っているということだ。
それはバカにはできないこと、つまり聡明さがあるということにつながる。
引き締まった体躯、それは必要な筋肉はあるが余計な脂肪は無い。節制ができているということ。自己抑制ができる、つまり理性が高い。

そのような聡明で理性的な彼女が、バカ、カス等大盤振る舞いする相手は、とことん底抜けの遥かな限度のない確固たる揺るぎ無きゲスなのだろう。



北部辺境伯爵王都邸、
セッティの現在の居住場所だ。
ここから貴族学院に通っている。いた。セッティは今日で学院を止めるつもりだ。
阿呆の巣窟にこれ以上通っても、無駄以外のなにものでもない。

バカ王子の仕業で、学院ではセッティは悪者でしかなかった。常に濡れ衣を着せられ、影で、悪態をつかれていた。正面切って言えばその瞬間に破壊されるから言えないのだ。セッティに勝つどころか、互角な者さえいない、教師ですら。
”仕方なく”通わされている数少ないまともな者達だけ、悪態をつかない、というだけだった。セッティに話しかけたりしたら、親が王族や公爵らから圧力をかけられる。彼らは”親のために”セッティと接点を持つことはならなかった。


現王になってから改易につぐ改易で、前王からの貴族はほとんどいなくなった。
辺境以外の領地はほぼ改易され、まともな領主は一般人に落とされ、王周囲に集まったゲス共がそれにとって変わった。
辺境以外の領は、自軍をほとんど持たない習慣がアダになった。
というか、これほどのクズが王になるなど、前王までの経緯から誰も想像すらしなかったから。
前王時将軍で軍を掌握していた現クズ王が、クーデターを起こしたのだった。



北部辺境領領主邸
「セッティ、学院はどうしたのかな?」
朝食後のひととき、父が心配を全くしていない顔で問う。

「セバスに退学願いを出してくるようにいいつけて、そのままこっちに帰ってきた。」

「まぁ、仕方がないね。というか、僥倖だったな。あの阿呆が昂じてくれて」

広い居間。家族や親しい者達は、この部屋を使う。
食後のまったりとした時間は、皆だいたいここに居る。

「あなた、オツムの弱い人達は斜め上のことを日常的にしますよ?」
と母が、僅かに心配しているようにも聞こえるようなことを、一応言っておくのが礼儀かな?みたいな感じで言う。

「はっはっは、街道には既に検問所をもうけてあるよ。王家関係が来たら、そのままそこにとどめておけ、とね。」
「放置ですか?最近のあなたはそういうことに楽しみを見出すようになってきましたよね」
「流石!君!、伊達に長い付き合いじゃないな、私の嫁だけある!!」
「何を今更。で、どんな面白いことを?」
「ふっふっふ、勿論内緒さ♪」

二人の世界を作り始めると長いので、セッティは表に出る扉の脇に立ててある槍と剣を持って表に出る。
その服装は相変わらず飾り気のない、動きやすそうな、ドレスともとれそうな白いワンピースである。


北部辺境領、領都にある領主の邸は大きい。正確に言うと、建物の邸自体の大きさはそれほどでもないが、敷地が広大だ。
どの辺境領もにたようなものだが、昔は領都全体が砦と化していた。砦内に領都の街があったのだ。

現在は、どの辺境もその領主が独自に国境の向こう側の国と親睦を深めているので、紛争はまず考えられない。
紛争が終結した100年ほど前から、北部近郊各領の各領都の街は砦を出た。砦の周囲に広がり始めたのだ。
特に北部辺境領は国境の向こうの国との交易が盛んになり、小さな街では到底収まりきれなくなった。


なので、
セッティはその広大な敷地の向こうにある、領主軍駐屯地に向かった。訓練場があるのだ。どっかしらの部隊の兵士たちが毎日訓練している。

いや、
久々の領地だ、朝早い今のうちに疾駆けするか、、
訓練にまじろうとした気を変え、途中にある厩舎に向かった。


訓練している者達に、片腕を掲げて挨拶し、セッティは疾駆けで領城の敷地を抜け、城下町を抜け、街道に出、畑の間の街道を走る。
いつものルート。領地に居る時は毎日走る。主要街道なのでチェックも兼ねている。
たまに脇道にずれたり、奥地の村に寄ったり、国境沿いを見て回ったり。
折角だから、いくつものことを兼ねて行う。


昼食を取らないこともままあるセッティ。
昔の人々は朝、遅い昼食、の2回しか食事をしなかったと聞いたことがある。
特に秀でた武人ほど少食だったと。
子供の頃は矛盾していると思ったが、今となっては納得はいく。
ちなみにセッティは15歳である。
だから両親も”恋人気分かっ!”というほどまだまだベタベタするほど若いのだ。


今日は奥地の村あたりで丁度昼近くになった。そのまま周ろうと思ったが、
村長が良ければ寄ってくださいと招待した。
村の状態等勘案し、無理していないようでなければ呼ばれる。食事を見て、村の状態に気づく場合もあるからだ。
何事も、なんらかしらの情報になる。

素材も新鮮で量も多く、料理を持ってきた者も、後ろで控える者も、誰も物欲しそうな表情は一切なかった。
料理もよくできていた。慣れた腕前が見て取れた。この村の現状は、大丈夫ということだろう。

更に1つの村に寄り、茶を馳走になった。勿論村の観察は怠らない。

畑の具合も良いし、猛獣魔獣も出てこないという。
今年はうまく冬を越せそうだ。



と思っていた私がいました、先日まで。

今日、領界警備兵から王都の兵が来たと連絡が入り、まずセッティが取り急ぎ駆けた。

バカ王子がゴミ手下共を連れてやってきました。



「不敬罪だ!貴様を捕縛する!」

「あー、猿がなんかぎーぎー鳴いているのがうるさいが、先日のようにまた胃液吐き散らかすだけで済むと思うなよ?
貴様らゴミどもは侵してはいけない聖域に踏み込んだ罰を受けねばならない。
死刑だ。捕虜など取る気はない。謝ろうが、許す気はない。お前ら、全員死ねっ!!」
セッティは容赦する気はまったくなかった。

バカ王子は1000騎ほど連れてきた。
けど、それは王城の騎兵だ。もし アクヤクノーツの千騎だったら、セッティは苦戦したろう。
が、ソレ以外の「なんか、剣とか槍を持った生き物が鎧着ているだけ」など、、、

セッティは単騎でバカ王子軍間近に迫り、槍をひとふりした。
フルフェイスの鎧を着ているはずなのに、10数人の喉元が切り裂かれた。
ブン!!
ブン!!ブン!!
ブン!!ブン!!ブン!!・・・
ひと振り10人、散開もせず、そのまま密集し続けるゴミなど良い的でしかない。
実戦も知らないチキン共は怖くなるとより一層固まる癖がある。この場合指揮官が散開を命令しないとどうしようもない。
が、指揮官がバカ王子だと、もう致命傷だ。

「私は毎日槍を1000回、剣を1000回、振り、型をそれぞれ1000回やるのだが、、、そっちのほうが疲れるな」
その言葉を聞いてバカ王子が我に返った時、
その場に立っているのはバカ王子一人だった。

が、
遠く王都の方面から土煙が近づいてくる。

「あっはっはっはっ!!俺様の援軍だ!援軍が来たんだ!!誰だか知らんがよくやった!!」

セッティの家の情報網では、このバカ王子が引き連れてきた戦力以外にはもう無いはずだ。
バカ王子傘下の領主達の騎士達は、 アクヤクノーツとの戦争になると聞いたとたん、皆逃げ出した。
一般人相手に剣と立場を利用して悪事を働く美味しい仕事以外はやるはず無いのだ、卑劣漢どもなのだから。

セッティは少々興味を持ったので、待った。

「なんだ、びびったのか!女のくせにでしゃばるからだ!!」
びしゅっつ!!ぶすぶすぶすっ!!!
うぎゃーっ!!!!いたいいたいたいーーーー!!!
セッテイはナイフを3本バカ王子に投げた、全て柄まで腹に深く刺さった。

ほどなく見えてきたのは、、
魔獣の群れ。その先頭のオーガの肩に乗るのは、国王?

瘴気がものすごく出ている。
「もはや、人ではないな、、、」

「ふむ、セッティは魔獣でも相手していなさい、なにすぐ終わる」と、いつの間にか後ろに控えていた父が出てきた。


「はっはっはっひとごときが何を言うか?おまえの娘がバカ王子と子をなしたら、それを我が糧にし、より一層強力になろう目論んでいたのに、あほうなやつら
「破っつ!!!」父
「うっぎゃああああああああーーーさいごまできくのがれいぎーーー
灰になって消えていった。
「なっつ?!!」ニカっと笑う父。

セッティと父は笑いながら大量の魔獣を心ゆくまで蹂躙した。

「はぁー、満足したっ!!!」
「あっはっはっはっは!!よかったな!セッティ!」
「うん!ありがとうパパ!!」
「いやいや、お前が全数やりたがっていたのは感じていたさ!、だから後ろで見守るだけにしたのさ!!」
「やっぱパパ大好き!!」
あーっはっはっはっはっは!!


アクヤクノーツは独立した。名も無きモブ国は経済も全く立ち行かなく、完全に滅んだ。

事件からほどなく、名も無きモブ国跡地はゾンビしかいない地帯になった。

ゾンビ達がアクヤクノーツに入ることはなかった。境界に近づくと灰になり消えていってしまうのだから。

















書いてる自分で思った。   なんだよこれ・・・。
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