休息

文字数 851文字

 2人は久々にくつろいでいる。ここのところ、少し気を張りつめすぎていた。今は行動を起こすべき時ではない。三浦の話を聞いてそう判断した。八木という刑事は勘が鋭いようだ。もう業者に辿り着いたらしい。だとしても何もする必要はない。

「俺が警察で助かっただろ」

 三浦は椎茸を頬張りながらニコニコしている。勝利を祝う鍋だ。もちろんまだ彼らを葬ってはいない。ただ勝利が確実だと踏んでいる。

「別にあなたがいなくてもやれたわよ」

と言ってみた。言うまでもないが本音ではない。彼の情報網はニュース番組より当てになる。警察は今後限られた情報しか報道しなくなることを希咲は知っていた。というより警察はそうしなければならない状況に陥る。
 だからふざけるなら今ふざけておきたい。私もガキだなと思いつつ三浦の顔を見てみると案の定ふてくされていた。

「でも第一目標は公平党を壊滅させることだろ?残党も片っ端から殺るか?」

「物騒なこと言わないの」

「お前が言うなよ(笑)」

 お酒が入っているのか、冷静な三浦がゲラゲラ笑っている。

「使い道を考えてあるの。だから現党首はまだ殺さないわ」

「ふーん。まあいいや。第2ラウンドに突入する時には全部話せよ」

 そういうとぐっとビールを飲み干した。

「それはそうと、八木の野郎、ついにお前を犯人と断定したようだ」

 それは覚悟していた。他の刑事と違って楽に騙せる相手ではないことは三浦から何度も聞いていた。この計画を進めていく上で最大の宿敵になるだろうとも言っていた。できればこんなことは避けたいが、いざとなればその刑事も消すことも頭に置いておかなければならない。

「まあ予想していたことよ。今の状況では大丈夫。今から多少動いても疑惑が消えることはないし。」

「だといいがね。万が一の時はあいつを殺す方法も考えてるんだろ?」

 三浦も同じように考えていたらしい。

「でも小細工はあんまり意味なさそうね」

 私は苦笑して手の中でコップを軽く転がした。
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