第37話 潮が引くように
文字数 385文字
潮が引くように軍隊が引き揚げていくさまを、リシャールは固唾を呑んで見守っていた。阿梨は剣を手に泰然 と甲板に立ち続けている。
予想もしていない結末だった。この船の人々を危険にはさらせない。いつ自分が出ていこうかと、そればかり考えていた。
なのに梨華の母は知略と気迫で、刃を交えることなく、王宮の軍隊を追い返してしまったのである。
「ね、大丈夫だったでしょ」
誇らし気に、梨華がにっこりする。
むろん母には本気でコンテッサの街を砲撃するつもりなどない。無関係な住民を戦闘に巻き込むなど、あり得ない。言ってみれば壮大なハッタリ……いや、駆け引きである。
梨華は窓の外の阿梨に手を差し伸ばし、
「あの人があたしの母さまよ。羅紗国の王女にして水軍の長 。あたしの自慢で、最も敬愛する女性 」
歌うように言うと、ふうっと息をついて肩をすくめてみせる。
「あたしじゃまだまだ、到底及ばないわ」
予想もしていない結末だった。この船の人々を危険にはさらせない。いつ自分が出ていこうかと、そればかり考えていた。
なのに梨華の母は知略と気迫で、刃を交えることなく、王宮の軍隊を追い返してしまったのである。
「ね、大丈夫だったでしょ」
誇らし気に、梨華がにっこりする。
むろん母には本気でコンテッサの街を砲撃するつもりなどない。無関係な住民を戦闘に巻き込むなど、あり得ない。言ってみれば壮大なハッタリ……いや、駆け引きである。
梨華は窓の外の阿梨に手を差し伸ばし、
「あの人があたしの母さまよ。羅紗国の王女にして水軍の
歌うように言うと、ふうっと息をついて肩をすくめてみせる。
「あたしじゃまだまだ、到底及ばないわ」