第1話(3)

エピソード文字数 1,753文字

「…………し、しかし……。俺は、どうしてもせねばならんのだ…………」

『うっわー……。破棄しにくいな、コレ……』と思っていた俺は、密かにかぶりを振って気持ちを切り替える。
 相手は確かに人畜無害と判明したが、現状維持は不可。なぜならば2日後に、『母帰宅』というイベントが控えているからだ。

『なーる。母親に説明しにくいよな』

 またもどこからか御声が聞こえてきたが、そうではない。我が母が家内で女の子を目撃したら、必ずこういう展開になってしまうのです。


母「優君って、年齢=彼女いない歴でしょ? 結婚して子孫を残すため、お母さんが全力でサポートするわね」
俺「いやいや母さん。お互いに恋愛感情はないんだよ」
母「だったら、優君をその気にさせてあげるわ。得意の催眠術で、ね」
俺「あのねぇ、それを聞いたら用心します。そんなの効かないよ?」
母「ふふふ…………優君が寝てる時にいつか、コソッとやるわ。お母さん、子孫繁栄のためならなんだってするのよ! 好き嫌いなんて関係ねーっ、あーはっはっはっは!!
 母さんの実家は、地元では――高知県の大豊町(おおとよちょう)では有名な農家で、マイマザーは一人っ子。詮ずる所このままでは歴史のある畑を子孫が継げなくなるから、母は女の子が関わると壊れます。
 よって、ですね。こうなると俺が正気を失ってしまう故、なんとしても同棲は回避しないといけないのである(突然、少々下品な話題を出してスミマセン。ですが特に田舎の農家にとっては、後継者問題は重要なのです。みなさんホントのホントに困り入っていて、近所の方も本気で悩んでいたりするんですよ)。


「すまんレミア。許してください」
「にゅむ? どーして謝ってるのかな?」
「俺はキミの期待に、応えられないんだ。魔王レミアっ、この契約を解除して帰ってくれ!」

 顔の前で手を合わせ、命令をさせてもらった。
 ゴメンね。別の相手を探してください。

「……レミア、悪い。ホントに、ごめん」
「にゅむぅ……。あたし、嫌だな……。ここでお世話とかしたいよー……」

 レミアは泣きそうな顔で、俺のTシャツをクイクイ引っ張る。
 そう、だよね。むこうにとってはこんな断られ方、納得できないよな――ん?

「アナタ、さ。今、拒否してるよね?」
「ん。そ、だよ」

 だよね。拒否してるよね。

「にゅむ? どしたのー?」
「な……。なんで、魔王使いの言葉を拒めてるんだ?」

 彼女は魔王で、俺の命令には逆らえないはず。どうなっている?

「にゅむん? にゅむー?」
「……この様子だと、契約解除もできてないな……。リリウの説明と違うぞ……?」

 もしやアイツ、またミスった?
 いや、それはない。もう消えちゃったけど刻印が浮かんだから、ちゃんと魔王使いになってて契約しているはずだ。

「だとしたら……。もっと、命令口調にしないといけないのかな……?」

 今し方のは、少々気が弱かった。強く言わないと多分、拒んでもよい『提案』で処理されるのだろう。

「にゅむん? にゅむむ?」
「オッホン。魔王レミア、俺との契約を解いて帰れ!」

 この台詞は、どっからどう見ても命令だ。これならイケるだろ。

「にゅむー……。あたしはこの世界で、ゆーせー君に使われたいな……」

 うん。『イケるだろ』と思ってしまった時点で、『こりゃイケないな』って気がしてました。

「……一体全体、どうなってるんだ……? 命令、できないじゃないか……」

 これだと俺は母親に洗脳されて、レミアちゃん激LOVEな人間になってしまう。……にゅむん、にゅむむ。背に腹は変えられないな。

「アイツが生みだした疑問は、アイツに解消してもらうしかないっ。カモンマイゴッド!」

 なんとも言えない不快感を伴い、吾輩は召喚の文言を唱える。すると――

《今緊急事態で手が離せないっスっ。十分、いや二十分分待ってくださいっスよ!》

 そんなテレパシーが届いてきた。
 リリウという生き物はああ見えて神様で、そんな人(?)が言う緊急は相当のものだろう。というわけで見えてるか不明だが両手で丸印を作り、2人で誕生日ケーキを食べて暇を潰すことにしたのでした。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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