如月真琴

文字数 2,713文字

如月真琴の執筆スペースはここですよー。
不思議な一日はいつだって、ありきたりな日常から突然に現れる。

それはまるで――ゲリラでドラマ撮影の現場に出くわすかの如く。

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今日もいつものように授業を終えて、部活は――テスト期間だから無くって。

何となく、シャドーボクシングを行って。飽きたら下校して。

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うおっ、制服の裾んところがもつれてる!

サイテーだ……恥ずかしいなぁ。

ちょっと、そこの男子!
うわっ、暴力女!!

噂は兼々聞いてるぜ……どうした、俺とやろうってのか?

……貸しなさい。
あん?
……いいから、見せなさいっていってんの。

ほつれたところ……。直してあげる。


べ、べつにただ暇だからなんだからね!!

本当に、本気で、他意はないんだから!!

そういって私は、カバンから裁縫箱を取り出す。

乙女たるもの――持ち忘れてはならない三種の神器の一つだ。


案外あっさり差し出された袖を、慣れた手付きで縫い直す。

――こんなもの。数分とかからず裁縫は終わった。

特に話が弾むことなく、淡々と時間は過ぎていく。

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気まずい――この時間を何と呼ぼうか。

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あ、ありがとな……助かったぜ。
べ、べつに大したことしてないわよ。

その……だから……仲良くしてくれると、嬉しいなって。

何でもないわ! じゃあね!


……バカ。

◇ ◇ ◇

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帰り道、大きく息を吐きながら歩いてゆく。

下校する健全な高校生にまじって、独り寂しく下を見つめる私が居た。


鍛え上げた女子力は――決して誰かと混ざることのない、孤高の力。

いつしか広まった悪評で、誰からも避けられるようになったのだ。

もっと人に優しくしなければ――その気持ちの裏側で、自分のプライドが邪魔をする。

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(はぁ……今日は部活もないし、刺激が足りないわ

 ――ちょっと寄り道して帰ろうかしら)

隣には誰も居ない。

独り言を発する勇気すらなく、私は独断で回れ右をした。

――その好奇心が、大きなイレギュラーを招くとも知らずに。

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◇ ◇ ◇

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へぇ……こんなところに洋館なんてあったんだ。

それに、綺麗な湖。

どうして近場にこんな秘境があったことに

今まで気付かなかったのかしら?

吸い込まれるように、そこに居た。

学校からそれほど離れていない……だが、人の声は聞こえない。

ただ、神秘的な、現実離れした洋館だった。

そこがとても魅力的に思えて――何も疑うことなく、歩みを進めていた。


思えばここから――後に引く、という選択肢は無かった。

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――コン、コン。




ドアをノックする。とても乾いた音がした。

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     ――ギィ。




立て付けの悪いドアのように、引き戸が奥にずれて、

人一人入れるスペースが出来上がった。

なんて不用心な家だろう。

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(……入ってもいいのかしら?)
脳が警鐘を鳴らしていることもお構いなく、

足が勝手に歩を進める。――迷いはそれほど無かった。

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中は存外清潔で、よく手入れがされているようだ。

誰かが生活しているような音は聞こえない。


――空き巣や泥棒でないと言ったところで、誰も信じてくれないだろう。

だが、好奇心の前に理性など無意味だった。

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ようこそいらっしゃった、お客人!
ひゃあ!? ご、ごめんなさい――!!
反射的に口から謝罪が漏れ出る。

間違いない。この屋敷の住人だった。


――え? 結構歓迎してる?

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君のように可愛らしい少女がやってくるのをずっと待っていたんだ。

――さぁ、そこに座りなさい。温かい紅茶も出してあげよう。

ど、どうも……ありがとう、ございます。
不法侵入者の手前、住人の好意を無下にすることは許されなかった。

――目の前の少女は口こそ愉快痛快だが、目元は決して笑っていない。

私を油断させたすきに警察に突き出すつもりだろうか。


……あぁ、後悔が今になって波のように押し寄せる。

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ほい、クッキーもどうぞ。

いやぁ、こんな辺鄙なところまでようこそだよ本当に。


――何して遊ぼうか。

ここにはデジタルゲームなんて洒落たものは無いけど、スローライフを満喫するんは打って付けの環境だと思うんだよねー。ほら、私ってば死んでから日が長くって……あ、そうだね。まずどこから話そうか……?

(すっごい喋るじゃんこの人……!!)
まるで一人暮らしのおばあちゃんを訪ねたような優遇だった。

出された紅茶やクッキーに恐る恐る口をつける……とても美味しい。

どれも自分の家で出されるものとは比べ物にならないぐらい、口の通りが良い。


――あっという間に警戒は解けて、心を許していいかなぁと思い始めた。

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私はフェイリア。窒息死体の成り損ないさ。

まぁ、早い話が幽霊さ。どうだい、現実離れしているだろう?

――君は? どこから来たの? どうやって来たの?

えっと……私はサニーって言います。この近くの高校に通う一年生です。

……ここには、気付いたらて感じで。

勝手に入っちゃってごめんなさい。

ふーん……?

ここは、強い力が無いと入れないはずなんだけどなぁ。

それに高校なんて人里近くに建っている覚えは無いんだが……。


君、何か強い力を持っているかい?

…………。
強い力と言われて、全く思い当たる節がない。

なんたって、私はしがない女子高生なのだから。

神通力や魔力、超能力のようなものを持ったつもりは無い。



――あるいは少女漫画の主人公のように、これから何かに目覚めるのだろうか。

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いや、あるじゃないか。一つだけ。

私が誰にも負けない、強い力。

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女子力ぅ……ですかね?
!?
眼の前の少女――フェイリアが面食らう。

私も冗談半分で言っただけなので。


とはいえ、本当に思い当たる節がない。

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そっかぁ……ついにこの屋敷、女子力で突破されちゃったかぁ。
冗談ですって!!
◇ ◇ ◇

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そんな風に過ごすうち――あっという間に時間は飛んでいった。

すっかり下校時間をオーバーしてしまった。

パパもママも心配しているだろう。……そろそろ、帰らなければ。

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フェイリアさん、紅茶、ごちそうさまでした。

でも……もう、帰らないと。いいですか?

だめ。もっと遊ぼう。
そ、そこをなんとか……私にも事情があるのですが。
…………仕方ないなぁ。

じゃあ、ゲームしようか。


そこにチェス盤があるよ。この家で唯一まともに遊べるゲーム盤だ。

――ルール説明は必要かな?

チェスなら簡単ね。

パパ……じゃない、お父様にきっちり仕込まれてますもの。

じゃあ……あ、紅茶のおかわり、持ってくるね。
◇ ◇ ◇

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――チェック、メイト。
うごぉ……勝てない……。
鍛え上げた女子力も虚しく、チェスで連敗を満喫していた。

――べらぼうに強いのだ。話にならない。

肉体で勝負すれば……とも思ったが、やはり負けてしまうだろう。

勝ち目がない。圧倒的に強いのだ。

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――――もういいよ、ありがとう。十分だ。
その瞬間、視界がパッと切り替わる。

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そこは――いつもの、日常だった。

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おしまい。

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そこまでー!

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登場人物紹介

「乙女をナメたら痛い目に遭うわよっ!!」



女子力極めしハードパンチャー

○サニー・F・フルボッコス

性別:女



イギリスからやってきた留学生。

背が低く、そのことでよくからかわれる。

温室育ちだが荒々しい一面があり、お転婆である。




ゲームが好きでよくRPGや格闘ゲームを嗜む少女。

負けず嫌いで、特に対人ゲームには並々ならぬ努力を注いできた。

そのせいで現実でも喧嘩っ早くなり、

同い年の男子と容赦なく殴り合いをしたこともある。

「もっと女らしくしなさい」と、両親に叱られる日々だった。


私には女子力が足りない――思春期に入って、

サニーは自分の過去を恥じるようになっていた。

力比べで男子に負けることも増えていった。

背の低い彼女では、勝てる相手も限られてしまう。

これからはちゃんと乙女らしく振る舞おう――。

疼く両腕を抑えながら、ひたすら勉学に励んだ。



進学したのはスポーツに力を入れている共学の高校だった。

知り合いもいない、ゼロからの場所で、女子力を高める決意は固い。

女子力とは、すなわち力強さだ。

スタバで友達とガールズトークを繰り広げたり、ゼクシィを毎号買って熟読したり、バレンタインにはクッキーを振る舞ったり、流行りのバッグに敏感だったり――そういったことも女子力の一つだが、やはり力強い乙女がモテるのだ。


部活一覧を眺めて、真っ先に気になったのは

女子ボクシング部だった。

ここなら思う存分、私の女子力を鍛えられる。

いつか自分を負かしたアイツを超えるため。

誰もが振り向くような、力強い自分に。


入部してからの彼女は無敗連勝だった。

女子力を乗せた一撃が空を裂く。

そのパンチは次第に重く、鋭さを増していく。

――女子力が溢れて止まらない。



彼女は何かに取り憑かれたように

今日も女子力を追い求めていた。





能力名:レディー・ファイト

女子力を増すたびに強くなる能力。

行動や言動によって自らの女子力の高まりを感じると

身体の芯から力がみなぎってくる自己強化系の能力。

女子力を極めれば殺人級のパンチが打てるようになる。

反対に、女子力が下がる行動を取るとパワーダウンしてしまう。




戦う動機:もっと女子力を高めるため




イラスト:三日月アルペジオ

作者:如月真琴

渾沌に呻く矛盾の亡霊

フェイリア=ネクロ=アスフィクシア



【設定】

森の奥の湖に囲まれた洋館にて人の目を避けてひっそりと暮らす幽霊少女。

とある理由から首を吊って自害したらしいのだが………その結果『死体』とも『幽霊』とも思える特長を色濃く残す謎のアンデッドと化した首吊り死体の成れの果て。

こんな名前でも立派な日本人であり、上記の名前は本人が滑稽にも死に損ねた状況から『窒息死体の成り損ない』という意味で迷名したもの。

※アスフィクシアとは窒息という意味ですが首吊りの主な死因は窒息ではなく縊死です。

首を吊る以前の………生前の記憶の大半を失っており、首を吊って死に損ねたということ以外は真っ白だったらしく、自分の名前すらも定かではないという。その原因は死んだ(死に損なった)ショックによるものなのか、首吊りによる後遺症なのか、生前の凄惨な出来事によって無意識の内に自ら記憶をシャットアウトしているのか、はたまた全く別の存在として生誕したからなのか………依然として詳細は不明である。


本人は幽霊と名乗っているが実際の所、種族は不明。

だが本人曰く、亡霊と人間(というより亡者)の性質の両方を多用に兼ね備えている事から『半霊』という説が最有力らしい。


【霊としての特徴】

・瞬時に姿と気配をを消すことが出来る

・自分の害となる物理攻撃等や壁などを透過する

・浮遊する感覚で空を飛ぶことが出来る

・実体の無いモノに干渉できる

・寿命や死の概念が無い(というより既に死んでいるというべきか)

・幽霊なので無味無臭(いちいち死体みたいに腐乱死臭とか出してたら萎えるじゃん)

・幽霊やモンスターからは幽霊として認識される

・その他諸々


【人としての特徴】

・実体がある(半分幽霊ということもあって限りなく曖昧ではある)

・実体があるので、物を持ったり、自分の足で歩いたり、食事をしたりも出来る

・霊としての特徴に書いたもの以外は普通の人間とあまり変わらない

・死体故か痛覚等が無い

・ただの幽体と違って勝手に昇天したり成仏したりしない

・人間からは人間として認識される

・その他諸々

・生前の影響か『魔人離れ』した身体能力と武神の如き戦闘センスを有する(←生前で一体何があったし)


また、生前では相当な暴れ者だったらしいのだが、今では争いを好まない穏やかな且つ慈悲深い性格に一変している。

そんな性格と反比例して強すぎる上に物騒な下記の能力故か、あの世と最も近いと言われる森の奥の洋館に引きこもるように隠れ住んでスローライフを満喫している。


膝まで伸びた長髪は、実は銀髪ではなくストレスによる若白髪。(生前は黒髪だったらしい)


【能力名】

神ノ駄作『相反スル死凶ノ主』

殺し合いという観点からすると、これ以上のものはないと思われる最凶の能力。

どのような存在であろうと確実に死に至らせる力と、どのような方法であろうと決して死ぬ事の無い力が同居する矛盾した能力。

不死身だろうと、死という概念が無い相手だろうと、相手の不死性ごと強引に殺したり相手に死という概念を植え付けた上で殺せるくせして、自分は『フグが自分の毒で死ぬか?理論』で死ななくなるどころか、一度この能力で死んだ事によって耐性が付いたせいか生前以上に死にづらくなっているという棚上げ精神旺盛な特殊能力。

もはや死滅と不滅という概念そのもので、決して交わる事の無い相反する二つの概念が重なりあった『死の形』。

この能力の持ち主は、分かりやすいように前者を『致死性』、後者を『不死性』と名付けて呼んでおり、その双方を無限に内包した状態から武器や魔法や呪いや薬といった形に生成して取り出し、体(てい)のいい死霊魔術程度に薄めた物を『自衛を目的とした戦闘』の際に使用する。(本気で戦おうものならどうなるかは未だに不明)

また、生前での彼女が不死性を備えた体質での自害の術として開発、後にその能力を自身に行使しながら首を吊って黄泉の国へと去った………筈なのだが、生前に抱いていた迷いや未練とも呼べるものが自らを死に至らしめた能力を携えて復活した結果がフェイリア=ネクロ=アスフィクシアという新たな人格として生誕を果たした。

ここまで長ったらしく説明してきたが、早い話が最強の矛と最強の盾を使ったワンサイドゲーム。まさに矛盾。

本人も『どこぞの聖杯戦争や育成計画に出してはいけないキャラクターぶっちぎりNo.1になれるつまらない能力です』という感想を漏らしているとか。


【戦う動機】

そもそも戦いたくない。

殺し会うくらいなら、一緒に話したり遊んだりしたいお年頃。

でも仮に殺されたら殺し返すかも……


【イラスト】

きゃらふと様


【作者】

フェイリア

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