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文字数 1,132文字

「でも奏ってここの付属生だし、あの中に知り合いって誰かしらいるよね?」
「いるにはいるけど、まぁ何かのタイミングで一緒になったら話すかなって程度だよ。元々高校まで一緒にいたヤツは、裕海みたいに受験して外の大学行っちゃったから」
「あ、そうだったんだ」
「それに仲の良さと一緒にいる期間の長さって意外と比例しないもんだしな。ピンと来るものがあればどんだけ期間が短くてもすぐ仲良くなれるし。逆にそうじゃなければ、いつまで経ってもその状態から深くなることはないし」
 奏が自分の過去について話すことは今まであまりなかったため、裕海は素直に驚いた。しかし次の言葉が上手く出てこなくて黙っていると、再び奏が裕海に向き直る。
「まぁそう言ったところで、裕海はこの後に『じゃあ何で俺のこと好きなの?』って訊いてくるんだろうけど」
「えっ、何で……」
「付き合いはそんなに長くなくても、流石にそろそろ分かるようにもなるわ。だって結構分かりやすいもん、お前」
「そ、そう?」
「うん、そうだよ。んー、何で裕海のこと好きなのか、ねぇ……」
 そう呟きながら窓の外を眺め、奏は肘をついた手の上に顎を乗せて考え始めた。そんな様子を見ながら、裕海は焦点の定まらない視界の中でただぼんやりと机の上を見つめていた。
「……んー、面白いからじゃね?」
 そこでいきなり思ってもいなかった言葉が飛び込んできたので、今度は裕海が顔を上げて目をぱちくりとさせる番だった。
「お、面白い?」
「うん。裕海さ、さっき俺とお前とが対照的だって言っただろ。それだよ、理由」
「……ん?」
 奏の中ではきっと筋が通っている答えなのだろうが、裕海にはその言葉同士の繋がりが理解出来ず小さく首を傾げた。すると奏がまた言葉を続けた。
「あー、つまりな。自分と全く違うタイプだから面白いなって。別にからかってるんじゃなくて、バカにしてるわけてもなくて、純粋に面白いなって思ってるんだよ。それはあの時に声かける前から、雰囲気で何となく感じてたし。……んー、言ってること分かる?」
 先程から何かに引っかかっているので記憶を辿ってみると、裕海は初対面の時に「思った通りの面白そうな人だ」と言われたことをそこで思い出した。やはり何に対して面白いと思っているのかはさっぱり分からなかったが、純粋にそう思っていることはよく分かったので、裕海は「大丈夫、なんとなくだけど伝わってる」と返した。
「なんか、ごめん。ありがと」
「いいんだけどさ、それより裕海、この時間だけで何回謝ったよ?」
「えっ?」
「まぁそれも面白いからいいんだけどさ、別にそんな謝んなくてもいいんじゃねぇか? 何も悪いことしてないだろ。俺全く気にしてないし、裕海が謝ることでもない」
「あぁ……そっか、うん」
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