図書室

文字数 1,278文字

 私は本を読むのが大好きだ。
だからといって文字が書いてありさえすれば、新聞の折り込み広告までも『読む』とまでいわれてる『活字中毒』ではない。
好きなジャンル…私の場合は、日本人作家のミステリーやサスペンスものを読むことが多いかな。
もちろん、いわゆる『名作』といわれるものもある程度は読んでいるし、伝記だって大好きだ。
だから学校の休み時間はおろか、登下校のバスの待ち時間にバスの中、帰宅後も宿題もそこそこに読み続けている。
以前はバス停までの道を歩くときにも読んでいたんだけれど、道沿いのラーメン屋のおばちゃんから『歩きながら読むのは、あぶないからやめなさい』と叱られてからは、読まないように気をつけている。
ほんとは読みたいんだけれど、おばちゃんのお店、いっつも入口が全開になってて店の中から道が丸見えだし、その道を通らないとバス停に行かれないから仕方ない。
でもって、本屋さんに行くと毎日のように新刊が出ているから、どれもこれも読みたくなっちゃう。
だけどおこづかいはそんなにもらってないし、お父さんやお母さんにおねだりしても『そのくらい熱心に勉強してくれたら…』というお小言ばっかりで、めったに買ってもらえない。
だから学校の図書室に行って、図書室にある本を借りて読んでいる。
 
 一度に借りていいのは2冊まで。
借りる期間は1週間。
図書室に置いてある本は、何年も何十年も前に出た本が多いから、出たばっかりの本が読みたい私は、カウンターに置いてあるリクエストボックスを利用して、何冊もリクエストを書いている。
「先生。こないだ私が書いたリクエストの本、買ってくれた?」
「まだよ。というかあの本はたぶん、買えないと思うわ」
「なんで?私読んでみたい」
「学校では買えないと思うから、おうちのひとに買ってもらったら?」
「買ってって言ったけど、お父さんもお母さんも、ダメって言うんだもん」
「あなたのおうちの人と同じ理由と思うわよ。学校で買えない理由」
「じゃあさ、先月私がリクエストした本は?」
「あれもダメよ」
「なんで?」
「あれはアニメのノベライズでしょう?ちゃんとした読み物になってはいるけれど、タイトルとさし絵だけが目的の子が借りに来て、けんかになっても困るもの」
「ちゃんとした読み物になってるって…先生読んだの?」
「本屋さんでね、パラパラっと立ち読みでね」
「ふうん…いつもそんなに読んでるの?」
「まあねえ。全部とはいえないけれど、ある程度は内容を知っていないと。学校に置く本でしょう?責任を持って選ばないとね。あとは、あなたたちにお薦めするときに、読んでない本は薦められないもの」
「ふうん…」
「ほら、次の授業は委員会活動でしょう?移動しておかないと遅れるわよ」
「はあい…あ~あ、私図書委員になりたかったのにな」
 
 そう。こんなに本が好きなのに、私は図書委員ではない。
それどころか一番苦手な体育委員なのだ。
もちろん委員会決めの時は、図書委員に真っ先に立候補する。
だけどいつもじゃんけんで負けてしまうのだ。
私は重い足を引きずるようにして、自分の委員会が開かれる教室にむかった。
 
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