トカゲ

文字数 1,352文字

この演習でお前達にはトカゲとカッコウを倒してもらう
トカゲ……?
カッコウ……?
あぁ、この2体は害物の中でも極めて弱い部類だ。それぐらいも倒せないようでは生き残れないだろう
少し進んだ先には名前の通り、トカゲのような生物が1匹。

2本足で立ちながら、食事に夢中になっている。

あれ……瓦礫を食ってるのか……?
いたな、あれがトカゲだ。今から私が手本を見せる。各自、立ち回り方を考えておけ
そう言ってフォルクは足元の小石を手に取り、トカゲの方へ投げた。
ギェッ……?
ギェッ!ギェッ!
小石の落下音によって、食事中だったトカゲが4人に気付く。
わ、私の方見ましたよ?!
小声でシャロアがカイゼルに話しかける。
動物園みたいな事言うなよ……
動物園か……ここも既に害物の住処だ、あながち間違いでは無いだろうな
(冗談になってない気が……)
こちらに害物の注意を向ける時は下手に刺激しない方が良い、怒りに任せて襲いかかってくる可能性がある
フォルクは鞘から剣を抜き、戦闘態勢に入る。


ギェェッ!ギェェェェェ!
トカゲがフォルクに向かって細かく跳ねるように走りだす。


ギエッ!
トカゲは走る勢いに乗せ、右足から前蹴りを繰り出す。

フォルクは攻撃が当たらないように横に逸れる。

ギェェッ!
地面に振り下ろした足を軸に、左足で後ろ蹴り。

フォルクは後ろに下がる、攻撃は当たらない。

相手に向かってトカゲは体を捻り噛みつかんとする。

眉一つ動かさず体の向きを変え、避ける。

ギェェッ……!?

顔色を変えずに攻撃を躱す目の前の敵に、思わずトカゲが情けない声を出す。

フォルクは右手に持った剣で斬り上げた。

トカゲの胸部から首元にかけての部分から赤い血が噴き出す。

うっ……
っ……
ギッ……!ギェッ……!
トカゲがよろけた瞬間、左足から右足の順に2本の太い足を斬りつけると、両足の切り傷の部分からも血が流れだした。
ギェェッ……!ギェェッ!
トカゲが体制を崩し、地に伏せる。

フォルクがトカゲの脳天に剣を突き立てると、微かに声を漏らして絶命した。

害物を仕留めた後は核の回収を忘れるな

穴の空いた兎影の頭部から血の付いた黒い小石のような物が流れ出て来た。

フォルクはそれを拾い上げ、4人に見せる。

あ、あのー……核って……?
説明をしていなかったな……。害物の持つ核は脳と同等の役割を果たす物となっており、これによって生物としての活動を可能にしている。しかし、核を破壊もしくは体内から核が離れた場合、形作っている細胞諸共消滅する。言うなれば害物の命とも言える物だ
それを回収する意味って、何かあるんですか?
回収した核は本部に送られ、害物の研究に用いられる。出来るだけ破壊は避けるようにしろ
支部で害物の研究をしない理由は……?
本部からは支部での研究は禁止とされている。解明されていない事が多く、悪用された場合を考えた結果との事らしい
他に質問がある者はいるか

微かに聞こえた2人からの返事と、無言の2人を見て質問が無い事を確認すると、フォルクはコートの懐に核をしまった。

……ではこれから、お前達4人の適性を見させてもらう。先程も言ったが、対象はトカゲとカッコウだ。時間は45分。2体の核を持ち帰れば合格と言えるだろう
私はここで待機している。万が一、続行不可能と判断した場合は速やかに連絡をしろ。それでは、演習開始だ
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