4-8. 性器も内臓の一種なんだから内臓は実質えろい

文字数 6,979文字

「これは必要なことなんだ、イオリ」
 頬を上気させたル=ウが、伊織介に覆いかぶさる。
「そうであれば、この際だから訊いておきます、ルウ」
 今も伊織介の身体の自由は奪われている。抵抗など出来ようはずもない。
「なんだ」

「……普通の服、着ていただけません……?」


      * * *


 オランダのピンネースを制圧し、追いすがる重ガレオンを振り切ったメリメント号は、今や海上の宴会場と化していた。
 もちろん、2直6交代制は変わらない。月明かりに照らされた海を、帆をいっぱいに広げたメリメント号は今も静かに滑っている。それでも、当直を終えた者から飲めよ歌えよの大騒ぎの輪に入っていく。

「はいはい、どんどん運んじゃって下さいなー! 次は塩漬け魚の下処理に入りましてよ!」
 意外なことに、肴作りの音頭を取っているのはフランだった。下甲板(ロワーデッキ)調理場(ギャレー)に篭って、鍋を片手に包丁を振り回している。
羊肉(ラム)も解禁しちゃいましてよー!」
 フランの宣言に、甲板の水夫たちが歓声を上げる。船上では貴重な飲料を兼ねる麦酒(エール)葡萄酒(ワイン)も、今晩だけは大盤振る舞いだった。
「ブハハハッハ! どんどん飲むのである! 良い、我輩が許そう!」
 リチャードソンも上機嫌で杯を振り回している。艦長がこうであっては、もはや酒宴を止める者はいない。寧ろ水夫たちの方が生真面目に艦長を諌めるほどだった。

「んなんな」
 ついでにきっちり、猫のグリフィズ卿も宴の末席に並んでいる。皿には魚骨が山のように盛られ、訳知り顔で水夫たちの会話に相槌を打っていた。

 昼間戦ったピンネースは、兵士たちへの給料のためか、相当な量の金貨と香辛料(スパイス)を積んでいた。金貨はなんと400ギルダー、英国金貨に換算して約40ポンドにも上る大収穫。おまけに香辛料(スパイス)が3樽分だ。今日日、黄金にも等しい値段が付く胡椒と肉荳蔲(ナツメグ)の山である。海賊もかくやという略奪の大戦果に、宴が加熱するのも必然だった。

 そんな上甲板(アッパーデッキ)の喧騒を余所に、伊織介はル=ウの私室に連れ込まれていた。

「治療だ」

 それがル=ウの言い分だった。

「イオリの身体から生やした触手は、質量としては臓器を原材料としている。つまりだ――触手が損傷すれば、内臓にも傷がつくことになる」
「えっ、そんな」
 伊織介は思い出す。身体から生えた黒腕や触手を、フザに斬り落とされたこと。鋭剣(レイピア)で貫かれたこと。
「ふふ、そう焦るな。触腕の魔法は、原料を魔術的な処置を挟んで変換している。即座に肉体的な損傷として顕れる訳ではない」
 慌てて自分の腹や背中をさすったが、ル=ウの言葉通りか、確かに特に異常は感じられない。
「……まぁ簡単に言えば、放っとくと身体の内部から腐る」
「なにそれ怖いです」
「だから――これは必要なことなんだ、イオリ」

 こうしていつものように――伊織介はル=ウのベッドに押し倒される。

「そうであれば、この際だから訊いておきます、ルウ」
「なんだ」
「……普通の服、着ていただけません……?」
 
 今日もル=ウは変わらず裸マント(痴女)姿だ。毎度毎度、裸も同然のル=ウに組み敷かれるのは、なんというか男の子的(・・・・)にいろいろ苦しい。士道の誓いで己を律する伊織介も、出来る限り刺激は避けたいと考えるのは自然なことだろう。男性器をル=ウに握られている以上、自分で処理をすることも出来ない訳だし。

「ばっかだなあイオリ。これが魔女の正統な装いだろうに」
 ――予想通り、ル=ウの返答はすげない。 
「いや外套(マント)が真っ当な衣装だっていうのはわかりますが、肌着(シュミーズ)くらいは……」
「何言ってるんだ。わたしの魔法は身体から生やすものだろう。これが最も効率的な格好なんだよ」
 言われてみれば、その通りだった。昼間の接舷戦でも、ル=ウは着地のために身体から四本の腕を生やしていた。
「た、確かに……!」
 思わず納得してしまう伊織介。

「本当は伊織介も同じ格好をするべきだと思うんだが」
「それは勘弁して下さい……」
「だろう? そこがわたしの優しさだ。敬っていいぞ」
「はい……敬います……」
 伊織介は、戦いの度にル=ウが支給してくれる真っ白な上衣(ダブレット)をボロ布にしてしまっている。今も殆ど腹部は破れて剥き出しだ。その負い目を考えれば、もはやル=ウの格好について小言を言うことなど出来なかった。

「――ちょろいなっ」
 ル=ウが悪辣な表情で笑う。
「何か言いました?」
「いいや。さあ、始めるぞ……」

 言って、ル=ウは金装飾のボタンを外して外套を開いた。外套の下は本人の言葉通り何も着けてはいない、生まれたままの姿だ。白く眩い素肌が覗く。ル=ウは少しだけ頬を染めて前をはだけながら、馬乗りの形で伊織介に覆いかぶさった。
 少女の面影を残したル=ウの顔立ちにはやや不釣り合いな豊かな胸の膨らみも、薄っすらと萌える微かな茂みも――しかし、今に限っては伊織介の劣情を催すことはない。これから何が起こるか、何をされるかを思えば、とてもそんな気分にはなれなかった。

「……んっ! ん、んんっ!」
 固く結ばれた唇から、声が漏れる。伊織介の真上で、ル=ウは左手で自身の身体を支え、右手で彼女自身の下腹部を弄り始めていた。
 探るように幾度か撫でると、次に彼女は――そのまま自身の腹部に爪を立てた(・・・・・・・・)

「ん……あぁぁぁぁぁッ!」

 鮮血が伊織介に振りかかる。ル=ウは、自身の手で自身の腹部を突き破った(・・・・・)のだ。
 ル=ウの深青色の瞳の中、海面に映った月のように瞳孔が金色に輝き出す。艶のある黒髪が、風に吹かれたように蠢き始める。

「んんんんんっ!」
 痛みか、あるいは他の感覚か――判然としない熱情に喘ぎながら、ル=ウはその手で自身の臓物をずるり(・・・)と引き摺り出す。
 彼女が手に持つ内臓は、ヒトのモノとしては在り得ない程にびくびくと痙攣していた。腸にも似るが、それにしては短い。強いて言うならば、ぬらぬらと粘液にぬめるその姿は海鼠(ナマコ)に近い。

斬り合い(セックス)斬り合い(セックス)なんて喚きおって、あの狂人め。わたしのイオリに傷をつけるなどと!」
 ル=ウの瞳が爛々と輝いている。その金色に映る感情は、微かな嫉妬だった。
「……あんな野郎にやられた傷など、残してやるものか。だから、わたしの内臓を、――挿れて(・・・)あげる」

 まるで陸に打ち上げられた魚のように手の内で跳ねるそれを、ル=ウは――伊織介の腹に捩じ込んだ(・・・・・)。ぐねぐねと不気味にうねるそれ(・・)は、不思議と血の一滴も流すことなく、ずぶずぶと腹に沈んでいく。

「――ぎぃぃぃぃぃぃいいぃッ!」
 声を上げるのは、今度は伊織介の方だった。痛みがある訳ではない。しかし、腹の内側を、ル=ウの臓物が、ぐねぐねと踊るように暴れているのだ。身体の内側を好き勝手に犯される感覚、呼吸が困難になるほどの圧迫、凄まじい生理的嫌悪感と得も言われぬ恐怖が、伊織介の意識を塗り潰していく。

 ――〝船喰らいの魔女〟という魔性の起源そのものと云える魔術。
 〝聖ブリジットの腕(キルデア・キラル)〟と彼女は呼んでいる。その由来は、エァル(アイルランド)に実在した聖女に遡る。聖ブリジットの伝承が、輝く腕を生やす(・・・)奇跡を見せたように――ル=ウは己の腕を、そして肉を殖やすことができる。尤も、その光景は奇跡と呼ぶには余りに凄惨で、醜悪だった。

「それと、こいつは今回のご褒美だ。がんばったからな、イオリ。返してやろう」
 そっとル=ウが伊織介の下衣(ダブレット)に手を入れる。しかしもはや、伊織介には答える余裕もなかった。ただ歯を食いしばって、身体を犯される感覚に耐えている。
 
「イオリ……大丈夫だ、何も心配することはない。わたしの肉は、イオリの肉。わたし達の身体は、他の誰よりも、世界でいちばん、相性が良いのだから――」

 下腹部から血と肉塊を吹きこぼしながら、頬を上気させたル=ウが耳元で優しく囁く。
魔女の睦言を聞いたのを最後に、伊織介の意識は暗闇の中へと落ちていった。


     * * *


「……ふう」
 一仕事終えたル=ウが、私室の外に出て扉を閉じた。
「やあ」
「リズ……盗み聞きか? 趣味が悪いぞ」
「フランじゃないんだ、ボクはそんなことしないよ。待ってたんだ。イオリノスケくんは眠ったのかい?」
 壁に背を預けたリズが、肩を落としてみせる。

 ル=ウの私室は、艦尾甲板(クォーターデッキ)よりもさらに一段高い場所に位置する。ここからは、上甲板(アッパーデッキ)で大騒ぎする水夫たちの姿がよく見えた。

「ああ。眠ったよ。何かイオリに用があったのか?」
「イオリノスケくんに用というか……男性器(ちんちん)の方を借りたくて」
「……何をする気だよ」
 ル=ウが露骨に胡乱な目でリズを睨む。その瞳はいつの間にか、普段の深い青色に戻っていた。

精気(フォイゾン)。分けて欲しいのさ。けっこう深手を貰っちゃってさ、上質なのが必要なんだ」
 リズは自身の腹をさすった。そこには、確かにフザに刺された生々しい傷跡があった筈だ。
「なるほど、そうか――ご苦労だったな。リズでなければ、死んでいるような傷だ」
「そういうことー」
 リズがあっけらかんと笑う。

 彼女の〝妖精の血(ランペルスティルツイキン)〟の本質とは、人の目から隠れることではない。
 存在そのものが、妖精側にずれて(・・・)いるのだ。100パーセントの妖精では無い分だけ、物理的な干渉も十分に可能だ。しかし、その存在の位相は、本質的に妖精側――言い換えれば、魂の側に過度に寄っている(・・・・・)。肉体的な損傷には強いが、その治療には魂の方から癒やす必要があった。

「リズは今回の功労者だ。精気ならば好きなだけ提供しよう。だがなぁ……」
 ル=ウは申し訳なさそうに頭を掻いた。
男性器(ちんちん)は貸せない」
「なんで? ボクはフランみたいに、お尻に挿れたりはしないよ!?」

「分かってるよ! 違うんだ、リズ。……男性器(ちんちん)、返しちゃったんだ。さっき」

「えええええええ!? イオリノスケくんに!? 返しちゃったの!?」
 リズが飛び上がる。
「返しちゃったんだよ」

 そう、ル=ウが先程〝ご褒美〟と称して渡したものは、伊織介の男性器だったのだ。伊織介は治療のために体力を消耗し、今は気付いていないが――男性器はしっかりと、元の通りに股間にくっついたのだ。……厳密に言えば、一本目の男性器は爆発したので、今くっついているモノは二本目に当たるが。

「返しちゃったって……どうするのさ! イオリノスケくん、逃げちゃうんじゃないの?」
「流石にそれは無い、金枝(ミスルトゥ)を仕込んであるからな。基本的にはわたしの命令に逆らえないことに変わりはない。加えてここは逃げ場の無い海の上だ。それに……」
 リズの疑問はもっともだ。しかしル=ウは言葉を区切って、私室に目線を遣る。
「それに、たぶんイオリは、逃げない」

「たぶんって何さ……イオリノスケくんの生成(・・)に三年もかかったんだろう? お金も時間も相当注ぎ込んだこと、ボク知ってるよ。本当にいいの?」
 頭の痛い指摘だった。確かにル=ウは、伊織介を現在の形に作り上げるのに莫大な代償(コスト)を支払っている。単純に己の肉を殖やして人型に塗り固めただけではない。人造人間(ホムンクルス)を創り上げるに等しい手間を、ル=ウは伊織介にかけている。

「うん。いい。大丈夫だ――と、思う」

 しかし、ル=ウの決意は頑なだった。妙に自信なさげではあるが、伊織介に男性器を返したことに後悔はないようだ。

「へえ……人嫌いのル=ウが、そこまで言うとはねえ」
「な、なんだよ!?」
 リズの表情が、にやにやとしたいやらしいものに変わる。大抵はフランに向けられるその意地悪な笑みが、珍しくル=ウに向いている。

「じゃあさ――売ってよ。童貞。イオリノスケくんの」
「んなッ!?」
 飛び上がったのは、今度はル=ウの方だった。
「戻したんでしょ? 男性器(ちんちん)。なら、物理的にできるじゃん」
「ななななななな……」
 ル=ウは目を白黒させて震えている。

「キミも知ってるよね。妖精の精気(フォイゾン)の吸い方は――上の口から、とは限らないってこと」
 鮮やかな桃色の舌が、艶かしく唇を濡らす。月夜を背景に、リズが魔性の気配を帯び始める。

「まっ――待て待て! 落ち着け! イオリが童貞じゃなくなったら、ほらその、精液(スペルマ)の価値が落ちるだろう!? それに、それに……」
「ぷっ」
 リズが破顔した。
「――あははははは! ル=ウってば必死すぎ! 冗談だってば、あはははははは……」
 腹を抱えて、目に涙すら浮かべてころころと笑うリズ。すぐにル=ウの顔が真っ赤に染まる。
「な、なんだよ! イオリはわたしの所有物だぞ! 自分の所有物を守って何が悪い!」
 憤然としてリズに詰め寄るル=ウだったが――

「――そう。大事だよね、イオリノスケくん」

 どん。と凄まじい疾さで。

「え……リズ……?」

 一瞬にして壁に押し付けられるル=ウ。彼女よりも頭一つ分は背の低い筈のリズが、冷たい瞳でル=ウを抑えつけていた。

「リズ、どういう……?」
「ボクもそう。フランもそう。あの人斬り(フザ)も、たぶんそうだ。皆がイオリノスケくんに惹かれている」

 事態を飲み込めないル=ウに、リズが淡々と語りかける。

「ヒトから離れた者たち――皆がそうだ。肉欲。食欲――イオリノスケくんは、そういう欲望を喚起する。ル=ウだってそうなんだろう?」
「……」
 ル=ウは黙って顔を逸らした。
「イオリノスケくんはいい子だよ。素直なようで、妙に浮世離れしてる。だからか、魔女(ボクら)なんかにも偏見が無い――いい男さ。それは認める。けど……あの美味しさは異常だ。ボクら皆が狂わされる。彼の肉は、何かがおかしい(・・・・・・・)
 上甲板(アッパーデッキ)は相変わらずの盛り上がりだ。ここでの会話を聞いている者は、他には居ようもない。

「昼間は誤魔化されちゃったからね。改めて訊くよ――ル=ウ、イオリノスケくんに、何を混ぜたのさ?」

 リズの瞳が、真っ直ぐにル=ウを見詰めていた。

「……言えない。言いたくない。今は、まだ」
「ル=ウとボクの仲だろう? ボクにも言えないのかい?」
「……」
 ル=ウは黙って俯いた。

「はぁぁぁっ」
 リズが大きく息を吐いて、ぴょこん、と一歩下がった。
「分かったよ。まだ内緒なんだね。嫉妬しちゃうな、二人だけの秘密ってやつかい?」
 リズの表情が、普段の意地の悪そうな微笑みに戻る。
「……すまない」
 楽しそうに肘で突付くリズに、ル=ウは俯いたままで声をひねり出した。

「なんだよぅ、つれないなぁ! じゃ、イオリノスケくんの精気(フォイゾン)が貰えないって言うなら……」

 再び、リズの顔がぐっとル=ウに近付く。

「キミから頂くことにしよう」

 言って――リズが強引に、ル=ウの唇を奪う。

「んん――!」
 一瞬面食らったル=ウだったが、即座にリズの肩を押して引き剥がした。
「ちょ、ちょ、リズ、こんなところで……!」
 耳まで赤く染まるル=ウ。伊織介を責め立てる時とは、まるで違う――押しに弱い性分が、露呈する。

「どうせ誰も見てないさ。久しぶり(・・・・)に、魔女の精を味わわせておくれよ」

 抵抗を押し切って、再度ル=ウの唇が塞がれた。
 今度こそ、ル=ウは抵抗を諦めて――恍惚として、妖精の舌使いに身を任せるのだった。


     * * *


 ――精気(フォイゾン)

 それは所謂、〝いのち〟そのもの。

 世界中の伝承に、花や樹木から何か(・・)を啜って生きる小人のような妖精の姿が描かれている。彼らが食しているものは、地域や時代によって様々に呼ばれているものだ。第五元素(エーテル)神実(マナ)連環(チャクラ)呼気(プシュケー)。種々の呼称で語られるそれらも、実際のところは〝いのち〟の抽象物に帰結する。即ち、精神世界に存在する〝たましい〟を、物理世界において駆動する(エネルギー)の意。

 精気(フォイゾン)とは、つまりは〝いのち〟を燃やす(エネルギー)――不定型の(もや)のようなそれを、妖精は糧として摂取する。

 妖精の血を引くリズも、例外ではない。魔女(ル=ウ)精気(フォイゾン)は、彼女が魔女団(カヴン)に居る理由の一つになる程度には――美味なる味わいのものだった。
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登場人物紹介

伊織介

日本人奴隷。武家の出。宣教師に騙されて、奴隷としてオランダに売却されるが、初陣で死亡。次に目覚めた時は、魔女の奴隷となっていた。


穏やかそうに見えて、少々こじらせており危なっかしい性格。その正体は、魔女ル=ウの自律型魔術兵装。

ル=ウ

本名:ラサリナ=ユーフロシン・フィッツジェラルド。英国出身。強欲にして傲慢、悪辣かつ傍若無人な魔女。殖肉魔法の使い手。性格が悪いので友達が居らず、実は極度の寂しがり屋。ドヤ顔裸マントだが魔女団の中では相対的にまともなのでトップの座に収まっている。

フラン

本名:フランセット・ド・ラ・ヴァレット。フランス出身。予言と占いを生業とする解呪師《カニングフォーク》。金にがめつい生臭シスターで、相棒はキモい眼球付きの十字架。趣味はアナル開発。

リズ

本名:リーゼル・マルクアルト。ドイツ出身。妖精の血を引く白魔女《ヴァイスヘクセ》。剣術や銃の扱いから医療の心得まである器用な傭兵。仕事は真面目に取り組むが、私生活では酒とアヘンと愛する放蕩者。放尿しながらストリーキングする癖がある。

リチャードソン

本名:リチャード・A・リチャードソン。ビール腹、髭面の四十代。東インド会社所属の商人であり、同時に帆船メリメント号の艦長。魔女団の後盾兼共犯者として、莫大な利益を上げている。一見気さくな趣味人だが、密貿易と賄賂で現在の地位に成り上がった、油断のならない大男。

フザ

本名:志佐付左衛門=アルフォンソ。傭兵。隻眼、身長2メートル弱の偉丈夫。スペイン人とのハーフ。死生観の崩壊したヤバい人。

メリメント号

魔女団の艦。350トン、砲数14門の軽ガレオン。東インド会社の船でありながら、リチャードソンが横領して魔女団の活動に役立てている。艦齢は20年を数える老婦人だが、小回りに優れる歴戦の勇士。

グリフィズ卿

本名:ルウェリン・アプ・グリフィズ。英国生まれの猫水夫。魔女の使い魔とかでもなんでもない、ただの猫。鼠狩りを職務とし、船の食料を守る。艦長に継ぐ役職(主席士官)の席を与えられており、船員たちの尊敬を集めている。

神父

アイルランド人。英国東インド会社を騙し、大金を奪ってオランダ側に付く。その首には莫大な懸賞金がかけられている。英国ぜったい滅ぼすマン。

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